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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十七章 帝都地下迷宮の討伐
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ep337 地下迷宮の探索2

ep337 地下迷宮の探索2





 マキトたちは地下迷宮(ダンジョン)で野営を決めたが、迷宮の魔物は探索者たちの休息を許さない様子だ。地下迷宮(ダンジョン)でも夜の時間には亡霊が徘徊する。


「マスター。亡霊の反応が多数も……来ますッ#」

「分かっている。各機は防御陣を展開し呪印の機動をせよッ」


「「 はいッ# 」」


マキトの指示でゴーレム娘たちが幽霊(ゴースト)対策の呪印を使用した。それは機体に刻まれた紋様が淡く光り、彷徨える亡霊を寄せ付けない防護結界となる効果だ。防御陣の中央ではマキト本人が「光輝の王冠」を装備して魔力を通すと。ぴかりと輝いた。


「…ぎぁあああ、眩しいぃ、いいぃ…」

「…我が百年の恨みを思い知れぇ、えっ?…」

「…やや、やめてくれぇ、浄化されてしまうぅ…」


彷徨える亡霊も人に仇をなす悪霊も「光輝の王冠」が発する聖なる光に当てられて消滅した。迷宮(ダンジョン)の知恵を得た幽霊(ゴースト)は難を逃れて退散するが追って討伐するには至らない。当面は野営地の安全が確保出来れば十分だろうと思う。


こうして、ゴーレム娘たちの夜警にも油断は無かった。


………


数日もすると迷宮(ダンジョン)の中間部へ到達した。帝都の地下迷宮(ダンジョン)はおおまかに魔物が狩り尽くされた表層部と新たに解放された深部とそれに至る中間部に区別される。中間部は魔物の出現もあり危険な場所と考えられていたが、比較的に安全な場所には探索隊や討伐隊が補給物資を置く中継基地が設置された。


また、迷宮(ダンジョン)探索のお(こぼ)れや戦利品を目当てにして、法外な価格で補給物資を販売したり、怪我の治療や休息のための宿屋を商売とする者もいた。商魂にたくましい商売人はどこにでもいるらしい。その中でも迷宮(ダンジョン)の最深部へ至る魔物の情報と迷宮(ダンジョン)の地図を売る情報屋の存在があった。既にこの補給拠点も迷宮街と言った所か。


「あたしに任せなさいッ」

「あっ#」


マキトたちの探索隊では情報通を自認する弓使いシシリアが迷宮(ダンジョン)の情報収集へ向かった。やはり、最新情報は現地で手に入れる方が早い。


ゴーレム娘のフラウ委員長もお役所に報告された迷宮(ダンジョン)の情報は定期的に入手していたが、第二陣の討伐隊が壊滅して以降の公式情報は得られなかった。専ら帝都の管理局では、第三陣の討伐隊を結成する費用の予算化についての根回しが紛糾しているらしい。とかくお役所仕事は面倒なものだ。


「おや、これは何だ?」

「へいッ、迷宮海老の焼き菓子でごぜーます」


マキトは迷宮街の屋台で奇妙な物を発見した。


「帝都の迷宮(ダンジョン)には海老がいるのかッ?」

「保存食にもなる。当店の名物でごぜーますよ」


見ると海老を丸ごと潰して小麦粉と焼き上げた乾パンに見える。


「ほほう。ひとつ貰おう」

「へい。毎度ありッ」


マキトは名物の対価に銀貨を支払う。かなりの暴利と言えるが、地下の迷宮街では止むを得ない価格だ。


「マスター。お毒見をッ#」

「うむ」


ゴーレム娘のフラウ委員長としては、ご主人様(マスター)の護衛と危機管理を任務としており、真面目に毒物の対策も進めているのだ。


「しっ失礼なッ、毒なんぞ入っちゃいねーよ!」

「まあまあ…そう言わないと…彼女が食べてくれないからねぇ…」


屋台の店主が毒づくのもマキトの想定の内だ。


「…くっ、旦那もお人が悪い…」

「!」


名物の味は海老の風味と……乾パンだ。期待した海老せんべいには遠く及ばない。残念ながら帝国では米粉の流通は殆んど無い。


ゴーレム娘たちには少ないながらも自由になる金銭を与えている。河トロルの戦士リドナスを真似て食べ歩きをする者は無いが、買い物には興味があるらしい。フレインなどは町の古着屋で若者の衣装を仕立てると言う。そのゴーレム娘フレインは迷宮街の露店で怪しげな装備を見付けた。


