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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十六章 タンメル地方の代官
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ep330 包囲殲滅の罠

ep330 包囲殲滅の罠





 マキトたちはヘルフォルド子爵邸の悪霊討伐の際に、地下迷宮(ダンジョン)への入口を発見し、内部調査を行った。どうやら子爵邸の幽霊(ゴースト)迷宮(ダンジョン)から湧き出している様子だ。


ゴーレム娘のフローリアが呪い人形を掲げる。悪霊除けのお守りである呪い人形はリリィお嬢様の手作りであるが、残念な容姿に反して効果は高い。悪人もひれ伏す天下の副将軍の印籠の如くに亡霊どもは平伏する有様だ。そんなに恐ろしい呪いがこの人形には込められているのだろうか。


「宮殿の方角は合っているか?」

「間違いはありません#」


マキトが尋ねると、迷宮(ダンジョン)の地図を記入しつつ、ゴーレム娘のフラウ委員長が答えた。帝都の地下迷宮(ダンジョン)の中心部は最も古き迷宮(ダンジョン)へ通じると言う。いずれも宮殿の地下が最も古いと考えられた。


幽霊(ゴースト)の発生源を確認するぞッ」

「はい、マスター#」


このまま地下水路を辿れば、地下迷宮(ダンジョン)の中心部へ辿り着けると思われた。時折に現われる魔物はゴーレム娘のフレインが鉄拳で粉砕する。


「やっ、はっ、たぁ!#」

「レインちゃん。お見事ですぅ#」


主人様(マキト)の指示がなくとも自動運転のゴーレム娘たちは迷宮(ダンジョン)を進む。楽ちんの迷宮(ダンジョン)探索はマキトを堕落させるばかりだ。


マキトたちは迷宮(ダンジョン)の開けた場所に出た。


「マスター。敵襲ですッ#」

「かかれッ!」


それは巨人に牛の角が生えた大型の魔物と見える。牛巨人(ミノタウロス)は人族の倍ほどもあり、筋肉質の体躯で棍棒を振り回している。…こいつが魔王かッ。


「きゃっ!#」

「ボクに任せてッ#」

「私も、お相手しましょう#」


ゴーレム娘のフローリアが壁となり正面から牛巨人(ミノタウロス)に対峙した。上段からの棍棒を躱してフローリアは愛用の槍を突く。


「はっ、はぁぁああ#」


-GOHYUU-


やはり迷宮(ダンジョン)の魔物に話し合いは通じない様子だ。ゴーレム娘のフレインが小柄な体躯で牛巨人(ミノタウロス)の足元へ飛び込む。


「せいやッ#」


-GOHAッ!-


牛巨人(ミノタウロス)には、フレインの鉄拳がひざ裏に入って体勢を崩した。


「眠りなさいッ#」


タン。タン。タン。ゴーレム娘のフラウ委員長が特殊弾を射出する。それは野生の茸から抽出した麻痺毒と猛毒を混合した物質だ。直撃を喰らえば、眠る程度の優しい効果では無い。


-GOHFUU-


麻痺毒と猛毒に動きの鈍る牛巨人(ミノタウロス)などゴーレム娘たちの敵では無かった。三機の連携も良好で大型の魔物を撲殺すると、特に戦闘中の役割も無かったマキトが一番に安堵の吐息を漏らした。


「ふう。この程度か……」

「マスター。この先で扉が開かれる音がしますッ」


「なにッ!」


さらに、迷宮(ダンジョン)の奥へと探索は続く。




◆◇◇◆◇




明らかに封印された古き迷宮(ダンジョン)の門戸では、開封の儀式が執り行われていた。儀式を主導する黒衣の僧侶たちは漆黒の僧院の者と見えて高齢の者が多い。開封の為に集められた鍵は長年の間に各管理組織から散逸していたが、協力者の助力もあり無事に全ての鍵を集める事が出来た。


