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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第三章 迷宮の探索者とお宝
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027 城郭都市キドの旧知

※新年あけまして、おめでとうございます。

027 城郭都市キドの旧知






 僕は城郭都市キドの宿屋で眠っている。


雨の中、夜半まで街道を走り。這う這うの体で町に辿り着いた僕は体調をくずした。そのまま、宿を取って寝込んだが、背中に温かみを感じた。リドナスに治療されたのだろう。


リドナスは若葉の香りがした。ふらつく体で着替えて下階へ降りると見知った顔があった。


「もう、平気なのかい?」

「ええ、大丈夫です」


狩猟者のマーロイは剣士らしく腰に剣を佩いて立っていた。


「若いってのは、良いことだ」

「ハハッ」


僕は笑って誤魔化すが、マーロイは真剣に尋ねた。


「昨日は大変だった様じないか?」

「山賊に襲われまして……」


昨日の騒動を聞いたのだろう、マーロイは先輩の狩猟者として話す。


「この時期に少人数で峠を越えるのは危険だぜ」

「すいません」


僕が頭を下げると、マーロイは押し留めた。


「ま、説教しに来た訳じゃねえよ。お前に頼みがある!」

「僕もお願いがあって……」


マーロイは僕を見つめて言った。


「迷宮に行こう!」

「!…」


詳しくマーロイの話を聞くと迷宮に稼ぎに行きたいそうだ。マーロイの奥さんは先月、無事に女児を出産して経過も良好だとか。赤子が可愛いとか新婚家庭の事情を聞かされた。

子育てに手が離せない奥さんに尻を叩かれたマーロイは稼いで来いと送り出されたらしい。迷宮の魔物を狩って稼ぐため人手を集めている。


「どうだ、話に乗るかい?」

「なるほど……旧知の仲ですから、お受けしますよ」


僕はすこし考えてから依頼を受けた。マーロイは大喜びだが、


「ありがてぇ」

「…迷宮に行く前に、僕を鍛えてくれませんか?」


僕が頼むのを、マーロイはさも当然の様に言った。


「いいぜ! 男の子だもんな」

「はい。お願いします」


お互いの頼み事を交換に話をまとめて、喜ぶ僕にマーロイが言う。


「ところで……後ろの彼女を紹介してくれないか」

「はっ?」


後ろを振り返ると薄着のリドナスが立っていた。




◆◇◇◆◇




 僕は雨上がりで泥濘の目立つ北平原にいる。

狩猟者の剣士マーロイが木刀を振るうのを見て、僕はマーロイの言葉に耳を傾けた。


「剣は真直ぐに振る。真直ぐに突く。杖でも槍でも基本は同じだ」

「はい!」


僕はマーロイの動きを見て木刀を振る。


「相手に当てる瞬間だけ、魔力で身体強化して!切る。やってみろ!」

「はい!」


木刀の切っ先に当たるマーロイの剣気を感じながら、僕は自分の木刀を振るう。


「毎日に百回。それを百日は、続けろ!」

「はい!」


身体強化をオンとオフに切り替えする事が難しい。すぐに息切れしだした。


「技や何だは、その後だ」

「!…」


その時、僕の傍に泥濘を割って、飛び込んで来た人影があった…リドナスだ! 獣人のバオウに吹き飛ばされた様子だが、随分と派手に飛ぶものだ。


リドナスは泥だまりに構わず、素手でバオウに突進した。その足は一滴の泥粒も跳ねない…リドナスの足腰にバオウは瞠目した。


「GUF 面白くなって 来た!」

「…」


リドナスの拳をバオウが受けると、その手を取って捻った。

しかし、リドナスは手から抜け出ると、バオウの頭を飛び越えた。


背後からリドナスが襲う。咄嗟にバオウは地面に手を突いて前へ躱す。

地面から飛び出した土魁がリドナスを打つと見えた!


