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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二章 魔物と戦って見たこと
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019 討伐作戦

019 討伐作戦





 僕はキドの町の北平原で魔物の討伐作戦に参加している。

討伐作戦は城郭都市キドの防衛隊が主戦力となって、町の北平原の全域で行われる。


◇ (あたしは上空から平原を観察してた。訓練された兵士たちが隊列を組み…狩猟者たちは後方に散開している)


今回の狩猟者ギルドから参加したチームは防衛隊主力が打ち漏らした魔物を後方や左右の森林地帯で迎撃してる。

うちのチームは、剣士マーロイ、獣人の戦士バオウ、弓と風魔法使いのシシリア、と荷物運びの僕で四人だった。


灌木の繁みの先にオークが三体見えた。手傷を負って逃げてきた様子だ。

索敵能力に優れたシシリアが先に気づき、遠方から風魔法と弓を同時に放つと一体に命中した様子だ。


オークもこちらに気づくが、剣士マーロイは先行して接敵していた。気合いと共に剣戟を振るう。二振りでオークの一体を切り伏せた。そこへ、獣人の戦士バオウが飛び込んて来た。


「GAA! 前に出すぎだ」

「BUFOW!」


獣戦士バオウが鉄拳を振るうと、もう一体のオークが吹き飛んだ。

弓矢で負傷したオークはシシリアが風魔法で倒した様子だ。


「わりい、悪い」

「マーロイ、お前の悪い癖だ」


昏倒したオークに止めを刺しているとシシリアが合流してきた。僕もようやく追いつく。


「んっもー、張り切りすぎよ」

「美人が台無しだぜ」


シシリアが膨れ顔で言うのをマーロイが茶化した。


「ここいらで、飯にしよう」

「GUF!」


僕は背負子を降ろし夕食の準備を始めた。彼ら狩猟者のチームは四人組だったがマーロイの奥さんが出産前で休んでいる。そのため、僕は荷物運び兼治療師と料理係として同行していた。


彼らの戦いは堅実で敵が三体以下ならば殲滅するが、四体以上は味方が来るまで時間稼ぎか退散する事を徹底していた。僕は戦場に後から付いて行くだけで戦闘らしい事は無かったが、彼らの戦い方はおおいに参考になった。


オーク肉で得意の角煮を作る。オークの焼肉も良いだろう。迷宮口から湧き出したオークには、まったく話が通じない。群れの統率も無い様子だ。


「おお、うめぇな!コレは」

「GAF、GAF」


マーロイとバオウは角煮と焼肉に噛り付いている。


「もっと、上品に食べなさいよ」

「………」

◇ (あたしは密かに上空から飛来して餌をねだる…神鳥(かんとり)魔法【神鳥(ゴッド)餌場(ベェイ)】…魔法使いの女から餌をゲットした)


シシリアはあきれ顔だったが、角煮の美味しさに納得した。


「マキト君、やるわね」

「いえ。これも仕事ですから」


戦闘で役に立てない分はここで働こう。野菜スープと黒パンを配る。


「町に戻れば良いのだけど……暖かい食事があると元気がでるわ」

「戻る時間は無いさ」


シシリアが言うので、マーロイは今回の作戦を説明した。


「今回の討伐作戦では夜も防衛隊が陣を張って、徹底的に魔物を狩る!ここからが本番だッ」

「GUF! 腕が鳴るゼ~」


ポキポキとバオウが腕の関節を鳴らすのは洒落なのか。


………


腹がくちくなって交代で仮眠を取る。マーロイとシシリアが先に休息した。僕は火の番をしながら獣人の戦士バオウと見張りだ。


「GUF はじめは 頼りないと思ったが、料理はウマイ」

「ありがとう、ございます」


めずらしくバオウが饒舌だ。バオウは犬顔の獣人で筋骨が逞しい男だ。全身を革鎧で覆い腕に鉄甲を装備している。


「FUN! お前の身内に 獣人がいる ダロウ…」

「えっ」


僕は意外な指摘に驚くが、バオウは続ける。


「なつかしい 匂いだ」

「薬草の臭いが染み付いているでしょう」


ごまかして言うが獣人の鼻は欺けないだろう。それきり追及はされなかった。僕は思い付いて言ってみた。


「こんど格闘術を教えて下さい」

「ヨカロウ 明日の飯の後でな GUF」


バオウは照れ草そうに約束した。


………


◇ (あたしは神鳥(かんとり)魔法【神鳥(ゴッド)雄姿(フォーム)】で(フクロウ)の姿になり狩りを続けた)


