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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十七章 帝都地下迷宮の討伐
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ep338 地下迷宮の探索3

ep338 地下迷宮の探索3





 マキトたちは迷宮街を通過して地下迷宮(ダンジョン)の最深部へ向かう。迷宮の魔物は探索者たちの行く手を阻む様子だ。


迷宮(ダンジョン)の分かれ道で左右から二体の牛頭巨人(ミノタウロス)が現われた。右方の牛頭巨人(ミノタウロス)には、剣士マーロイとゴーレム娘のフローリアが応戦する。治療師のナデアが援護に付くのも問題は無いだろう。


左方の牛頭巨人(ミノタウロス)には、獣人の戦士バオウとゴーレム娘のフレインが鉄拳対応を始めている。シシリアが監督していれば援護も十分と見える。マキトは出遅れて左右の戦闘状況を眺めた。こういう場面で最悪の事態は迷宮(ダンジョン)の罠に嵌るか、後方からの同時襲撃に警戒するべきと前回の教訓から学んだ。河トロルの戦士リドナスが警告すると後方へ走った。


(ぬし)様ッ。敵襲です♪」

「っ!#」


迷宮(ダンジョン)側も前回の教訓から学んだか、後方からも二体の牛頭巨人(ミノタウロス)が現われた。こうも手強い魔物を量産されては探索者たちの戦力も足りない。河トロルの戦士リドナスひとりでは陽動と回避に専念するしか方法は無い。後方の形勢は悪いと見える。


「マスター。下がってッ#」

「おぅ!」


リドナスの援護をしていたマキトが身を躱すと、ゴーレム娘のフラウ委員長は鋼線(ワイヤー)を射出した。迷宮(ダンジョン)の岩に絡めて即席の罠を設置する。


「リドナス!」

「ん♪」


マキトの呼びかけで瞬時に意図を悟ったリドナスは巧みに牛頭巨人(ミノタウロス)を挑発して鋼線(ワイヤー)の罠へ誘う。


「今だッ」

「くっ、んっんんん#」


キリキリと鋼線(ワイヤー)が軋み牛頭巨人(ミノタウロス)の巨体を捕えた。既に河トロルの戦士リドナスは好機と見てもう一体の牛頭巨人(ミノタウロス)へと攻撃している。その巨体の動きでは俊敏なリドナスには掠りもしないだろう。


いずれにしろ、時間稼ぎに徹していたマキトの元へ血に塗れたゴーレム娘たちが加勢に駆け付けた。こうなれば形勢は逆転される。




◆◇◇◆◇




帝都の郊外にあるマキト・クロホメロス男爵の屋敷では留守を預かるサリアニア奥様が配下の報告を受けた。


「…と言う訳で、迷宮(ダンジョン)の鍵は帝都から持ち出された様子です」

「ふむ、ご苦労ッ。…しかし、難儀な事よのぉ」


サリアニア奥様は配下に命じて、帝都の検察局から各所へ返還されたという迷宮(ダンジョン)の鍵と目される骨董品の行方を調査していた。


「奥様、旦那様へお知らせしますか?」

「うーむ。補給部隊へ言伝を頼むッ」


「はっ」


さらさらとサリアニア奥様が書き上げた命令書を持って屋敷からの使いが駆け出して行った。お付きの女騎士ジュリアが進言する。


「姫様っ、避難先の件ですが…」

「侯爵家では不満か?」


歯切れの悪い物言いに、ジュリアの懸念が窺われる。


「悪い噂が先行しております…」

「モーリスの叔父上あたりが、暗躍しておるのであろう」


「ええまぁ…」


サリアニアの実家は謀略に長けた家系で、実力が伴う戦争や戦闘では手柄も実績も少ないのだ。その中でもモーリス・シュペルタンの宮廷工作と謀略は敵にすると厄介だ。サリアニアはモーリス叔父上の顔を思い出して苦い表情をする。


主従の会話を遮り、奥様の居室へ入室の許可を求める声があった。老執事セバスが自ら伝令に走るとは余程に重大な用件らしい。


「サリアニア奥様。悪い知らせでございます」

「そうか、来たかッ」


「はい」


サリアニア奥様は老執事セバスの顔を見て事態を察した。悪い知らせは(かさ)なる物らしい。お付きの者も護衛も配下も屋敷からの脱出の準備を始めた。この日のために緊急避難の訓練も撤収準備にも抜かりは無かった。


「セバス。そなたは、屋敷に残るのか?」

「旦那様とのお約束でございます」


思えば、旦那(マキト)様が重用するこの男とは奇縁であった。屋敷の執事にしておくのは勿体無い人物に思える。


「ふむ。武運を祈るッ」

「はっ、忝い。お言葉に感謝いたします」


そう言って老執事セバスは屋敷に籠城するらしく動き始めた。その日、マキト・クロホメロス男爵の屋敷からは東門の包囲を破って女主人の馬車が逃走した。




◆◇◇◆◇




迷宮(ダンジョン)では饗宴が開かれていた。牛頭巨人(ミノタウロス)の肉は牛肉に似て、肥育されていない肉質は赤味が多く筋肉質の様だ。既に人型の魔物を解体するのも抵抗感は無い。迷宮(ダンジョン)に倒れてしまえば、後は魔物の餌か迷宮(ダンジョン)の養分として吸収されてしまうのだ。迷宮料理にも慣れたものである。


獣人の戦士バオウやリドナスは嬉々として牛頭巨人(ミノタウロス)の解体を行う。ゴーレム娘たちは血塗れに感慨も無く、黙々と作業をこなした。それでもご主人(マスター)様の為と新鮮な肉の各部位が集められて食べ比べとなった。本来であれば、肉の血抜きも十分ではなくて旨味も劣ると思うのだがマキトには上質の肉に思えた。これも迷宮(ダンジョン)の幻惑の類だろうか。


そんな訳で急遽に開催されたミノ祭りは好評であったが、迷宮(ダンジョン)の通路に響く爆発音に中断を余儀なくされた。


「マスター。この先には…討伐隊が先行している様子です#」

「うむ。意外と近い、一応、偵察してくれッ」


「はっ#」


マキトの指示にゴーレム娘が走る。





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