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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十七章 帝都地下迷宮の討伐
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ep336 地下迷宮の探索

ep336 地下迷宮の探索





 マキトたち探索隊は帝都の郊外にあるヘルフォルド子爵の別邸から地下迷宮(ダンジョン)へ侵入した。地下迷宮(ダンジョン)への入口は迷宮管理課のお役人により厳重に封鎖されており、マキトは多少の賄賂を使って封鎖を解除した。彼らはヘルフォルド子爵の別邸の改築と修繕を行う職人との名目である。


本来であれば、帝都にある正規の入場口から正規の料金を支払って迷宮(ダンジョン)の探索に挑戦するのだが、マキトとしては本隊の補給や支援の為にも自由に出入りの出来る裁量を必要とした。工事現場であれば、建設資材を搬入する名目で出入りも自由となるだろう。全体の支出と安全の確保を考えれば大きな出費でもない。


「本当に、帝都の地下迷宮(ダンジョン)へ通じているのかッ?」

「任せて下さい。伊達に帝国貴族はやっていませんよ」


マキトが応えるのに剣士マーロイは関心している。


「しっかし、本当にお貴族さまだとは…上手くやった者だぜッ」

「へぇ、あんたも出世しなッ!」


ビシシと尻を叩かれるのも慣れた物か。奥さんのナデアと旦那のマーロイの夫婦漫才はいつもの事だ。獣人の戦士バオウが呟く。


「GFU 魔物の匂いだ…」

「マスター。群れ鼠を発見しました。…魔物を迎撃シマス#」


ゴーレム娘のフラウ委員長が索敵した結果を報告すると、命令も待たずに探掘者のバオウとシシリアが前線へ飛び出した。探索隊の反応は良い。


「行くわよッ」

「ひやっほう~#」


負けじとゴーレム娘たちも続く。


「レインちゃん。待ってぇ#」

「我々も 迎撃に♪」


獣人の戦士リドナスは逸る気持ちを抑えてご主人様(マキト)に問うが、マキトの返事は意外なものだ。


「いや、待てッ……戦闘の様子を見よう」

「ん♪」


昔し馴染みとは言えども、久しぶりの再会に各自の実力は確かめておきたい。敵は大鼠の類だが、マキトは戦闘の様子を観察した。


………


剣士マーロイが斬撃を振るうと大鼠は真っ二つに裂けた。連撃を振るうと後続の大鼠も数匹が切り飛ばされる。突出したマーロイの支援にナデアが水を撒くと大鼠の群れが動揺して避けた。魔物除けの聖水は効果がありそうに見える。


ゴーレム娘のフローリアが槍の穂先に大鼠を仕留めた。


「はぁあああッ!#」

「助かる。後ろは任せたぜッ」


剣士マーロイを先頭にしてゴーレム娘のフローリアが支援に付いた。この方面は任せても問題は無いだろう。


「GHA 手応えの無いヤツらだッ」

「やっ、はっ、たぁああ!#」


乱戦の中で獣人の戦士バオウが大鼠を握り潰す。彼の膂力と握力の前では赤子の首を捻るように容易だ。その横には軽快な打撃で大鼠を粉砕するゴーレム娘フレインの姿も見える。


「油断しないでッ!」

「ふん#」


前線を抜け出した大鼠へ風切り音と共に弓矢が突き立つ。どうと転がる大鼠は獣人の戦士リドナスが止めを刺した。タタタンと石弓を三連射する射撃音も聞こえる。


マキトたち探索隊の連携には綻びも無くて大鼠の群れを殲滅した。




◆◇◇◆◇




屋敷の留守を任されたサリアニア奥様は幼児の群れに襲撃されていた。屋敷の研究室には鍵を掛けて妖精族のポポロが幼児を追う。


「こぉらー、待つぅ。チャ!」

「きゃはっ」

「WOWUUU」


子犬に騎乗するのは剣士マーロイとナデアの娘ハルミナだ。来年には三歳となるハルミナは悪戯盛りの我侭ぶりである。それを追いかけるのは幼女姿のポポロであるが、幼女が幼児の面倒を見るのは困難と見える。


「ハルミナ、ロック、大人しくしなさいッ」

「きゃああっ」

「WOW、WOW」


その子犬は獣人の血が色濃く出たバオウとシシリアの子供ロックで、元気にハルミナを乗せて屋敷を走る。獣人の身体能力には驚くばかりだ。


「奥様っ、ご自重くださいませ」

「分かっておる…」


帝都の地下迷宮(ダンジョン)の探索が発案されて、サリアニア奥様も参戦するかと思われたが、意外にも屋敷に留まった。しかし、留守番の役割にしても幼児の面倒を見るのは相応しくないと思える。屋敷の女中(メイド)を総動員にして幼児の面倒を見る事になりそうだ。




◆◇◇◆◇




野営地に補給機が到着した。犬型のゴーレムT型は胴体に水や食糧と燃料を格納している。弓の手入れをしていたシシリアが目を剥く。


「これよッこれ……流石のマキトくんだわッ」

「GFU 飯の時間か…」


マキトの男爵家としての財力も当てにする事だが、マキト本人の食事への拘りも期待する物だ。迷宮(ダンジョン)の食事にしては豪華な食材が並ぶ。


「大鼠はバオウでも、食えねーからなぁ」

「この焼肉は、何の肉かしら?」


剣士マーロイが揶揄するのも気にせず、彼らはマキトが用意した炭火焼肉に噛り付く。同じ家畜の肉でも炭火で焼くと味わいが異なるものだ。特製のタレも忘れずに提供する。


「GHA これは、タマラぬ!」

「ん、美味しゅう ゴザイマス♪」


久しぶりに、食いしん坊コンビの復活だ。周囲の警戒をゴーレム娘に任せて、彼らは食事を楽しんだ。


………


暗闇でも夜目が利くゴーレム娘のフラウ委員長が洞窟を警戒する。


「見張りを任せて、済まない…」

「いえ、マスター。お任せをッ…私たちは、お役目が嬉しいのデス#」


マキトはフラウ委員長の肩に手を置いて魔力を注いだ。じんわりと暖かな波動が胸郭を満たす。


「…魔物の気配は、アリマセン#…」

「…こちら、問題なし#…」


近距離の精霊石の通信で妹たちから報告が届く。ゴーレム娘のフラウ委員長はささやかな幸せを感じていた。


「…Pyy! 敵襲ッ#…」

「マスター。警戒網に反応がありました!#」


「はっ」


どうやら簡単には休めない様子だ。





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