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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十四章 帝国周遊と新婚旅行
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ep301 蠢動する者たち

ep301 蠢動する者たち





 屋敷の中庭では強襲機フレインと鬼人の少女ギンナが模擬戦をしていた。ガキン。ゴキンと金属の装甲が衝突する音を響かせる。


「どりゃぁああ!#」

「むっ」


フレインの突進もギンナは容易に躱す。両者の体格は互角だが、フレインの体術はギンナの模倣である。


「まだまだッ#」

「やっ、はっ、とぅ~」


連続技もギンナ先生にはお見通しの様子に、有効打は与えられない。


「くっ、隙が無いッ#」

「今日は、これまでにしましょう~」


機体も修理されて関節部の稼働域も広がり、体術の技も鋭さを増した。それでもギンナ先生には追い付けないらしい。


「しゅん…#」

「フレインは焦り過ぎですぅ~。じゃ、後片付けは任せるですよ◇(ハート)」


訓練で荒れた中庭の整備はゴーレム娘フレインの日課だ。これでも土の精霊石を内臓したゴーレムに庭の整地は得意と見える。


さっさと終わらせて、今日の模擬戦を反省しよう。


………


夕方でも日差しは熱く季節は夏に入ったろうか、屋敷森の片隅には清涼な小川があった。ご主人様(マキト)が戻る前に訓練の汗を拭いたい。鬼人の少女ギンナも年齢相応に乙女であった。


「きゃふん。冷たいですぅ~」


鬼人の少女ギンナは独りで小川に飛び込み訓練の汗を落とす。屋敷の風呂を使うのは家臣の身では遠慮していた。故郷の村では小川で行水も当然の事だが、


「きゃっ…がぼっ…」


ギンナは水中に足を取られて深みへ嵌った。ギンナ先生に弱点があるとすれば、泳ぎが苦手で水に浮かない事だ。


主人様(マキト)が屋敷へ帰還しても鬼人の少女ギンナは戻らなかった。




◆◇◇◆◇




大急ぎに帰還した様子の旦那様は乱れ髪を整える暇も無い。旦那様はゴーレムの試運転に出掛けていたハズだ。あの様子ではサリアニア奥様に叱られてしまうだろう。と、その前に…


珍しく旦那様(マキト)が屋敷の護衛を怒鳴り付ける。失態だろうか。


「なんだと!」

「…屋敷の小川を中心に、捜索しておりますれば…」


屋敷の護衛も新規に雇い入れた者で突然の事態に慌てている。ギンナの事だから無事だとは思うが、心配の種は尽きない。問題は屋敷森の片隅とはいえ敷地内に賊の侵入を許した事だろう。


その時、知らせが入った。


「マスター。発見しました#」

「お姉ッ、どこにッ!#」


ゴーレム娘フレインは自分の失態だと焦っている。フラウ委員長は澄まし顔で応えた。


「先行した河トロルの隊が救出に向かっています。案内しましょう#」

「うむ。俺も行くぞ!」


「旦那様。お待ちをッ…」


マキトは血相を変えて屋敷を飛び出した。付いて行く護衛も大変だろうと思う。




◆◇◇◆◇




そこは荒れた貴族屋敷にある庭師の小屋と見えた。悪党顔の男が言う。


「こいつは、良い値が付くだろうぜッ…」

「…げへへへっ、兄貴っ味見をさせてくれよッ」


鬼人の少女ギンナは水中を引き廻されて、しこたまに水を飲んで吐き出した所だ。…毒を盛られたか、手足に痺れが残る。衣服は無いッ。


「うーむ。商品に傷を付けるなよッ」

「おう、心得て…イテェ!」


悪党顔の男が奇妙な吸い口を近付けるのに、ギンナが反撃をした。


「こんガキゃ!、血ぃ吸うたるでぇ~」

「おぃ!」


小屋へ河トロルの隊が奇襲をかけた。濡れた水跡を追って到着したらしい。思わぬ多勢と追手の早さを見て、もう一人の悪党は逃げ出した。ぶぶぶぶーん。昆虫に似た羽を開いて舞い上がる。


現場へ駆け付けた、ご主人様(マキト)が短く命令する。


「フラウ。()れッ」

「はい、マスター。目標を捕捉しました。…とうっ#」


ゴーレム娘のフラウ委員長は射撃ではなく、遠投の動作で砲弾を投球した。舞い上がる羽虫の上空で砲弾が炸裂する。


-BOMF-


「ぎゃーぁぁああ!」


墜落するのは悪党顔の羽虫男だ。炸裂した砲弾は金属の破片を飛散した。ゴーレム娘のフローリアは長身の体を広げてご主人様(マキト)を守る。キンコンと破片を受けても平気な様子だ。


ゴーレム娘フレインは小屋に残った悪党をぶっちめていた。黒幕の情報を吐かせなければ…殺してはイケナイ。


鬼人の少女ギンナは見せられない姿で発見された。いや~ん◇(ハート)。




◆◇◇◆◇




マキト・クロホメロス男爵は南区の警吏長官として悪党どもの怨嗟の声と恨みを買っていたが、その屋敷を襲う昆虫怪人がいる事が問題であった。


捕えた悪党は人族に偽装した昆虫怪人で、おぞましい事件の記憶が蘇る。二匹?には黒幕の情報を吐かせようと苛烈な拷問が課されたが、事件の真相は掴めない。


「さあ、吐いて貰ましょうか#」

「ぎゃーぁぁああ!」


優秀な秘書官のフラウ委員長を筆頭にして外骨格の痛みを知るフレインが拷問を担当したのだから、手抜かりは無いだろう。昆虫怪人に人権は無いとは言え、それは帝国の法でありマキトは密かに矛盾を感じていた。


「マスター。これをッ#」

「ふむ…」


報告書は昆虫怪人の解剖所見と証言が記されている。二匹は捕えた鬼人の少女ギンナを奴隷市場へ売り捌く計画だったらしい。それにしては血を吸おうとギンナに暴行したとの話で、お粗末な計画だ。黒幕に吸血鬼でもいるのか?


マキトは事件の手掛りを求めて、転売先の奴隷市場を調査する事にした。




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