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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十五章 奇岩島探検と配達任務
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ep313 近海交易の成果

ep313 近海交易の成果





 奇岩島の捜索から数日後、マキト・クロホメロス男爵と家臣たちは無事に夏の家族旅行を終えて帝都へ帰還した。北海の孤島での生活は多少の避暑地に気分転換となっただろうか。


「近頃は、除霊探偵と呼ばれる者がいるらしいが、知っているか?」

「はっ、町人の噂の人物かと…思われまする」


マキトは帝都の屋敷の留守を任せていた執事のセバスに尋ねた。


「セバスも苦労が絶えないねぇ」

「滅相も御座いません」


内心は冷や汗を掻いて居ようが、セバスは表情にも出ない。マキトは腹の探り合いを止めて執事のセバスを退出させた。


「下がって良いぞッ」

「はっ」


次に、秘書官の制服に着替えたゴーレム娘のフラウ委員長に尋ねる。マキトが留守の間に警吏長官の決裁文書は滞っていた。


「さて、警吏からの報告書だが……どう見るか?」

「裏で何者かが働いた様子に、この罠の形状には見覚えがあります#」


「やはり、そうか…」


何やら独りで警吏長官のマキトは思案する。


西のハイハルブに寄港したニアマリン号は予定の航海に奇岩島へ立ち寄りマキト・クロホメロス男爵と家臣たちを収容した。帰りの航海も快適な船旅だった。


表向き、ニアマリン号はハイハルブで安価な食糧を仕入れて帝都へ輸送した。帝都の食糧不足と小麦の高騰もあって幾何(いくばく)かの利益を計上したが、帆船による大量輸送を計算盤で(はじ)いても、陸路を荷馬車で輸送するのと比べて大きく利益に違いは無い。


「こちらに、商業売上の報告書がございます#」

「うむ。上々であろう。工場の方はどうか?」


内実は、奇岩島で発見した水晶石を輸入して大きな利益を上げた。水晶石は豊富な魔力を含んで磨けば宝飾品としても高値が付いた。大蛇の餌にするには勿体無い品質だ。水晶石はそのまま宝石商へ卸しても値が付くのだけど、付加価値を上げる為に山オーガ族の職人を呼び寄せて加工を任せる算段を付けた。鬼人の少女ギンナの伝手で計画は順調に進む。


「新たな生産ラインが完成しております。工場の視察をなさいますか?#」

「うむ。楽しみにしておるぞッ」


「はい。承ります#」


マキトは新たな商売を始める予定だ。




◆◇◇◆◇




執事のセバスは昼と深夜にリリィお嬢様の居室へ食事を運ぶ。昼間は男爵家の執事として、夜はリリィお嬢様の忠実な下僕として働いている。


「お嬢様、申し訳ありません。…男爵に気取られた様子です」

「うふふふ、それは予想の内…くれぐれも使用人には気付かれぬ様にッ」


セバスとマキトの間には契約でリリィお嬢様の存在を隠蔽する事が求められた。発覚すればリリィお嬢様は男爵に消されてしまうだろう。


「勿論にございますッ」

「それで、旦那様(マキト)はお怒りかしら?」


リリィお嬢様が男爵(マキト)の様子を尋ねる。ここ最近は地下室へ男爵(マキト)の訪問も無い。


「いえ。そうは見えません」

「おほほほ、上々上乗…」


リリィ・アントワネの計画は深淵にして気長なものだ。お嬢様の機嫌が良い事にセバスは安堵する。




◆◇◇◆◇




マキト・クロホメロス男爵がシュペルタン侯爵家の出資金で設立した食品工場では新しい製造機械が稼働していた。


「こちらで原料の小麦粉を投入し、捏ね上げて成型します」

「ほほう…」


工場長の説明にマキトが頷く。それはゴーレム技術を応用した自動運転の製麺所だ。保存食に乾麺を生産している。


「乾燥室も完備しております」

「…なるほど、順調であるかッ」


問題の飴を生産していた設備は縮小して大掛かりなラインを敷いた。安価な小麦と雑穀を使い麺を打つ。自動運転のゴーレム装置にしては中々の腕前だろう。ゴーレム装置を整備して魔力を注ぐ職人たちの愛情が感じられる。まだまだ、ゴーレム娘たちの整備を任せられる腕前ではないが、将来はゴーレム産業の職人となる事が期待されるのだ。


装置の一部に不具合を生じて、生産ラインの全体が停止した。直ぐに担当の職人が飛び出して装置を宥めにかかる。


「おおぉ、S07号! 機嫌を直しておくれッ」

「!…」


職人はゴーレム装置の詰まりを取り除き、愛情たっぷりに魔力を注ぐ。マキトは工場の職人魂を見た。それはマキトがゴーレム娘にかける愛情と同様に思えた。


お蔭で工場の稼働は順調である。




◆◇◇◆◇




 そこは帝都の南区の貧民街と新市街の境目で中間地帯(グレーゾーン)に建つ娼館だ。建物には高級料亭や奴隷の販売所もあり複合商業施設でもある。経営者は闇の名士で苦界の支配人とも噂される女主人のブラスだ。


女主人のブラスはウネウネと生物の様にうねる髪を揺らして感想を漏らす。


「随分と儲けている様子じゃないかッ…警吏長官の職という物は…そんなに美味しいものかねぇ」

「その様です」


その昆虫顔の妖精は澄まし顔で応えた。


「ならば、だっぷり…絞り取ってやろうぞッ」

「はい。手筈を整えます」


主人の意を汲むのも配下の務め。昆虫顔の妖精スターシアは虹色の鱗粉を零した。


「うむ。お前の手腕に期待しておる」

「!…」


スターシアは元主人の子爵様が罪人の咎で手放した所を奴隷商会が買い取り、今では女主人のブラスの忠実な配下と見える。





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