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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十四章 帝国周遊と新婚旅行
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ep305 子爵家の舞踏会

ep305 子爵家の舞踏会





 ゴーレム娘たちは子爵家の舞踏会でダンスの途中に罠に落ちた。それぞれが分断されて舞踏(ダンス)のお相手と戦うのだ。


慣れない貴婦人のドレスに戸惑いながらも機敏なダンスを見せたのはゴーレム娘のフレインだった。男勝りな彼女も今晩の主役かと見える舞踊技(パフォーマンス)を見せて招待客の歓声を誘う。


「おおぉぉお~」


ダンスのお相手は貴族の坊やらしくゴーレム娘フレインの実力を見誤ったか。


ばたん。と舞踏会場に魔の口が空いた。


「ちょつ、待ってぇ#」

「僕と一緒に、奈落へ落ちて貰おうかっ」


ゴーレム娘フレインは機敏な反射神経で落とし穴の動作を回避しようとしたが、貴族の坊やは出張った腹肉を押し当てて阻止した。


「お、落ちるぅ~#」

「っ…」


お相手の太目の体格も過重に加わって下階の床に激突した。ぽよん。貴族の坊やは事もなげに立っている。


「そう来なくっちゃ#」

「なっ!」


ゴーレム娘フレインは落下の衝撃にも耐えて跳ね起きた。宙返りに、ドレスの裾もひっくり返ると両手に手甲を装備している。それはご主人様(マスタッ)に下賜された特製の武具で四つも指穴が開いた(リング)だ。


姉妹機のフラウ姉もフローリアもご主人様(マスタッ)からご褒美の品物を貰っていたから、その武具を受け取ったゴーレム娘フレインは狂喜した。されど、対人戦闘に特化した凶器の装備でしかない。


「いくぜッ#」

「ぐふっ…」


ボス。ボフッ。ボグン。いきなりの鉄拳のラッシュに貴族の坊やは打ち倒されると見えたが、ゴーレム娘フレインの打撃は効いていない様子。それどころか坊や体の体積が増えている!


「僕……武闘(ダンス)は苦手なんだなぁ~」

「待てッ#」


貴族の坊やは大量の液体を溢れさせて逃げ出した。水の魔法かッ! ざっぱん。打ち寄せる波は水よりも粘度が高くてゴーレム娘フレインの足腰にも纏わり付く。濡れたドレスが行動の邪魔となった。


そうして、手間取るうちに第二波と第三波と大波が打ち寄せた。うっぷす。ゴーレム娘が水に溺れる事は無いが、この水責めにはゴーレム娘フレインの鉄拳も徒労である。


「そうして、溺れるが良いさ」

「卑怯者…逃げるなッ…がぼっ#」


ゴーレム娘フレインが気付くと、すり鉢状の地下室に大量の粘液が満ちていた。




◆◇◇◆◇




 ゴーレム娘の末っ子フローリアが降下した場所は巨石が林立する迷路だった。迷路は複雑に折れ曲がり巨石の先端は危険な程の鋭利な刃を見せる。


残念な事に飛行型のゴーレムとして設計された機体は試作から十機を数えても実用化されていない。ゴーレム娘のフローリアは扁平な体と両腕の翼面を使い平坦な通路に着地した。特注した貴婦人のドレスが風に旗巻く。


ダンスのお相手はピカピカ光る金糸(ラメ)入りの衣装を着て、長身のフローリアにも良く合わせた歩調と体格をしていたが、この突然の罠にも無事だろうか。


「きぇえええッ!」

「っ!#」


奇声を発する襲撃者の斬撃を避けたフローリアは、破れたドレスの裾から二本の金属棒を取り出す。二本の棒と中継ぎの接続をすれば、非常用の槍となるのだ。それはご主人(マスター)様から下賜された護身用の装備だが、本物の相棒の槍が届くまでの代用品でしかない。


「キシシ。ゴーレム如きがッ、意外と機敏に動く」

「黙りなさい#」


馬鹿にした様子にピカピカの金糸(ラメ)男を槍で突くが、目測を誤ったか槍は空を突くばかりだ。


ぶぶぶーん。金糸(ラメ)男が昆虫の羽を広げて飛んだ。意外と身軽なのは相手の方が上手らしい。ビカビカの金糸(ラメ)男は高度を上げると岩の壁を越えて上空を旋回した。ピカピカと光る羽模様も鬱陶しい。


上空から急降下してピカピカの金糸(ラメ)男が襲撃する。


「きぇえええッ!」

「ふんっ#」


槍で迎撃しても残像のみで実体を突けない。…幻惑の魔法かッ!


剣術でも飛行能力でも幻惑の魔法でもゴーレム娘フローリアが不利と見えた。




◆◇◇◆◇




マキト・クロホメロス男爵は奥の応接室で子爵家の若様と会談中だった筈なのに、来客用の長椅子にだらしなく伸びていた。虹色の鱗粉が部屋に撒かれる。


部屋の壁には立派な額縁に入ったグリフォンの英雄マキトの肖像画があり、美化120%な眼差しが本人を見下ろして苦しめた。子爵家の若様のご趣味らしい英雄談義とマキトの為に用意された珍しい茶葉の香気が鼻を擽る。


既にマキトの瞳孔は開いて息も浅くなり、正常な意識を保つのも難しくなる。…この症状はヤバイ毒か。


「残念です。クロホメロス卿……あなたなら、私の嗜好を理解してくれると思ったのですが…」

「ええ、レスター様のご趣味こそが最高なのですッ」


若様の苦悩にも蝶の羽を生やした美貌の妖精が応えた。虹色の鱗粉が部屋に撒かれる。


子爵家の若様レスター・デルバルはヘルフォルド子爵の血筋でありながら継承順位は与えられていない。そのためヘルフォルドの家名を名乗れない事情があった。


そんな事情よりグリフォンの英雄マキト・クロホメロス男爵は重篤な危機にあった。





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