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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十二章 アアルルノルド帝国の内乱
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ep279 王都への入場

ep279 王都への入場





マキトはキブラ城塞の西門の瓦礫の山を見て独り語ちる。


「やり過ぎたか…」


西門へ突撃した試作ゴーレムのL型は無事な姿で発見された。流石に頑強なだけは取り柄である。


「マスター。任務完了 デス#」

「これしきの事。迷宮(ダンジョン)では日常茶飯事であるぞ。…そもそも…」


岩塊の幼女ゴーレムであるガイアっ()の話は長い。そりゃ迷宮(ダンジョン)ならば不思議な修復力で破壊された壁も元に戻るだろうが、城塞の修復は人手に頼ることが多いのだ。


「わはははっ、クロホメロス卿よ、心配するなッ。城壁の修復は後回しにして、我が軍は先行するぞ!」

「…」


義父オストワルド伯爵は連戦をも苦にせず、精力的に軍勢を進めるらしい。




◆◇◇◆◇




帝国軍は快進撃を始めた。東のキブラ城塞を守備していた山賊団が逃走すると、帝都までに軍勢の進行を阻む関門は無い。これを突破したオストワルド伯爵の軍勢が進撃をするのに対応して、派遣された黒の軍勢も戦況は後手に回る様子だ。


「セバスちゃん。顔色が悪い様子ですわねぇ?」

「女王陛下。戦況は不利にございますッ」


戦線からの戦況報告に執事と見える男セバス・チアンは血相を変えた。オストワルド伯爵の軍勢が予想よりも精強であったか、キブラ城塞の山賊団が脆弱であったか。


「分かりました…」

「山賊ごとき、頼りには成りませぬ。ここは再起を期して撤退の準備をッ」


何やら、考え込む様子のリリィ・アントワネ女王陛下は決断を下した。


「いいえ。決戦の準備を始めましょう」

「っ!…」


腹心のセバスには決戦手段も知らされていたが、女王陛下の身が何よりも心配である。


リリィ・アントワネ女王は黒の司祭の衣装を身に纏い地下墓地へ籠る様子だ。




◆◇◇◆◇




マキトは平原の大穴を見て独り語ちる。


「はぁ…これは、やり過ぎだッ」


黒の軍勢の後方へ投下した試作ゴーレムB型は帝国軍と挟み撃ちに黒の軍勢を強襲したが、多勢に囲まれて乱戦となった。


「ウウウンフ、申し訳アリマセン#」

「のょほほほほ、若くて元気なのは良い事よのぉ…」


五体の量産機B型と伴に乱戦で大暴れして敵味方ともに大勢の死傷者を出した。その中心地には血肉に汚れた試作ゴーレムB型が立っていたと言う。それだけの事ならば、許そうとも思うが、


爆心地の様に吹き飛んだ大穴は、量産機B型が数体も爆散して被害を拡大したらしい。それはゴーレムの機密保持の為にマキトが仕込んだ緊急装置だが、こうも簡単に自爆されては危険すぎると言う物だ。


「で、魔力切れまで暴れたと…」

「ウウウッ#」


どこで覚えたか、試作ゴーレムB型は泣き真似を始める。


「アッコ! 監督責任だッ」

「きゃふん。旦那様っお許しをッ…」


どこで覚えたか、岩塊の幼女ゴーレムは命乞いを始めた。これではマキトが幼女を苛めている様に見える。


「英雄殿っ、その辺りで許してやっては…」

「ならん。お仕置きだッ!!」


ゴーレムにどうやって反省を促すかは今後の課題だろう。アッコに命じて軍事教練を強化するべきか。


そんな痴話は放置して、南部平原で黒の軍勢を突破した帝国軍の本隊は守備陣地を引き払い王都へ向けて進軍を開始した。大軍勢の進軍は思いの他に大変な作業だ。


帝国の南北を結ぶ街道は商人の往来と物資の輸送に使われても大勢の兵士が移動するには狭すぎる。そのために街道周辺の平地や農地も踏み越えて大軍を行進させる事になる。その移動は開始から終了までも長蛇の列となった。


進軍の最中にも敵の伏兵や襲撃を警戒しつつ斥候を放ち、各地の軍勢を動かす為にも伝令の騎兵を往来させるのだ。出発の順番を決めるだけでも参謀府と編成官は大忙しとなる。


大勢の兵士が動けば休息も必要だろう。昼食に携帯食を用い夕飯に炊事を成せば焚火の煙は無数に立ち昇る。大勢の兵士を食わせるだけでも膨大な食糧が必要なのだ。補給と輸送を担当する輜重隊も大部隊となる。


帝国軍はカンパネル周辺の穀倉地帯から食糧を徴発して兵糧に備えていたが、あのまま持久戦を続けて戦闘が長期化したならば、先に瓦解するのは帝国軍であったと思われる。そんな後方の苦心をも知らず、帝国軍は快進撃を続けた。




◆◇◇◆◇




いまや軍勢の配置は伸びきって街道も平原も長蛇の列である。散発的な夜襲と朝駆けで抵抗を見せる黒の軍勢も整然と進軍する帝国軍には敵わないと見える。先陣は帝都の郊外へ達した。


「何だッ、あれは?」

「帝都に暗雲か…雨雲にしては局地に過ぎるが…」


帝都の異変を目にしても警戒する者と、栄誉に急ぐ者に道行は分かれる。


「斥候からの報告は?」

「急げ、我らが帝都への一番乗りだ!」


どうやら、帝都へ一番乗りの栄誉はジャンドル家の軍勢が手に入れそうに見えた。


「ま、待てッ、止まれぇ!」

「…暴徒か、…いや魔物の群れかッ?」


帝都に出現したのは多数の亡者の群れで街路にも裏路地にも溢れている。帝都の決戦を前に新鮮な死体も古き骸骨も総動員に掘り起こして使役したらしい。醜悪なボロ布も美形の肢体も入り混じっているのだ。


ここに帝都の市民をも巻き込んで最終決戦が始まる。





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