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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第三章 迷宮の探索者とお宝
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026 南西街道の盗賊

026 南西街道の盗賊





 僕は港町トルメリアを出て街道を南下していた。


南西街道はトルメリアから平原を横切り、南に見える峠の山並みを越えて城郭都市キドへと至る旅路だ。


別れ際に、アマリエには城郭都市キドへ行く事を話した。また、ギスタフ親方にはアルトレイ商会で修行すると手紙に書き送ってある。チルダは最近は忙しいらしく港町トルメリアでは見かけていない。いちど、ブラアルの鉱山町に行って近況を話したいところだ。


旅程では途中まで、村々を周る巡回馬車に乗った。馬車に同乗した商人の話では、北方の国イルムドフで軍事的な動乱があったそうだ。


北周り航路の交易船はイルムドフの手前の港で足止めされたとか。港町トルメリアでは噂になっている。また、北部の開拓地やその先の未開地では魔物が活発になり人心に不安があった。僕とリドナスは途中で馬車を降りて峠越えを目指していた。南廻りとはいえ、日が暮れる前に峠を越えておきたい。


ピヨ子が鳴いた。


「ピッ!ピッ!ピー!」

◇ (警告!…ご主神様気を付けて!…盗賊が六人よ)


「何だ?」

(ぬし)様、動物の気配が オカシイ…」


わらわらと盗賊と見える風体の男たちが、前方に四人。後方に二人現れた。前方の大柄な盗賊の男二人が剣や斧を持ち街道を塞ぐ。後方の二人もナイフを構えて街道を塞いだ。


「金目の物とぉ、その女は置いていきな!」

「…」


残りの二人は弓を手に左右に分かれて射線を確保した。盗賊たちは無造作に包囲を詰める。


「ぐへへへへ」

「…」


盗賊の男がいやらしく笑うのを見て、僕は手にした壺を投げつけた。笑う盗賊は軽く顔を傾けて壺を避けたが、壺は突然に形を失い砂粒となって盗賊の男に降りかかった。


「なにぃ、ぺっッぺっ」


◇ (あたしの実力を見せ付ける時だわ。神鳥(かんとり)魔法…【神鳥(ゴッド)加速(スピード)】からの~【神鳥(ゴッド)羽斬(ウイング)】!)


「ぐあっ!」


既に、リドナスは盗賊の男に切りつけていた。盗賊の男は肩口に傷を負ったと見える。


「水を我手に…【集水】」

「ひぃ!」


リドナスは呪文を唱えて男の肩口から水分…血液を奪う。盗賊の男は急激に出血して昏倒した。僕は身体強化してから、砂と戯れる笑う盗賊に蹴りを入れた。盗賊の体が転がる。


「弾け飛べ…【水球】」

「あぶっ」


リドナスは呪文を唱え奪い取った水を弓の盗賊に投げつけた。弓鳴りと矢音が聞こえたが、矢はあらぬ方角へ飛んで行ったようだ。


◇ (技が命中して。あたしは弓の盗賊をひとり始末した)


その隙に、僕らは残りの盗賊に構わず逃げ出した。遮二無二と獣道を走り森を抜ける。斜面を下って沢に出た。水を飲んで一息つきたい。


「は、はぁはぁ」

「二人、近づいて来マス」


リドナスは僕に警告を囁くと、…身を隠していたが、


「あいつら、なめやがって…」

「…探せ!」


大柄な盗賊とナイフの男が僕の前に現れた。リドナスの姿は無い。


「てめぇ、女を逃がしやがったな!」

「ッ…」


二人の盗賊は得物を手にして僕へ近づく。沢は踏み荒らされた泥水が溜まっている。その時、突然に二人の喉首が下方からカッ切られた!…鮮血を吹いて二人が倒れる。


そこには、泥水に濡れたリドナスが佇んでいた。


◇ (リドナス、やるじゃないの。あたしの手助けは必要が無かった)



◆◇◇◆◇



 僕らは沢を下り、獣道を足早に辿り、先を急いでいた。山の雲行きが怪しい。藪を抜けると今まで雨雲に遮られていた夕日が差し込んだ。夕日の向こう側に農家としては大きい倉庫のような建物が見る。


(ぬし)様、雨が来マス」

「あの建物に、避難しよう…」


しだいに雨が降り始め夕日と虹を伴っていたが、もうすぐ日が落ちる。建物に近づくと糞尿の臭いや鳥と家畜の喧騒が聞こえた…この建物は家畜の獣舎だろう。


「…」

「ここで、雨をしのごう」


山中で雨風を耐え凌ぐよりはマシだろうと思い、辺りの気配を伺い建物の扉を開く。一層大きくなる家畜の喧騒に気圧されながら中を見ると、大型の鳥と見える家畜がいた。


「コレハ?…」

「僕には鶏小屋に見えるが、大きい鳥だな」


◇ (ちょ、鳥馬(トリウマ)! 鳥馬(トリウマ)がいるわぁ!)


肉にするためか、卵を取るためか判然としないが大型の鳥がひしめき合っていた。外は既に、雨音がしている。しばらくここで潜むか。


カバンから魚の干物と黒パンを取り出しリドナスと分け合って食べる。ピヨ子は獣舎の鳥の餌を啄ばんでいる。何でも食べる良い仔だ。


◇ (あたしは鳥馬(トリウマ)に話しかけた。あなたたち! どうして檻の中にいるの?)


-KUGEE KUGIE-

◇ (意訳…ワレワレハ ココデウマレ ココデシヌ…)


獣舎の鳥がうるさいが声を潜めて耳に魔力を集中すると、地面の水たまりを踏み外を駆ける音がした。


「…見ぃつけたか?」

「いえ、まだ…」


盗賊の男たちが追って来たようだ。


「探せぇ! この近くにいるハズだぁ」

「はっ!」


獣舎の外を駆ける足音が雨音に紛れて遠ざかる。僕はため息を吐いた。


「…」

「ふう、助かったか」


僕が一息つくと、リドナスが提案した。


「油断 できません。ここを 出まショウ」

「うーむ」


………


 束の間の休息を得て獣道を下る。僕はリドナスの背中を追い駆けた。暗がりの森のどこをどう走ったか…急に、茂みの陰でリドナスが停止した。


「伏せて」

「…」


茂みの陰に身を潜めて耳に魔力を集中する。


「こんな………」

「………」


盗賊たちの見張りがいるらしい。


「……… 貧乏くじだ!」

「げはっ………」


何を怒っているのか怒声が聞こえる。リドナスは何か準備している様子だ。


「水蛙、そこここの 足元に飛べ…【水球】」

「!…」


リドナスは呪文を唱え、足元に溜まった泥水を空に放り上げる。放物線をなして、泥混じりの水球が茂みを越えて飛んだ…バシャッ、バシャ、バシャ。


いくらか離れた場所から水を踏む足音がした。


「おい!こっちだ………」

「得物か!………」


僕はリドナスに引かれて街道に出た。暗闇の街道を全力で駆ける。盗賊たちは未だ山中を捜索しているだろう。


這う這うの体で、僕は城郭都市キドに辿り着いた。


◇ (あたしが鳥馬(トリウマ)を檻から解き放ち……盗賊どもが混乱する最中にご主人様は逃げ延びたわ)





--


※リドナスとピヨ子が大活躍した。

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