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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二十一章 コボンの地に迷宮は陥落する
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ep261 コボンの地に内乱ありて

ep261 コボンの地に内乱ありて





 マキトたちは晴れ間を待って移動小屋を西へ走らせた。太陽観測により、このまま西へ向かえばコボンの地の大迷宮へ到達できるだろう。


皇帝の特使の仕事の合間には、神鳥(かんとり)のピヨ子を伝令にしてタルタドフの領地へ手紙を託した。野生の本能か伝書鳩と同等の帰巣本能か神鳥(かんとり)のピヨ子は良く働いた。マキトは単身赴任をしても領地で待つ内縁の妻メルティナへの愛情を忘れない紳士なのだ。


マキトの太陽観測に油断は無い。以前は方位磁石と羅針盤に従って進路を誤り遭難する所だったので、進路の算定は慎重に行う。


「ようし、このまま西向かいに…進路は北へ十度 修正せよッ」

「はい♪」


移動小屋の操舵を握るのは河トロルの戦士リドナスだ。実際に戦闘ともなれば旅の仲間では一二を争う実力者でも、冬季の寒さには弱いらしい。それでも旅程の役に立つ為には率先して操舵を握る様子だ。実際にリドナスは働き者でマキトも助かる。そこへ女中(メイド)姿のオーロラが呼びかけた。


「マキト様。お茶の準備が整いました」

「うむ。今日の銘柄はトマノフ産の夏葉かッ」


太陽観測と進路算定を終えたマキトは居間で優雅にお茶を楽しむ。移動小屋の振動も慣れれば揺り籠の如しである。


「ご明察の通りで御座います」

「ふふふっ」


旅の暇に明かせて貴族の嗜みと言われるお茶の産地当ても上達したものだが、移動小屋に常備したお茶の銘柄は少ない。マキトが思うより難しい技能でもなかった。


その時、偵察班からの知らせがあった。中々に優秀な斥候と思える。風の魔法使いシシリアが報告する。


「マキト君。コボンの地に内乱の気配ありよッ」

「なにぃ!」


「…だからワレの見立て通りであろう。全く信用が成らぬのは…人の(さが)やも知れぬ…」


居間でマキトの座椅子となったガイアっ()が愚痴を漏らして抗議するのは毎度の事だ。人語を発する座椅子とは面妖なり。ガイアっ()が魔力を補給する為にはマキトに触れて生活する必要があり、実用的な観点から座椅子に決定した。寝室の抱き枕の役目は鬼人の少女ギンナが手放さないのだ。


そんな内情は置いても、マキトは帝国の特使としてコボンの地の現状を確認しておきたい。


「いちど迂回する。…進路は北へ三十度 転進せよッ」

「はい♪」


流石に移動小屋を戦乱の地へ突入させる暴勇は無かった。




◆◇◇◆◇




コボンの町には東側と南側から大規模な盗賊団の襲撃があった。この冬は例年にも勢力を増した大寒波と国内の食糧不足もあり、困窮した盗賊団は人数を増すばかりだ。そんな地方都市にも格差があり迷宮(ダンジョン)を擁するコボンの地は裕福な部類である。町の富を狙う盗賊団への対処として南地区には火魔法の使い手フレアズの部隊を救援に向わせた。東地区は氷魔法の使い手パーシャルが防衛の担当である。


「ワシは領主様の所へ向かう。各部署で奮闘せよッ」

「「 はっ! 」」


町の治安を守る自警団の長は領主軍へ合流するらしい。各地区の自警団の詰所にも伝令を走らせた。


「…それにしても、奴ら手回しが良すぎる…」

「?」


自警団の長が気になる事を呟くが、今は領主軍への合流が先決だ。確かに複数の盗賊団が同時に町を襲撃するなど前例には無い緊急事態だ。


今頃は領主軍も異変を察知して、おっとり刀で参戦の準備をしているだろう。


………


コボンの町の南地区は比較的に温暖で降雨も多い農村地帯だ。


「敵を焼き尽くせ…【火球】」

「ぐわっ!」


雪道を侵攻して来た盗賊団へ火球が炸裂した。数人の盗賊の顔を焼いて行動不能にするが、盗賊たちも散開して盾を構え強引な突破を図る。


「むっ、ただの盗賊団ではないッ…傭兵くずれか!」

「斬り込めッ!」


「「 おぉぉおおー 」」


火球にも負けず盗賊団の戦意は高い様子だ。生活の困窮が彼らを駆り立てるのだろうか。


南地区は乱戦となった。


………


コボンの町の東地区は比較的に平穏な気候で商家も多い商業地区だ。


「世界を凍てつく…【凍結】」

「わっ、気を付けろッ。滑るぞ!」


街路の積雪に更なる氷魔法を掛けると氷の強度も増して全面凍結の路面と化した。鋲を打った滑り止めの靴も役に立たぬ滑り(ザマ)だ。


坂道を滑り落ちた盗賊が弓矢を受けて負傷した。坂の下でも死んだフリに逃げ延びる。


「ふむ。止まったか?」

「…」


予め想定された侵入箇所から防衛拠点を選定し防衛線を築いた。弓兵の配置も完璧な布陣だ。このまま持久戦に持ち込み盗賊団を包囲すれば殲滅も可能だろう。


東地区は膠着状態となった。




◆◇◇◆◇




マキトたちはコボンの町への進路を迂回して北側の雪原に廃屋を発見した。この場所には迷宮(ダンジョン)への進入路が隠されている。


「アッコ。頼むよ」

「…仕方あるまい…コヤツには一宿一飯の恩義もありて…」


ぶつぶつと文句を言いながらも岩塊の幼女ゴーレムは隠し通路を開いた。移動小屋に牽引した炭焼き小屋を配置して入口を偽装する。


「僕らは迷宮(ダンジョン)の状態を確認します。町の方は…」

「あたしに任せなさいッ」


風の魔法使いシシリアが町の様子を探るらしい。マキトは迷宮(ダンジョン)への探索隊を選抜する。まず、地下道の案内には元の迷宮(ダンジョン)(ぬし)であるガイアっ()が先行し、マキトの護衛には河トロルの戦士リドナスが付いた。


町の方は以前にコボンの地にも暮らしていた獣人の戦士バオウとシシリアが当たる。その他は移動小屋の拠点にて留守番だろう。幸いな事に?金赤毛の獣人ファガンヌは茨森へ狩りに出掛けたまま戻っていない。




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