表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十六章 タンメル地方の代官
343/365

ep323 復興の槌音

ep323 復興の槌音





 新任の代官マキト・クロホメロス男爵は活動拠点としてタンメル村の館を再建した。焼け落ちた領主の館は村の微高地にあり水利も良い適地だった。やはり先人の知恵は侮れない物がある。


マキトは森が開けた場所で大穴を掘る。


「この辺りで良いかな…【穴掘】【掘削】」

「っ!#」


少し掘り下げると粘土層を発見した。


「フレイン。この粘土を運んでくれッ」

「ガッテン、承知っ#」


どこでそんな言葉を覚えて来るのか。ゴーレム娘のフレインは嬉々として粘土を掘り始めた。これでも土の精霊石を内蔵したゴーレムで土木作業は得意なのだ。


-GOPAN-


粘土層を支配下に置いたゴーレム娘のフレインは身体強化の要領で、自身の何倍もある地盤を引き剥がした。良質な粘土の採取に成功したらしい。フレインが成果を誇示する。


「マスタッ。見てみてぇ#」

「おおぉ!」


見ているよ、可愛いヤツめッ。これで建設資材と原材料には困らない。


………


タンメル村には復興の槌音(つちおと)が響き館の再建作業が進んでいる。マキトも自ら魔法を振るい建築資材を生成する。


「煉瓦をッ【形成】」


粘土を形成して煉瓦を作成した。


「そのまま、【複製】【複製】【複製】【複製】♪【複製】【複製】【複製】【複製】♪」


原材料の粘土がある限りに煉瓦を複製するのも慣れた手順だ。


「後の指揮は任せるッ」

「はい。マスター#」


建築現場でもゴーレム娘のフラウ委員長は有能で、現場監督から進捗管理に資材の手配と何でもこなす。煉瓦の作成も彼女がマキトに依頼した作業だ。


「…第三班は、城壁の修復に取り掛かります#」

「「 応う! 」」


現場の指揮を任せても支障は無いと見える。


………


マキトが仮設した飯場(はんば)を訪れるとゴーレム娘のフローリアが女中(メイド)姿で立ち働いていた。フローリアが工事現場の力仕事よりも家事を好むというのは意外でもある。


「飯の準備はどうかな?」

「はい、ご主人(マスタッ)様。出来立てですよッ#」


大鍋の中身を見ると根菜と茸を煮込んだスープがあり、竈で湯気を噴いた釜は茸の炊き込みご飯の香りだった。


「追加の食材を投入しよう」

「はっ#」


マキトはスープに乾麺を投入した。これは帝都の工場で試作した即席麺でお湯に入れると縮れ麺となるのだ。マキトはひと足先に食事を頂いた。


どかどかと泥に汚れた職人が工事現場から帰還する。


「おぅ、飯だッ飯だぁ!」

「…リアちゃん。今日もありがとう~」

「…何だ。この飯はッ、美味いぞーぉぉお!」


概ね職人達には好評な様子だ。


「ご主人(マスタッ)様からの、差し入れですぅ#」

「「 おぉぉぉおお! 」」


根菜のスープへフローリアが即席麺を投入すると次々に縮れ麺が花を開いた。肉体労働者も大盛飯には満足だろう。


………


タンメル村の周辺を探索していた河トロルの戦士リドナスが帰還した。


(ぬし)様。ただいま戻りました♪」

「うむ。ご苦労ッ」


腐肉喰(グール)の他に 魔物は居ません、シカシ♪…」


リドナスの報告内容では、森林地帯に潜伏する盗賊団と原住民の争う形跡があると言う。安易に盗賊団を殲滅しても良いものか。


「盗賊団の内情が気になる…」


大方は帝都から流れて来た盗賊団だろうか。兎族の例もあり隠れ里の調査も必要だろう。


「…盗賊団の正体を知りたい。それと、原住民の村も調査を続けてくれッ」

「はっ♪」


本格的に密偵方の増援が必要と思える。




◆◇◇◆◇




帝都の郊外にある屋敷では新人女中(メイド)の教育が行われていた。どんな新人であっても、屋敷の使用人のまとめ役である老執事セバスの訓示は怠らない。


「…という訳で、旦那様の言い付けには逆らっては成りません。先月も旦那様の寝室を覗いた女中(メイド)解雇(クビ)となりました…」


なおも、老執事セバスの訓示は続いているが、解雇(クビ)と聞いては縛り首に吊るされる光景が思い浮かぶ。そんな死に姿は苦しいだろう。長耳の女中(メイド)たちは感嘆を漏らす。


「…ひぃ! マキト様、素敵ッ…」

「…きゃっ! あたいの魅力でメロメロよッ」

「…あわわわわ、魔王様に、食べられちゃうぅ…」


蛮族の出身の所為か躾も十分とは見えない。


「これッ、私語は慎みなさい!…奴隷の首輪を嵌めますよッ」


「「「 ひっ! 」」」


魔王様への貢物として贈られた身では奴隷の首輪を嵌められても文句は言えない。せめて苦しまぬ様に殺して欲しいものだ。帝都の屋敷は広大で、隠れ里の全ての小屋を足しても部屋数は及ばないだろう。魔王(マキト)様の権勢の絶大さを想像させるのだ。


そんな魔王(マキト)様は長耳の兎族の娘たちを再教育して屋敷の女中(メイド)として使うと言うのだ。その恩義に報いなければ、隠れ里の住民は皆殺しに虐殺されるだろう。今に思い出しても石像の兵士が腐肉喰(グール)を殲滅する様子は恐ろしくも残忍な光景だった。あの刃が自分たちに向けられないとも限らないのだ。


ぶるぶるぶる。新人女中(メイド)の身震いは止まらない。





--


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