しばらく仮眠した後で夜間の討伐作戦が始まった。夜目が効くバオウが先行して哨戒を続ける。


「おお鼠だ!」

「!…」


バオウが駆け戻り陣形を整える。前列にバオウとマーロイ。後列にシシリアと僕が並ぶ。僕は杖を握りしめた。


おお鼠の一団が駆けてきた。シシリアが牽制の魔法を放つ。


「…鋭き風よ 切り裂け!【風刃】」


風の刃が走り抜ける。先行していた数体のおお鼠が弾けとぶ。


「切るぜ!連撃」


マーロイは気合いと共に斬撃を放つ。いちどに二体のおお鼠が切り伏せられた。いや、二連撃か。


「GAWAW!」


ひと声吠えてバオウが突っ込むと、気迫に負けたおお鼠が散る。

僕が前列を抜けて来た一匹のおお鼠に杖を叩き付けると、おお鼠の体が横転した。


◇ (きいぃぃ鼠!…正直なところ鼠は苦手なの…だけど、(フクロウ)の本能に身を任せて鼠を狩る!)


左に逃げるおお鼠に向けてシシリアが矢を放つ! ぴぎゅッ…おお鼠の悲鳴がした。致命傷の様だ。

しばらくして、獣人の戦士バオウが両手に掴んだおお鼠を絞めながら戻ってきた。


「いい反応だ マキト」

「…」

「ネズミは捨ててよ!」


僕はバオウに褒められたのだが、バオウはシシリアに噛みつかれていた。


「おい、じゃれてないで、次に行くぞ」

「!…」


剣士マーロイは何匹か追い打ちしていたが、不満の様子だ。


「ネズミじゃ金にならん」

「GHA! ネズミじゃ 飯にならん」

「…」

◇ (おお鼠は…食べたくないわね…)


戦場に角笛が響く……場所を変えて前方に陣を移すようだ。突如として前方で悲鳴があがった!


「マジやべぇ、兵隊どもが悲鳴をあげてやがる」

「GUF マズイ 臭いだ」

「援護しましょう!」

「…」


◇ (あたしは先行して飛行し上空から魔物の姿を見付けた。(フクロウ)の姿ならば、夜間も視界に不自由は無いのだけど…【神鳥(ゴッド)視界(サイト)】!…この魔法は暗闇でも相手の魔力量が見える。)


僕らは戦場に駆け付けた。みると巨体の魔物が防衛隊にとり囲まれている。しかし、巨体の魔物が手にした棍棒を振り回すと…防衛隊の陣形が崩れた。隊長らしき声の叱咤が飛ぶ。


「取り囲め! 陣形を崩すな!」


「…トロルだ」


トロルの巨体に対して防衛隊は槍と鋼鉄の盾で包囲するが、討伐には至らない。後方から弓矢と魔法を打ち込むが、威力が足りない様子だ。シシリアも風の魔法を放つ。


「綿毛の帳よ とり囲め!【静寂】」


トロルの巨体が一瞬たじろぐ。


「こっちよ!【囁き】…うふふ」

◇ (魔法使いの女が、魔法に声を乗せてトロルの耳元で囁く)


思わずトロルの顔が西を向いた所に、東からマーロイが切り込んだ。


「せいや! 硬いっ」


石を切る様な不快な音がした。トロルの首筋に傷が出来たが浅い。


-BAWOBOOOW-


トロルは巨体を揺らして吠え!掴みかかるが、マーロイは大きく下がって回避した。なぜか、そのままトロルの巨体が前に転ぶ!

◇ (あれは、土魔法かしら…獣人のくせにやるわねぇ)


すかさず、バオウがトロルの手首を全力で捻って棍棒を奪った。


「今だ! 槍っ前ぇ!!」


咄嗟の出来事に呆然としていた防衛隊が、隊長の命令に反応した。兵士たちが一斉に槍を突く。


-GYAWBOOOW-


前後左右から槍を受け、大量に出血してトロルは倒れた。

みると地面が陥没し、トロルの足を半ばまで捕らえていた。いつの間に罠を設置したのか。


再度に槍を突き込むと巨体のトロルも絶命した。





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