「…どんな強敵でも、一撃必殺に打ち砕く剛力の籠手。998金!#」


きらーん。フレインの眼が光る。


「お嬢ちゃん。こいつが欲しいのかい?」

「うーん。お金が足りない#…」


露店の店主と見える男が価格の交渉を始めた。こんな娘が気軽に購入出来る品物か。


「今なら、前金の500金で貸し出すぜッ」

「ほ、本当に!?#」


ゴーレム娘のフレインは乗り気であるが、購入資金には全然足りない。露店の店主は分割払いを提案した。


「ああ、帰りには迷宮(ダンジョン)のお宝で、残りの半金を頂くがなぁ」

「ひゃっほぅ~マスタッに相談してみるよッ!#」


喜んでマキトの下へ帰還するゴーレム娘を見送って店主の男は落胆する。


「…ちっ、こりゃ駄目か…」


詐欺の高額商品は頻繁には売れない代物だ。


………


ゴーレム娘のフローリアは剣術の稽古をしていた。教導する剣士マーロイは意外と面倒見の良い男だ。


「相手の間合いに、注意しろッ」

「はい#」


ビシビシと風切り音と共に安物の剣を振るう。愛用の槍とは間合いも重さも反応速度も異なる様子だ。


「そうそう、連撃も相手の動きを見て、軌道を変えるのだ。…決めろッ」

「やっ、はっ、たぁぁあ#」


ゴーレム娘のフローリアは優秀な生徒らしい。剣士マーロイの模倣であるが、次々と剣戟を繰り出すと仮想敵の大岩が連撃で砕けた。と同時に安物の剣も砕け散る。


「そこまでッ」

「ありがとう、ございました#」


汗も掻かぬゴーレム娘ではあるが、実戦を想定する今の動きを精霊石で仮想戦闘(シミュレート)した。剣士マーロイの攻撃行動に合わせて追走と補助をするのもご主人(マキト)様の命令(オーダー)である。


ゴーレム娘のフローリアは迷宮街で安物の剣を買い求めた。迷宮(ダンジョン)の情報収集を終えたシシリアが帰還する。


「マーロイはあの娘が、お気に入りかしら?」

「いや、俺は委員長ちゃんが好みだが……って、何を言わすかッ!」


ひとしきり、剣士マーロイの嗜好を思い出してシシリアは納得した。冗談には構わずに本題へ入る。


「この迷宮(ダンジョン)の厄介さが判明したわ」

「それは…」


帝都の地下迷宮(ダンジョン)は広大さもあるが、その古き最深部は今も変化を続けていると言う。魔物は牛頭巨人(ミノタウロス)を頂点とする生態に加えて、迷宮(ダンジョン)の知恵を得た幽霊(ゴースト)が頻繁に発生すると言う。そんな環境を探索するには、牛頭巨人(ミノタウロス)が複数に遭遇しても打倒できる戦力と、魔法攻撃を必要とする幽霊(ゴースト)の対策が必須である。また、何日も広大な地下迷宮(ダンジョン)で活動するには補給物資の維持管理も必要となる。そんな、大規模な討伐隊と探索隊を維持できるのは、帝国貴族の一部と豪商の支援を受けた冒険者の大規模な組織(チーム)だけと思われる。


「…と言う訳で、マキト君の役割は重要なのよッ」

「へぇー」


それに、帝都では地下迷宮(ダンジョン)の表層部の魔物を狩り尽くした為に、深部へ至る区画の封印を新たに解放したとの公式発表だったが、何者かの手で不意に地下迷宮(ダンジョン)の封印が破られたのは周知の事実であった。いずれか敵国の謀略の噂もあるが、陰謀論は迷宮(ダンジョン)のお宝に一攫千金を夢見る冒険者には関心の無い事だ。


迷宮街の食べ歩きをしていた獣人の戦士バオウとリドナスが帰還した。


「GFU 迷宮サバが 旨かったぜぇ」

「大満足で、ゴザイマス♪」


地下迷宮(ダンジョン)(サバ)が獲れるとは、何か騙されているのだろう。





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