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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十三章 帝都に滞在して見たこと
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ep290 拠点の制圧作戦

ep290 拠点の制圧作戦





 南区の警吏長官マキト・クロホメロス男爵は役所の執務室のデスクに倒れ伏した。かなりお疲れのご様子に秘書官姿のゴーレム娘フラウ委員長が熱いお茶を差し出す。


「マスター。お疲れ様デス#」

「あぁ、ありがとう……最近は事件も立て続けに忙しくて…」


フラウ委員長の音声応答装置(スピーカー)の調子が悪いな。#雑音(ノイズ)が交る。最近は長官職と下級警吏の仕事も多忙で疲れも溜まるのだ。


「シロン産の茶葉ですのよ#」

「ふむ。癒される…」


秘書官の仕事を覚えたフラウ委員長は優秀で書類の整理に長官の決済にと手放せない存在だ。先任の秘書官には役所との対応に注力して貰っている。


過去の犯罪記録の精査と整理を終えたフラウ委員長は秘書官の仕事の他にも、お茶の入れ方などの女中(メイド)の基本動作を覚えて実践している。他人の動作を観察して真似るのは得意らしい。そう言えばゴーレム娘のフレインは何種類も泣き真似を覚えて表情も豊かだ。ゴーレム娘の顔は粘土細工の様に柔軟である。


「北区の長官殿から抗議の文書が届いております#」

「またかッ……捜査の進展状況は?」


マキトが落ち着いた頃合いを見計らい懸案を提示するのは計算処理の賜物か。フラウ委員長の所作には無駄も無い。北区の長官とは同格として捜査協力をしているが、管轄の地域については小煩い御仁だッ。あちらも厄介な小僧ぐらいには思っているだろう。


「こちらに、資料をまとめております#」

「うむ」


現場からの報告書も秘書官のフラウへ預けると情報を集約して管理が出来る。過去の捜査情報も瞬時に検索が出来る優れものだ。マキトは捜査状況を確認する。


以前に秘密の製糖工場で押収したコカ茸は薬物の原料で、その加工品は既に帝都へ流通している。過去の犯罪情報とコカ茸の生育情報を基にして推測すると、この雨季にコカ茸の密輸が活発となるらしい。南区の警吏長官マキト・クロホメロス男爵は警吏も配下も動員して薬物の流通拠点を捜索しているのだ。その中には下級警吏のマキト・クロウも含まれる。…なんたる!自業自得かよッ。


マキトはシロン産の熱いお茶に癒された。




◆◇◇◆◇




そこは帝都の若者が集まる裏路地で、奇抜な衣装の者が歌い踊る場所らしい。着崩れた衣装の少女が現場へ乗り込んだ。


「へーい。彼女ッ、俺と・謳って・踊ろう・ぜッ♪」

「ボクの事かな!?#」


ラップ調の鶏冠頭に声を掛けられたのが嬉しいらしい。土気色の顔をした少女は笑顔を零した。穴倉に生活する土系の妖精族だろうか。


「手取り・足取り・教えよう~♪」

「こんな鋼鉄の手でも?#」


土精の少女は手袋を外して武骨な拳を晒した。土系の妖精とて薬は効果を発揮するだろう。


「応ぅよ。ハイな飴玉も・ある・ぜぇ♪」

「くふふふふっ#」


不穏な笑顔に不安を感じるが、ボコスッ。土精の少女は鶏冠頭の腹へ一撃を喰らわせて昏倒させた。肝臓は無事だろうか。


「ぐぶっ!」

「逮捕しちゃうぞッ#」


今夜の集会は大混乱となった。先に手出しをして置いて逮捕もクソも無かろう。


「きゃー」

「…手入れかッ!…」

「…逃げろッ、お回りが来るぞ…」


帝都を巡回する警吏と手下が現場へ到着するのも遅くはないだろうが、上手に手加減を覚えた暴力娘フレインが現場を制圧した。




◆◇◇◆◇




やけに肌に付く小雨が降る悪天候の中で、問題の施設の制圧作戦が開始された。そこは帝都の市場にも近い倉庫街の一角だ。


「クロウ捜査官、扉を破れッ」

「はっ」


下級警吏のマキト・クロウが配下のゴーレム娘に命じる。


-DOGOM-


倉庫の扉の破壊など簡単な仕事だが、これは槍娘フローリアの数少ない見せ場である。…派手な演出の方が良いだろう。


「第一班から、順次に突入ッ」

「「 応う! 」」


警吏と手下が突入して行く。突入の指揮はゴードン分隊長の指示で行われる。分隊長は警吏の詰所をまとめる中間管理職でもある。


「クロウ捜査官は、周辺の警戒に当れッ」

「はっ!」


ひと目見て車椅子の警吏など、大立ち回りに戦える者ではないと判断したゴードン分隊長の指示は待機だ。そりゃ当然の処置だろう。その身代わりとしてゴーレム娘のフレインが現場へ突入する。ゴードン分隊長はゴーレム使いとしての部下(マキト)の実力も把握しているのだ。


「ボクの腕が鳴るぜぇ#」

「応う!」


班の突入は、ちと早くないか。いつの間にか現場の警吏に人気者のフレインは、敵にすれば恐ろしい暴力娘でも、味方であれば心強い兵士だ。悪人の間では皆殺(ジェノ)人形(ドール)の悪名がある。


「うわぁぁぁあああー!」

「…ぶちのめせぇ!」

「…殺すッ…」


悪人たちの必死の反撃は脱出と逃走の為だ。拠点に立て籠もる者は皆殺(ジェノ)人形(ドール)の餌食となる事と恐れられていた。あぁ、今までの拠点制圧に如何ほどの血が流されたのか。警吏の突入隊はゴードン分隊長の指揮で確実に悪人たちを追い詰めた。


包囲の輪も完成して制圧は時間の問題だろうと見える。




◆◇◇◆◇




ガラガラと整備小屋に鋼鉄の鎖を引く音がする。毎度の事ながらゴーレム娘の問題児フレインへのお仕置きはどうした物か。


「えぇーんっ、今回は上手く()ったよ~#」

「分隊長には厳しいお叱りを受けた。……が、同時にお褒めの言葉もあった」


ゴーレム機体の分解整備の傍らで、ゴーレム娘フレインの手足をバラし鎖で吊るす。


「そ、それじゃぁ。ご褒美をッ#」

「委員長ッ、この馬鹿に突入手順を教えておけ!」


そのまま整備小屋にフレインを吊るすと、首つり状態に見えて酷に思うので、ずん胴の腰の括れに鎖を巻いて吊るそう。


「はい。マスター#」

「レインちゃんは、乱暴なんだからっ#」


フラウ委員長がフレインの記憶層へ「馬鹿でも分かる制圧手順」を複写する。序に末っ子のフローリアも制圧手順を覚えた。突入するだけのお馬鹿とは異なるのだ。マキトはガラガラと鎖を引く。


「ありゃ、失敗したか…」

「えぇーんっ、ギンナ先生~助けてぇ#」


大きなお尻と頭で均衡するかと思ったが、頭の方が重くて逆さ吊り状態になる。足の部品も外しては重量バランスが悪いか。


「レインちゃん。英雄(マキト)様のいう事を守らないと、ご褒美はあげませんよッ」

「っ!#」


鬼人の少女ギンナの指導は厳しい。同じ怪力使いとして問題児フレインの先生役に帝都の屋敷へ呼び寄せたのだ。今後の成長に期待しよう。


一応に制圧作戦は僅かな死傷者を出しても成功した。





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