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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十二章 アアルルノルド帝国の内乱
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ep280 北部平原の戦い終結

ep280 北部平原の戦い終結





 グリフォンの英雄マキト・クロホメロス男爵はオストワルド辺境伯の本陣へ降り立ち援軍を要請した。帝都に潜伏した密偵からの報告では、非常に危険な状況と思える。


「伯爵閣下。王都への援軍をッ!」


「よかろう、ジャンドルの若造どもに手本を見せてやろうぞ」

「「 応おう! 」」


軍神と謳われるオストワルド辺境伯の指揮の下に騎兵隊が突撃する。王都へ入場を果したジャンドル家の軍勢は市街地で亡者の群れに囲まれて混乱していた。


「敵を引き付けて、誘い出すのだッ!」

「「 応うよ 」」


乱戦へ突入したオストワルド辺境伯の軍勢は統制の取れた撤退を開始した。その際に混乱したジャンドル家の軍勢も乱戦から引き離す。


………


その頃、マキトは手勢を率いて帝国北部の平原に魔方陣を描いていた。必要な鉱石を砕いて図形を描き魔芋の樹液で魔法回路を繋ぐ大規模な仕掛けだ。


「リドナスは周辺の警戒をッ、アッコは作業を手伝ってくれ!」

「はい♪」


「…まったく幼女ゴーレム使いも手慣れたものよのぉ…これでは娘どもの将来が…」


ぶつぶつと文句を言うガイアっ()を無視して魔方陣の作成を急ぐ。


「ここに、ゴーレムB型を配置して……悪いが、試作機A型はお目付け役だ!」

「はい。マスターの命令に従いマス#」


やはり、音声認識も良好な試作機A型をゴーレム部隊のまとめ役にするのが効果的らしい。戦闘に生き残ったゴーレムB型を魔方陣の要石にして完成だ。


どどどどとオストワルド辺境伯の騎兵隊が現われた。手筈の通りに亡者の群れを引き付けて来たらしい。


「英雄殿よ。後は任せたぞッ」

「はっ!」


亡者の群れが魔方陣へ入った。


「今だッ!【諸悪封滅】」


マキトは全開の魔力を投入して魔方陣を起動した。それは光魔法の秘術で亡者の動きを止めて封じる魔方陣だ。広大な魔方陣は淡い光を発して静謐が満ちる。


-GUッ…GAッ…GA-


完全に亡者どもの動きを止める事は出来ないが、その場へ釘付けにする事には成功した。絶大な魔方陣の効果である。


「グガガガカ、目標捕捉 魔方陣を維持 シマス#」

「ウウウンフ、効果を確認 シマシタ#」

「きゃっ、機体の負荷 ガッ#」


「あ゛がっ!」

「お(ぬし)よ、これは…いかんッ…」


魔方陣の要石にしたゴーレムたちは起動の負荷にも良く耐えたが、一度に大量の魔力を投入したマキトは血を噴いて倒れた!…強力な魔方陣の代償か。岩塊の幼女ゴーレムがマキトを助け起こす。光魔法の秘術である封印の魔方陣は絶大な効果であるが、ひとりの術者で維持するのは困難だった。そのために補助の要石としてゴーレム部隊を投入したのだが、魔方陣を維持するのも精一杯の様子だ。


「お前たちは、現状を維持するのじゃ!」

「「「 はい!# 」」」


アッコの叱咤が飛ぶ。…まったく、可愛いヤツだぜッ。マキトは朦朧とする意識の隅にアッコの声を聴いた。昏倒して意識を無くさないだけでも上出来だろう。


北部平原の趨勢は結した。




◆◇◇◆◇




帝都から大量の亡者の群れが出現したと同時に、帝国軍の本陣へ黒の軍勢の襲撃があった。長く伸びきった行軍の列を見極めて本陣の皇帝陛下を狙った襲撃と思われる。


不意の襲撃にもドラントラン家の軍勢は良く耐えて皇帝アレクサンドル三世の身を守った。黒の軍勢の奇襲は最後の力を振り絞ったと見えて強烈であったが長くは続かなかった。次第に動きを止めて漆黒の騎士も討ち取られてゆく。


「我らは勝ったのか?」

「………」


本陣の様子は酷い物であったが、戦いに傷付いても最後まで立って生き残った者が勝者である。


「隊列をまとめろッ、堂々と帝都へ入場するのだ!」

「はっ!」


皇帝陛下の威厳も騎乗兵の整列も重要な事だ。帝都の臣民へ向けて皇帝陛下の威光を見せ付けねばならない。帝国の内戦により戦後の処理は面倒事が山積しているが、今は帝国軍が奪還した帝都への凱旋の時だ。


傷付いた兵士も顔を上げて堂々と帝都へ入場した。




◆◇◇◆◇




帝都の郊外と北部平原に散った亡者の残党は領主軍の騎士団が粉砕した。亡者の群れは異様な圧迫感を伴い取り囲まれると、熟練の兵士も恐怖に取り憑かれて恐慌を来たすのだ。しかし、少数であれば騎士団の強襲突撃には障害ともならない。


帝都の街路や路地裏に居残った亡者は市内の治安組織が狩り出して殲滅した。中には冒険者が討伐した功績となる物もあるだろう。大方に帝都の残敵の処置は終わったと言えるが、北部平原には拘束した亡者の群れが取り残された。


大功のあった英雄マキト・クロホメロス男爵は亡者の群れの処置を帝国軍へ委譲した。全てを殲滅するには魔力も戦力も足りないと言う訳だ。男爵の手勢は帝国北部のタンメル村を急襲して領主の館を焼き討ちし、領主以下の一族郎党を討伐した。見事な手柄と言えよう。


帝都への一番乗りの栄誉は意外な事にシュペルタン侯爵家の軍勢であった。侯爵家の軍勢はナダル河を渡り強襲上陸を成功させて帝都へ入場したらしいが、亡者の群れにシュペルタン侯爵家の戦死者が含まれていたのは名誉に汚点を残した。


ジャンドル家の一派は強硬に帝都への一番乗りを主張したが、領地の加増と官職を得て押し黙った。ドラントラン家は皇帝陛下の本陣をよく守り、皇帝アレクサンドル三世の直筆の感謝状を得て大いに名誉を満足させた。


オストワルド辺境伯も大功を認められて東方へ帰還するらしい。


「マキト・クロホメロス卿。達者でなッ」

「伯爵閣下も、お元気で…」


帰郷するオストワルド辺境伯の心境は複雑であった。キブラ城塞の攻略ではマキトに助けられた事実も大きい。


「婚礼の席は近々に設けられようぞッ」

「はい。宜しくお願いします」


帝国の内戦に大功のあった英雄マキト・クロホメロス男爵はシュペルタン侯爵家の姫君との婚礼を控えている。この内戦の残務処理が片付けば、正式な婚礼の義も認められると思う。


「わはははっ、皇帝陛下の裁可があれば、今すぐにでも始めよう!」

「はっ、ゴホッ…」


オストワルド辺境伯の冗談か元気付けか、戦傷に弱ったマキトの体には辛く響く笑い声だ。


かなり無理して光の魔方陣を起動したマキトは魔力も生命力も酷使してボロボロの体で、顔色も悪く痩せ細り死期も近いかと危ぶまれているのだ。…そんな弱った男に何をせよと?


伯爵の軍勢が帝都を去る。





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