封印の魔方陣に鍵となる品物が捧げられると、古き迷宮(ダンジョン)の門戸が動き始めた。


-ZUGOGOGOGRGO-


「おぉぉお!」

「…遂に、我々の悲願が達成された…」

「…信徒たちよ。我らが盟主様をお迎えするのだッ…」


開封の儀式は成功して、古き迷宮(ダンジョン)から数百年に渡る瘴気が溢れ出した。この先に盟主と呼ばれる何者かが封印されているのだろう。


漆黒の僧院の司祭に導かれて黒マントの男が現われた。儀式を監督する貴族の若様だろうか。


「レスター様。こちらへ」

「うむ。ご苦労ッ」


それはヘルフォルド子爵のご息子レスター・デルバルの姿だ。馬鹿息子は放蕩の上に事件を起こして帝都を追放された筈だが、こんな地下に潜伏していたのか。


「盟主様が顕現なされますッ」

「おぉぉお!」


元貴族の若様レスター・デルバルに濃い瘴気が纏わり付いた。


「ほぉ…」

「ぐがぁ、あがっ、がぁあああー!!」


レスター・デルバルに憑り付いた何者かが若い肉体を改造して姿を変えた。それは魔人の如き筋肉と禍々しい瘴気を身に纏っている。


「ふっ、成功したかッ」


魔人の顕現を見届けて協力者は姿を消した。




◆◇◇◆◇




マキトたちは帝都の地下迷宮(ダンジョン)へ合流したが、通路が開けると大型の魔物が現われて不利を悟った。現場はすり鉢状の広間で入口の途端に後方から襲撃を受けた。


「マスター。お下がりください!#」

「くっ!」


ゴーレム娘のフラウ委員長は警告するが、当然に広間の奥へ退避するしか方法はない。すり鉢状の広間は他にも二か所の出入口があり、逃げ込むのは容易と見えた。


後方からの襲撃は先程の牛巨人(ミノタウロス)と同系で色違いの大型の魔物だ。タン。タン。タン。ゴーレム娘のフラウ委員長が目くらましの特殊弾を射出する。それは火炎と発光をして魔物の眼を欺く時間稼ぎだろう。


「きゃっ、魔物が!…#」

「行くぜッ#」


前方の左右の出入口からも牛巨人(ミノタウロス)と同系の魔物が現われた。ゴーレム娘のフレインとフローリアが左右へ走る。…すり鉢状の広間は包囲殲滅の罠かッ。


「ま、待てッ……」


主人様(マキト)の制止よりも早く飛び出して、ゴーレム娘たちは戦力分散の愚行を冒した。指揮官機のフラウ委員長は精霊石の短距離通信で、周りの戦況も見えているハズだ。


マキトの心配を余所にゴーレム娘たちは善戦をしていた。


ゴーレム娘のフラウ委員長は金属線(ワイヤー)を射出して牛巨人(ミノタウロス)を絡め取る。既に手足に射撃を受けて損傷していた牛巨人(ミノタウロス)は足を絡めて転倒した。


(とど)めですッ#」

「つっ、強ぇえ……」


フラウ委員長が容赦なく牛巨人(ミノタウロス)の顔面へ火炎弾放つと、苦悶に暴れる巨体へ金属線(ワイヤー)が食い込んだ。迷宮(ダンジョン)の魔物と言えども生物として呼吸は必要らしい。…ああいう死に方は御免だ。


すり鉢状の広間の出入口の片方を見ると、ゴーレム娘フレインが膝を着いた牛巨人(ミノタウロス)の顎を強打して、格闘戦に勝利していた。


-DOGUUN-


巨体の魔物も脳震盪を起こして倒れた。


もう一方のゴーレム娘フローリアは早々に死闘を決着したらしく、長槍に得物をひっ提げて帰還する。


「ご主人(マスタッ)様。料理しますか?#」

「あぁ、うん。後で……」


既に料理された後に見えるが、嬉しそうなフローリアの提案にマキトは否とは言えなかった。


迷宮(ダンジョン)牛巨人(ミノタウロス)との戦闘でもゴーレム娘たちの成長の方が著しいのは嬉しい誤算だ。





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