挿話 P91 ピヨ子と南国
挿話 P91 ピヨ子と南国
◇ (あたし神鳥ピヨ子はご主人様と南国の砂浜へ出かけた。砲術部の女子が同行しているが一般人も同然よ)
マキトが新型の装備を手にして言う。
「ようし、ルールを決めよう…」
マキトは長柄の魔道具を手にし背負った水袋を揺らして競技のルールを説明した。
◇ (どうやら、ご主人様が背負った新鮮な魚と見える得物をあたしが奪えば勝ちとなる。また、あたしが主人様の攻撃を受けた場合には水が乾くまで行動不能となる)
そう、マキトが誇示しているのは大型の水鉄砲のようだ。放水して射程を確かめている。競技の開始から早々に、河トロルのリドナスは海に飛び込んだ。…懐中からご主人様を襲撃するらしい。
◇ (あたしは海鳥の姿に変化して上空からご主人様の行動を追うが、容赦の無い銃撃として水の弾丸が飛来した)
「ピヨ子。落ちろ!」
大口径の水鉄砲から狙い澄ました一撃が神鳥ピヨ子を襲う。
「ぴっ!(危ない)」
◇ (あたしは奮戦も虚しく撃墜された。……ご主人様は浅瀬を睨んで潜伏したリドナスを探している。神鳥魔法!【神鳥の炎熱】)
炎の魔法か。全身に纏った熱気で素早く羽を乾かしてピヨ子が飛び上がった。
◇ (上空から見るとリドナスの泳ぎの実力が分かる。あの浅瀬を苦も無く泳ぐのは難しいと思うし…息継ぎはどうやっているのかしら?)
リドナスが音も無く海面に立ち上がりマキトを襲う。
「甘いわ!」
「きゅう♪」
至近からの奇襲にも関わらずマキトは反応して後方へ跳んだ。魔道具の銃口がリドナスへ向けられる。
◇ (神鳥魔法!【神鳥の突風】)
突然に上空から突風が吹きつける。夏の季節風ではありえない!マキトは銃身を呷られて動揺した。
「なにぃ!」
「ッ!」
◇ (ついに、ご主人様の背後を取ったわ! あたしは獲物をカッ攫った)
その後は砲撃部の女子たちの乱入もありて、競技はグチャグチャになり水遊びに興じた。
◇ (まったくご主人様も大人げない……まだ、子供なのね)
ピヨ子とリドナスも南国の海を楽しんだらしい。
ご褒美回というヤツだ。
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