挿話 P93 ピヨ子と海賊
挿話 P93 ピヨ子と海賊
◇ (あたし、神鳥のピヨ子は偵察任務に従事していた。海鳥の姿で東の海岸線を飛ぶと鴎の群れに遭遇した)
-UKAA! UKAK-
◇ (鴎の話では人族の船が海上で争っているらしい。神鳥魔法…【神鳥の加速】…あたしは漁村の沖合へ飛行した)
海上ではトルメリア王国の軍船が薄汚れた外洋船に衝突している様子だ。外洋船から見慣れぬ体色の船員が軍船へ乗り込んで来る。
「海賊船へ、反撃しろッ」
「ッ!」
命令に呼応して軍船の側面に設置された砲身が火を吹いた。
「打ち出せッ…【発砲】」
「水を少々と火炎の…【砲撃】」
「火と水と風の祭ろう…【砲撃】」
海賊船に着弾するが角度が悪いのか、威力も命中精度もバラバラにして効果も無い。
すでに甲板では白兵戦が行われていた。
「押しかえせッ、海賊どもをぶっ潰せ!」
「「 おおう! 」」
海軍提督の勇ましい銅鑼声が響く。海賊は魚顔の魚人だった。
「ぎょぎょ、ぎゅぷぷぷっ」
「うぎょ、ぎょすっ」
海賊船と接触した反対側の海面からも魚人が現われて軍船へ乗り込んだ。白兵戦が各所に発生して収拾も困難と見える。
「いまこそ、海の男の意地をみせろッ」
「「 おおう! 」」
口髭を振るわせて海軍提督が魚人へ切り込む。既に指揮する兵の動きもバラバラだ。
この様子では他の軍船も襲撃を受けているだろう。
◇ (あたしは海上の争いに参戦する気は無かったが、乱戦に見知った顔を見付けた。【神鳥の羽斬】)
金色の海鳥が飛来して目前に迫った魚人の海賊を切り裂いた。
◇ (また、つまらぬ物を切ってしまったわ……この事はご主人様へ報告が必要ねっ!)
「あれは、マキトさんの鳥!?」
彩色のオレイニアは乱戦の渦中に助けられた。
「水を少し、火と風を多めに…【砲撃】」
「ぎょべら!」
得意の砲術で魚人の海賊を吹き飛ばす。
「下がれッ、ここを防衛拠点とする、ぜぇ、はぁ……」
「提督!」
乱戦を突破してカイゼル提督が合流した。護衛の副長らも健在な様子だが、防衛拠点の確保は困難を極める。
魚人海賊との戦いは苦戦を強いられた。
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