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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第三章 迷宮の探索者とお宝
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030 迷宮の攻略

030 迷宮の攻略





 僕は城郭都市キドに帰還して迷宮に入った。


どうしても、ニビが同行したいと言うので幻術を使い無難に獣人の振りをしている。ニビは幻術に自身満々の様子だが、獣人の戦士バオウは匂いで分かるのか対応が丁寧だ。それに比べて剣士マーロイは……迷宮の通路の先に三体の大蜘蛛が現れた。


「GUF 蜘蛛だ!」


先頭を歩くバオウが敵を見つけて先制する。狐顔の幼女ニビが飛び出した。バオウが相手する大蜘蛛の隣で、ニビが尻尾を振るい一体の大蜘蛛を吹き飛ばした。今は一本しか尻尾を見せていない。


「雑魚よのぉ」

「こら!ちびっ子。前に出るな!」


剣士マーロイが怒鳴りながら槍を突いて大蜘蛛に傷を負わせる。狐顔の幼女ニビは涼しい顔だ。すぐに大蜘蛛は掃討された。巨大蜘蛛の巣から上階に逃げ出した大蜘蛛は別の探索者の手で殲滅のされるだろう。


「ふん!」

「本当に大丈夫、なんだろうな…」

「GHA マキトの 身内だ 問題ない」


マーロイは狐顔の幼女ニビを睨み付けて言うが、ニビは無視しており、バオウは泰然と見える。


「まあ、ニビちゃんの実力は見ての通りだし、先に進みましょう」


シシリアはニビの味方の様でニマニマしていた。迷宮の巨大蜘蛛の巣があった螺旋の坂を下り先へ進む。地図にはその先の情報があった。


「情報では、この先に地虫の群れがいる」

「また、虫なのぉ~」


地図を見ながらマーロイは言うがシシリアは嫌な顔をしている。マーロイは剣で切れない魔物の対策に槍を装備に追加していた。バオウは両手に手斧を持っている。


前回の経験から対策した装備のおかげか、ここまでは順調だ。


「GUF 地虫だ!」

「っ!」


バオウが警告する。地虫の魔物は芋虫の様な図体で表面に硬い甲殻の皮膚を持っていた。地虫の動きはあまり早くない。ぞれぞれが得物で攻撃はじめたので僕は杖で地虫を叩いた。


「…【切断】」


地虫の硬殻に魔力が走るが傷ひとつも付かない。もういちど杖で地虫を叩く。


「…【粉砕】」


-PIGYYY-


どうやら効いた様だ地虫の硬殻が破損して亀裂が出来た。


「せいや!」


マーロイが亀裂に槍を突き刺すと地虫が鳴いた。既に地虫は虫の息だ。


-PIGYUE-


バオウの斧は地虫に有効打を与えて硬殻をかち割っていた。ニビは尻尾で地虫を転がし腹を見せた所をリドナスが止めを刺す。シシリアはいつでも援護できる構えのままだ。あらかた地虫を蹴散らしてシシリアに尋ねる。


「地虫の有効素材は?」

「無いわ」


残念ながら地虫は換金率が悪いらしい。シシリアが嫌がる訳だ。地虫を掃討したマーロイが槍を片手にやって来た。


「情報では…次は飛行する虫の群れだ。シシリア頼む」

「分かったわ」


僕は土塊を捏ねて球を用意した。


「…【形成】【複製】…【複製】【形成】…」


………


しばらく進むと昆虫の羽音が聞こえて来た。


「GUU 蜂?、いや蟻だ!」


バオウが警戒するが、人の顔ほどもある蟻は壁面に蟻塚の様な巣を作り、頻繁に出入りしていた。よく見ると土塊の様な物をくわえて巣に入って行く……羽付きの蟻は斥候だろうか。


「数が多い…刺激するなよ」

「!…」


マーロイは警告するが……その時、羽付きの蟻が一斉に飛び立つ。僕らは交戦状態に入った。


バオウは手斧で羽蟻を殴り付けるが、弾け飛んだ羽蟻は痛手もなく戦線に復帰してくる。むしろ、マーロイが切りつける剣戟の方が効果がありそうだ。僕は土塊の球を投じた。


「シシリアさん!」

「風吹いて圧倒せよ…【風圧】」


シシリアが呪文を唱えると風が一帯となって羽蟻の群れを押し返した。それと同時に空中で籠球ほどの土球が砕けた。中から微細な棘を模した破片が飛び散る。


棘針と風圧で算を乱した羽蟻は地に落ちたところを叩き潰された。しかし、騒ぎを聞きつけたのか、蟻塚から続々と大蟻が湧き出してきた。


「マズイ、強行突破する!」

「「「おう」」」


マーロイの判断で僕らはその場を逃げ出した。


「地図では、この先に水場があるハズだが…」

「GMU …」


暗い通路の先の何かに大蟻が集っていたが、未だこちらには気付いていない。よく見ると探索者の男と見える死体を大蟻が食い荒らしている。うっぷグロ禁だ。


バオウも押し黙る無残さだが、僕らは息を詰めて静かに通り過ぎた。しばらく行くと複数の分岐が集まる小部屋に出た。


「GUU 暗がりに何かいる…」

「あ、あそこ!」


シシリアが明りを照らすその先の通路には、緑色の革鎧をまとい膝を付いて蹲る女の姿があった。思わずマーロイが駆け寄る。


「おい、お前! 無事か?」


-KYAAAA-


革鎧の女は立ち上がると両手の鎌を振り下ろした。抜き打ちの剣でマーロイが鎌を打ち払い…呟く。


「カマキリ女がッ」


立ち上がった蟷螂(カマキリ)女はカマキリの顔をして上半身は人間の女に似ているが、下半身は四本の足があり両手の鎌と合わせても正に蟷螂(カマキリ)だ。目は昆虫の複眼で口元の牙は獰猛そのものだが、長い頭髪と首から下の体型はエロい…マーロイが騙される訳だ。


