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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第十五章 霧の隘路に陥穽を
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ep188 魔獣グリフォンの対策

ep188 魔獣グリフォンの対策





 金赤毛の獣人ファガンヌは野生のグリフォンを引き連れて狩りに出掛けた。その他にも野生のグリフォンは荒野で狩りをする姿が目撃されている。タルタドフの南の開拓村では引き続き、魔獣グリフォンに警戒する事だろう。


その中に黒毛で古兵の風格と見えるグリフォンが北部の山岳地へ向かったのは、単なる気まぐれであった。


「うげっ、空を見ろッ!」

「まっ、魔獣グリフォン!!」


山賊団を改め北陸の傭兵団と名乗る男たちは岩陰に身を隠す。


「しッ、隠れろ……」

「………」


この季節は雪山から氷を運んで日銭を稼ぐ毎日なにの、魔獣グリフォンの襲来は想定外の危険な事態だ。


黒毛のグリフォンがひと声鳴く。


-GUWQ Kuk-


◇ (ふん。逃げ隠れするとは 面白くも無いニンゲンどもよ)


それに、葦毛で精悍な顔付きのグリフォンが応じた。


-GUWQ Kakuk-


◇ (所詮、ニンゲンなど 我々の相手では無いさ)


間をおかず、黄毛混じりに軽快に飛ぶグリフォンが警告を発する。


-GUWQ Kt kt kt-


◇ (太陽の方角に 敵意ありッ)


見ると平原に武装した騎兵の群れがあった。ニンゲンが言う軍隊に違いない。


-GUWQ Kfu-


◇ (ほう、面白そうな獲物か あれを狩るぞッ)


黒毛の魔獣グリフォンが急降下して騎兵を襲うと、流石に訓練されたニンゲンの軍隊らしく奴らも気付いて慌てているが、反応は遅い。


ひとつッ鉤爪に引っ掻けて、騎兵を仕留めた。


「急げッ 退避ぃ!~」

「っ!」


ニンゲンのひとりが叫ぶと残った騎兵はひと固まりに逃げ出した。


-GUWQ Kha-


◇ (良かろう、追うて 仕留めるぞッ)


逃げる騎兵を追うと、聞こえる馬蹄の数が多い気がする。どこかに仲間が潜んでいるのか。


その時、森の方から新手の騎兵が七つ現われた。手には騎兵の突撃槍を構えて、既に全速力でこちらへ駆けている!…危ない、このままでは正面衝突だ。


-GUWQ Kawaw-


◇ (御免ッ 助太刀 致す)


ひと声鳴くと、葦毛で精悍な顔付きのグリフォンが横合いから飛び込んで、先頭を走る騎士を蹴り倒す。完全武装の甲冑の騎士は落馬して後続の騎兵の馬脚を乱した。


-GUWQ Kuk-


◇ (ふん。ぬっ!)


黒毛の魔獣グリフォンは衝突の寸前で体を持ち上げ、空へ回避した。あのまま、騎兵の突撃槍に衝突すれば魔獣グリフォンでも無傷では済まないだろう。


帝国軍の騎兵隊はいち小隊を囮にして魔獣を誘い、本隊が奇襲して攻撃する戦術であった。


「はっ!」


しかし、騎兵の本隊は平原を走り抜けると森へ突入した。去り際に強烈な殺気を飛ばして来たのは、負け惜しみであろうか。


そこには、平原の上空を旋回して獲物を探す、野生のグリフォンの姿があった。




◆◇◇◆◇




開拓村(マキト・タルタドフ)の冒険者ギルド長(仮)のミラは村長の屋敷を訪れた。マキト・クロホメロス男爵がタルタドフの領主である事は公然の秘密だ。ここでは無難に村長と呼ばれている。


「マキト村長。なんとか、出来ませんか?」

「野生の魔獣の事ですし、ファガンヌひとりでは抑え切れません」


ギルド長(仮)のミラの頼みでも、マキト村長に出来る事は少ない。


「狩猟が滞ると、開拓地の食糧問題が再燃しますわ」

「早めに、対策を考えましょう……珈琲はいかがですか?」


と言うものの、空を飛ぶ魔獣グリフォンに対策など無い。僕は焙煎した新作の珈琲を勧めた。


「ええ、頂きます」

「…」


良く洗い熟成して乾燥させた珈琲豆は炭火で焙煎し粉に挽くと香りが立つ。お好みで砂糖とミルクを入れると良いだろう。ミラは初めての珈琲の苦味を味わい……砂糖とミルクを増々(マシマシ)に入れた。


冒険者が夜の眠気覚ましに飲む苦いお茶は、薬草の根を乾燥させて煎じた物だ。それと比べても眠気を撃退できるだろう。


なにか良い対策は無いものか、長い会議はお茶の時間へ移行した。


「あら、失礼いたします」

「!」


メルティナお嬢様が自ら新作のショコラケーキを持って応接室に現われた。


「マキト様。自信作でございますのよ」

「おほほ…」


新たにお茶と珈琲を入れる女中(メイド)の動きが忙しくなる。部屋の人員も増えた様子だ。


奥方の助手には屋敷の女中(メイド)ではなく小柄な貴婦人が付いている。とても屋敷の使用人とは思えない。…まさか。


「その話、私にも聞かせて貰おうッ」

「…」

「我が国にも、無関係ではありますまい」


サリアニア侯爵姫がギルド長(仮)との会談へ割り込んだ。そして、場違いな男装の麗人がテーブルに着くと応接室の壁際には護衛が立ち並んび、隅に控えるメイドを圧倒した。…なんだ。この異様な空間は、…


「それで、魔獣グリフォンの対策ですが…」

「もぐもぐ」


ギルド長(仮)のミラが本題に立ち戻って議論を進める。メルティナお嬢様の自信作ショコラケーキは、表面はカリカリに焼けても中はしっとりフワフワの出来だ。特製の焼き窯とケーキ型を活用しているらしい。…それにしても、腕を上げたなぁ。


「手に余るのであれば、身を潜めてやり過ごすしかあるまいッ」

「しかし、村の財政に…」


サリアニアの消極論には問題点も多い。


「魔獣とて実害はありませんわ」

「いや、現に帝国軍が襲われたとの情報もあります」


メルティナお嬢様の楽観論は即座にミラの危険情報で否定された。サリアニア侯爵姫はギルド長(仮)のミラの実力を推し量る様子に、…


「おや? 耳の早いことか…」

「ファガンヌに監視を任せましょうか?」


僕は暫定案を述べた。


「うーむ。確実とは言えぬか…本来でありば、野生のグリフォンが飛来する事も異常なのだッ」

「餌付けをしてみては?」


あまり良い提案では無いが、男装の麗人が意見を述べた。


「はっ、なるほど!」

「グリフォンの好物は肉か?」


僕が餌付けの方法を検討していると、サリアニア侯爵姫が尋ねた。


「さて、どうですかねぇ」

「…」


特に良案も無いまま、サリアニアが命じる。


「グリフォンの監視と警戒に加えて嗜好の調査をせよッ」

「はっ」


お付きのメイドのひとりが命令を持って退出した。


結局それ以上の対策案は無かった。





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