リドナスが背後に飛ぶ。バオウは振り返って言った。


「GHA なかなか やるじゃねえか」

「あなたも ネ♪」


僕はふたりの戦いに見惚れていた。



◆◇◇◆◇



 城郭都市キドには探索者ギルドがある。

町の北の山岳にある迷宮へ潜るには、探索者ギルドへの登録が必要だ。


僕とリドナスは探索者ギルドに登録した。リドナスは便宜上でも僕の護衛魔獣の扱いだ。河トロル族は獣人として認められていないので、僕が使役者として責任を負う。

迷宮の環境は特殊なので、いろいろと準備が必要だった。装備や迷宮に持ち込む資材にも気を配る。


キドの町から迷宮口のある北山岳までは魔物との遭遇もなく順調だった。ひと月前の討伐作戦で北部平原からここまでの魔物は狩り尽くされた様子だ。


そのため、狩猟者たちは仕事を求めて迷宮の探索者となっていた。迷宮口にある仮設の探索者ギルドから狩猟者の女、シシリアが弓を担いで戻ってきた。


「はい。これが、探索許可証と個人の識別札よ。無くさないでね」

「うむ…」


羊皮紙の書類と登録名が記入されたタグを受け取る。タグは紐で吊るして首にかけて懐にしまう。


「早速だが、迷宮に突入するぜ。準備はいいか?」

「GUF もちろんだ」


剣士マーロイはすぐにでも迷宮に潜る気に満ちていた。獣人のバオウもやる気は充分の様子だ。

迷宮口までの通りには仮設の宿泊所や食事を売る屋台と様々な品物を売る露店が並んでいる。仮設が常時に代わるのも時機だろう。


防衛隊の門番に許可書を渡して迷宮へ潜る。近くに防衛隊の施設があるらしい。


迷宮口は山岳地帯らしく岩土を抉った様な形状で口を空けていた。僕らは迷宮に入ると光の魔道具で通路を照らした。

狭く限定された迷宮で無闇に火を使う事は危険だ。迷宮の毒でチーム全員がやられてしまうそうだ…それは、酸欠や一酸化炭素中毒だろうか。


先頭には獣人のバオウ。次に剣士マーロイと僕が続く。後ろには弓を持ったシシリアと後方を警戒するリドナスがいた。

獣人のバオウは野生児らしくその獣人の感覚を生かして索敵をしていたが、迷宮の上層は既に探索者が魔物を掃討していた。


新たに迷宮へ湧き出す魔物の数は少ないようだ。すぐに下層へ向う下り通路を見つけた。迷宮を探索する目的は魔物の掃討と宝物の発見だ。下層へ向う程に強力な魔物と宝物があると言われている。


「この辺りに、魔物はいねーようだな」

「そうですね…」


マーロイが振るう剣をが空を切る…素振りして、先に進むようだ。


二層目では、運が良くか悪くかオークの数体と遭遇した。獣人のバオウが先に発見して攻撃する。

マーロイも剣を構えて突進した。通路の幅は二人か三人が横に並ぶと限度に見える。


僕は二列目で杖を構えて警戒するが、すでに前列の二人で二体のオークを倒した。

残りのオークが半狂乱で突進して来る。


-BUFOW-


「やめろ!無駄だ」


僕はツバ広の帽子を被り杖でオークを殴打した。オークの言ってる意味は分からないが、話も通じない様子だ。マーロイが背後からオークを切り倒す。

五対三では勝ち目が無いだろうに、なぜオークたちはニンゲンを襲うのだろうか。


「その帽子があると、魔術師に見えるぜ」

「ハハッ」


マーロイは軽口を言うが、僕は乾いた笑いで応じた。


「食材を手に入れた。すぐにバラそう!」

「…」

「GUF 腹がへったな」


つとめて明るくマーロイが言うので、バオウが答えた。どうやらオークを解体してから、食事と休憩をするようだ。

解体風景もすっかり慣れたが、山刀を振り肉を切り分ける。


「リドナス頼む」

「汚れを落として…【洗浄】」


血に濡れた山刀と手足を洗う。迷宮探索には水魔法か水の魔道具が必須だ。無ければ大量の飲み水を運ぶ必要がある。

僕は新たに購入した加熱の魔道具を取り出した。適当な岩を竈に見立て加熱の魔道具を置く。


鉄板を載せてオークの肉を焼いた。この匂いで迷宮のオークが釣れるなら良いかも。


「GHA うまうまだ!」

「焼きたてが 美味しゅう ゴザイマス」


獣人のバオウとリドナスには好評の様子だ。


「オレにもくれ!」

「あたしは、半分でいいわ」


マーロイとシシリアにも焼き肉を配給した。残ったオーク肉は良いところだけ取り、死に身は放棄する。放置された死に身は迷宮に吸収されるそうだ。食事を終えると既に死に身が迷宮の床に沈み始めている。


これは迷宮が生きている証拠で、今も迷宮の底では魔物が生み出されているそうだ。また、この迷宮は複雑に分岐して増殖し、新たな通路が発見される事も多いという。


オーク肉の鉄板焼きの匂いに釣られたか、探索者の一団が通りかかった。

代表らしき男が挨拶して来た。


「どーも、休憩中に、お邪魔します」

「どうした?」


剣士のマーロイが応対する。


「我々はこの先の、新しい分岐へ行く所でして…」

「ふむ、話を聞こうか」


探索者の男の話では、新しい分岐では魔物の数が多いので、出来るだけ戦力が欲しいそうだ。男の仲間は五人であり、お宝があれば山分けで良いと言う。マーロイは乗り気の様子だ。


こちらのチーム内で相談する。


「オレは乗るぜ」

「GUU 悪意は 無さそうだ」

「あたしは、疑わしいと思う…」

「僕は、行ってみたい」

「私は、主様に従い マス」


マーロイはシシリアを気遣い言った。


「四対一だが良いかい?シシリア」

「仕方が無いわね…」


シシリアは不満げだったが、マーロイが相談すると、


「ひとりぐらいは、疑って見てる方が良い」

「もちろん、注意するわ!」


何かを決意してシシリアは頷いた。こうして合同戦線となった。





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