「男の純情を踏みにじりやがって!」

「あんたが、言うか…」

「!…」


マーロイの軽口にシシリアが応えようとした。その時に他の通路からも蟷螂(カマキリ)女が現れた! 僕らとこの小部屋をめぐり乱戦となる。


蟷螂(カマキリ)女の鎌による打撃を杖で受け流し僕は念じた。


「(やめろ 話がある)」


オル婆の遺品であるツバ広の古ぼけた帽子には異種族と意志を通わせる仕組みがあった。


「(僕は 敵じゃない 落ち着け)」


-KYAWAA-


再度の対話を試みるが、話が通じない様子だ。少しでも人型に近い容姿なので話が出来るかと期待したが止むを得ない。僕は鎌に杖を叩き付けた。


「…【切断】」


-KYAWEE-


鎌が切れ飛ぶ。蟷螂(カマキリ)女は鎌を振り上げるが再度に切断をお見舞いする。それでも、蟷螂(カマキリ)女の闘志は消えず噛みついて来たところで、首筋に切断を入れて首を刎ねた。


蟷螂(カマキリ)女はしばらくガタガタと震えていたが、見ていて気持ち良いものでは無い。他の者たちも無事に切り抜けた様子で戦闘は終了した。


「カマキリの有効素材は?」

「両手の鎌よ」


僕が尋ねるとシシリアが即答した。既にリドナスが鎌を回収している。小部屋には複数の分岐があり、どの通路を進むべきか。


(ぬし)様、この先に 水の匂いが シマス」

「GHA いいじゃねーか」


リドナスが言うのをバオウが支持した。鼻の良さでは信頼がある様子だ。分岐のひとつを選び通路を進む。幾分か下りの通路を進むと水場がある広場に出た。


「GAA…」

「でかい…」


見上げると水場の上の壁面に蟷螂(カマキリ)の卵塊があり、小蟷螂が湧き出していた。その水場を守る様にして大蟷螂が囲んでおり、中でも頭抜けて巨大な蟷螂がいた。


「散開して各自に応戦する。バオウと俺がデカイのを殺る!」

「「「おう!」」」


護衛の大蟷螂は並の戦力だ一対一であれば負けはしない。小蟷螂は無視しても問題ないだろう。巨大蟷螂だけが危険だが……僕は大蟷螂の一体を相手にする。杖を振るって!


「…【切断】」


切断の技が有効なうちは戦えるが、僕は複数の大蟷螂に挟まれない様に立ち周る。やはり、巨大蟷螂を相手にする二人が苦戦している様子だ。


バオウは巨大蟷螂に押し負けまいと踏ん張っているが、有効打を与えられない様子だ。一方のマーロイは接近して胴を狙うようだが、鎌の攻防が巧みで踏み込めない。


シシリアを援護していたニビと合流して話かける。


「このままでは押し負ける」

「同感じゃ」

「あたしが援護を…」


僕とニビの背後でシシリアが呪文を唱える。


「大気と神気と霊気の軋轢をもて、切り裂け!【風刃】」


完全詠唱により練られた魔力とイメージが呪文の威力を上げると、ひと際に大きな風の刃が走った。巨大蟷螂に風の刃が襲いかかる。


-BYWAWAWAW-


突然に巨大蟷螂が羽を開き、振動を伴う羽音が響き渡ると…風の刃は吹き散らされた。


「なんだと…」


誰が呟いたか僕らは茫然と巨大蟷螂を見つめていた。



巨大蟷螂が羽を仕舞う。その瞬間に巨大蟷螂は違和感を感じていた。何者かが背後の水場から立ち上がり、巨大蟷螂の懐へ内羽の裏に異物を投げ込んだ…リドナスだ!


軋む内羽に巨大蟷螂が慌てる。そのスキを待たずに巨大蟷螂の両側からマーロイとバオウが切り込んだ。あやまたず、巨大蟷螂の羽裏へふたりの刃は胴体を切り裂いた。


体液を流して暴れる巨大蟷螂に追撃の刃を振るう。僕は周囲の大蟷螂を掃討しつつ巨大蟷螂の最後を待った。既に討伐は時間の問題だろう。


戦いは終わった。


大小の蟷螂が逃げ散ってゆく。殊勲の働きのリドナスを労う。


「ご苦労さま、大活躍だね」

「いえ…お役に 立てて 嬉しい デス」


リドナスは顔色を紅くして俯いた。


巨大蟷螂の体を調べると…リドナスは回収した大蟷螂の鎌を内羽へ投げ込んだようだ。水場の上の壁面にある蟷螂の卵塊を苦労して水場につき落すと、ウナギのような魚が多数で喰らいつくした。


リドナスがウナギのような目の無い魚を取って来て、料理してくれと言う。目無しウナギを捌いて塩で下茹でしておく、ぬめりを取るためだ。


皮を下にして鉄板に並べ焼き目を付ける。皮から油が出て香ばしくなる。ウナギの骨から出汁を取って野菜スープにするには蒸気鍋の出番だ。


迷宮で水の調達は必須だが、食料もまた現地で調達できると助かる。探索の限界点が伸びる。広場の片隅で夕食を取り休息することになった。


僕はひとり思考する…蟷螂が水場に集まる魔物や魔獣を喰らい。水に落ちた蟷螂を魚が喰らい。その魚を僕らが食う。


僕は、なんだか神妙な気持ちで、香ばしく焼けた目無しのウナギを食べた。






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