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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第十六章 ブラル山への温泉旅行
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ep208 継承者たち

ep208 継承者たち





 魔女っ娘サルバリムの反乱を鎮圧した後に、僕は森の人の役所を方々に連れまわされて辟易した。なにしろ軍勢を動員した大規模な反乱の事後処理のために、治安部隊だか司法機関だかで証言を求められたのだ。


事の発端は森の人の次期女王筆頭候補であるスティカルラ殿下の追い落としを狙っての策謀らしい。森の人の支配者層は世襲ではなく長い養成期間をかけた教育と競争の成果だという。筆頭候補であるスティカルラ殿下はエリートであり、その地位も分かり易く言えば皇太子だろう。


そして、継承順位の二位には青の騎士ジェリドナ。三位には魔女っ娘サルバリムが続く。その魔女っ娘サルバリムが上位である青の騎士ジェリドナへ偽情報を流して煽動し、スティカルラ殿下の捕縛へ向かわせたとは推測の域だが、あながち外れた見解ではあるまい。反乱を起こした張本人の自白を待ちたい。


僕らは最終関門と思われる宮殿の謁見の間に控えている。


「まぁ、サルバリムにも困った物です…」


現在の女王陛下の嘆きが漏れるが、僕らは黙って聞くしかない。女王陛下の裁定が下される。


「反乱の経緯は分かりました。スティカルラには罪無しと認め、ジェリドナは軽率な行動につき譴責処分とします」

「…」


「サルバリムは継承順位をはく奪の上に無限牢獄へ収監いたします。なお、本人の反省を促すものとするッ」

「はっ」


僕の左右へ控えたスティカルラ殿下と青の騎士ジェリドナが敬した。


「最後に、人族の大使殿にはご迷惑をおかけしてお詫びを申し上げる。…何なりと賠償の要求に応じようぞ」

「それでは、サルバリム様の身柄をお借し頂きたい」


いつの間にか大使の身分となった、僕の応えに宮殿の謁見の間が騒然となる。


「なぬっ…罪人へさらなる加虐を望むと申すかッ?」


「…なんと、下界人の考える事は野蛮な…」

「…身柄を引き渡せとはッ…」

「…ざわざわ…」


式次官の声が割って入る。


「鎮まれッ、者ども。女王陛下の御前なるぞ!」

「…さわさわ…」


興奮の潮が引くと、女王陛下は賠償の要求に応じた。


「大使殿への賠償が先決である。…身柄は必ず返せよ…」

「はっ、精霊の御霊(みたま)に誓いて、お約束いたしますッ」


僕は大見得の乗りで約束をした。


………



現在、魔女っ娘サルバリムの魔力を使い鋭意製作中である。


「こなくそっ…【雷鳴】からの【落雷】!」


-GRoooZAPZBAN-


標的に見立てた鉄剣に落雷が命中した。僕は魔女っ娘サルバリムを使役する。


「そぉら、もっと励めよッ」

「ひぃぃん。分かっておるわっ…【雷鳴】【落雷】【落雷】」


-GRoooZAPZBAN-


-ZAPZBAN-


立て続けに落雷が命中しプスプスと地面が焼け焦げる匂いがする。僕は更なる刺激を求めて魔女っ娘サルバリムを責めたてた。


「どぅだ、もう限界かぁ~」

「きゃふん。休ませて…おくれよっ…【落雷】はぁ【落雷】ひぃ【落雷】ふぅ」


-ZAPZBAN-

-ZAPZBAN-

-ZAPZBAN-


製作現場を視察に来た氷の魔女メルティナも鼻白む現場に、魔女っ娘サルバリムの汗と体液が飛び散る。


「マキト様も鬼畜よねぇ…」


「あたしも、魔道具の製作に打ち込むマキトを見るのは初めてだぜッ…」

「お嬢様の折檻も大概な物ですよ」


火炎の女チルダの感想に冷静な指摘をするのは女中(メイド)姿のサヤカだろう。


そんな血と汗の結晶の製作現場では、満足気に微笑むマキトの姿があった。


………



反乱の騒動がひと段落して僕らは森の人の集落へ出かけた。宮殿の周辺には町と呼んでも差し支えの無い集落があるのだが、市場に集まる商品を見ても流通経済は発達していない様子だ。


行商人が思い思いの商品を持ち寄り、露店が軒を並べる様子に僕は尋ねた。


「これは、大森林の特産品ですか?」

「あぁ、材料は大森林の樫木を利用して、私が彫った物です」


確かに木製の皿は裏面に装飾彫りがされている。あまり実用的な品物とは見えない。


「あなたが、木彫りの職人ですか?」

「いや、職人と名乗る程の腕前も無くて…趣味の一環でございます」


露店の主人が自ら製作すると言う装飾彫りの木皿は見事な出来栄えと思う。


「ほほう、面白い…」


僕らは木工製作の話に大いに盛り上がり、露店の事情などを聴いた。それによると付近の露店では店の主人が趣味で製作した品物を展示して販売する者が大半を占めると言う。…なんか、同人即売会が思い出される。


「それじゃ、この皿を買うよッ。代金はいくらだい?」

「いいえ。代金ではなく魔力を頂きます」


「はっ?!」


妖精族の一派である森の人たちは魔力本位の経済であった。受け取った魔力は製作に使い新たな作品を生み出すと言う。


「それでは、魔力を頂きますッ」

「ちょっ、待ちなさい!」


むちゅ。咄嗟の反応でメルティナお嬢様が制止するも僕は露店のご主人に唇を奪われた。…露店のご主人が美人のお姉さんで良かったぁ。


と、それ処では無い。僕の魔力は激減だ。メルティナのご機嫌は急降下にナナメだ。


僕は魔力不足で意識不明だ。


………



あぁ、油断して命の危機か貞操の嬉々か。僕は寝台で目覚めた。…棺桶の中でなくて助かった。


「マキト様。私が口移しに魔力を差し上げますわッ」

「むちゅう…」


目覚めると僕の看病に付いていたメルティナお嬢様に熱烈に迎えられた。


「にししししッ、マキト。町でやらかしたそうじゃん!」

「事前にご注意を申し上げるべきでしたわ…」


火炎の女チルダの微笑が鬱陶しい。利発なサヤカさんが意気消沈しているのも珍しい。


(ぬし)様。出立の準備が整いまして ゴザイマス♪」

「うむ」


今回の河トロルの戦士リドナスは日陰仕事ばかりだ、反乱軍の敵情の偵察に反撃の準備から帰還の手筈まで影の苦労には感謝したい。


実際に氷の砲弾を反乱軍へ打ち込んだのは氷の魔女メルティナと火炎の女チルダの連携技であるが、その間を取り持ち砲撃の威力を手加減したリドナスの水制御の技術があればこその連携技と言える。


「帰ったら、魚を料理したいッ」

「宜しう ゴザイマス♪」


僕らは大森林からの帰還を決めた。




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