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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第十章 学園生活に潤いを
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ep125 魔法競技会(勲章戦)

ep125 魔法競技会(勲章戦)





 雨季も本格的なこの季節に、魔法競技会の成績は僕らが所属する私立工芸学舎の二勝六敗であった。特に今年は純粋な魔力だけでなく王国の騎士見習いと武闘組織を傘下に擁する王立魔法学院が有利となる。これは順当な結果と言えた。


今も僕らの防衛拠点に肉薄しているのは、重厚な防具を装備した重装歩兵と見える。その男が獣球(じゅうきゅう)を守りつつ前進する。


「押し退けよ…【突風】」

「がははは、無駄ムダ無駄ァ!」


偽子爵エルハルドが放つ!獣球(じゅうきゅう)を狙う風の魔法は重装備の男に遮られて霧散した。かの鎧は魔法を無効化する特別製と見える。


貴族の子弟が実家の資金力に物を言わせて取り寄せた木製の魔道具は魔法競技の戦術を一変させた。特に魔法防御へ特化した重鎧は厄介で止める手段が限定されるため、重歩兵を先導にした突撃戦術が有効だ。


「行かせるか!【土壁】【補強】」

「俺に任せろやぁぁあ!【両断】」


木刀を持った戦士と見える男が泥に塗れたディグノの防御壁を切り裂く。とても木刀とは思えない破壊力は、魔法の武具だろう。優秀な運動能力を有する騎士または戦士が活躍できる。ただし、木製の武器で相手を攻撃する事は出来ないが拠点の破壊は容易だ。これには防衛側も兵士を繰り出して防御が可能となる。


「はっ、好きにはさせぬ!」

「女騎士か、生意気なッ!」


軽装の鎧で木剣を手にした戦士の前に立ちはだかる。実践ならば切り合いになる所で両者は睨み合いとなった。


「今よ、押し返して…【火球】」

「お姉様! 援護に…【火球】」


彩色のオレイニアと新人のコリンダが同時に火球を放つ。これには重装鎧も躊躇うだろう。


「兄貴ぃ!」

「うっほ、助かったぜッ」


大盾を持つ男が重装備の男を庇い火球を受けた。余熱が髪を焦がすが、防御は鉄壁の様子に手強い。


「援護しますわ…【水球】」

「!…」


後方から水球が飛来して前衛の男たちを濡らす。チームの連携も悪くない。


「へっ、突破するぜぇぇえ!」

「待てッ」


流石にフレイジアが一人で三人の前衛を止める事は出来ず、防御壁の突破を許してしまう。そこは…


「なにぃ!」

「馬鹿なぁぁあッ」

「兄貴ぃ~」


足元の蓋が開き急斜面を転げ落ちると、穴の底はお約束の泥沼だ。


僕らは獣球(じゅうきゅう)の奪取に成功した。


………


「さあ、反撃よ」

「「「 おう! 」」」


彩色のオレイニアが気合を入れた。僕らが獣球(じゅうきゅう)を運び相手の陣地へ接近すると、そこは通常の二倍はあろうかという巨大な防御陣地だった。まさに要塞の備えだ。


「あぁ、あれは、防衛に土の魔法使いを増員しているわね」

「…偵察を放ちましょう」


何重もの防御壁に遮られてゴール地点が見えない。無暗に正面から突撃するのは無謀と言える。大掛かりな防衛陣地と言えども天井の建設は禁止されている。完全なゴール地点の隠蔽は出来ないハズだ。


「ピヨ子! 頼む」

「ピヨーヨー(任せて)」


僕はピヨ子に相手陣地の偵察を頼んだ。観測するとピヨ子は相手陣地の上空を二回旋回して西へ飛び去った。


「目標地点は分かりました。西側に伏兵あり」

「!…」


ここは砲撃部が得意とする上空からのゴールを狙いたい。しかし、西側の伏兵と要塞に設置された高層建築が気になる。あれは上空防衛の見張り台だろう。


「海神オランドカイフの守護の元……蹂躙するぜ!」


修行僧のカントルフが大量の水を循環させて複数の水球を作り防御壁に突進した。いつもの破壊力に増して気合が入るのは、この対戦に勝てばトルメリア王国から優秀チームとして表彰されるのは確実だ。前期と合わせて二期連続の優秀チームとなれば、国内の役所も神殿も引く手あまたと思われる。


僕らは水の破壊槌を連打するカントルフを先頭にして獣球を運ぶ。旧来の魔法競技ではよく見られる方法だ。


「そんな手は古いッ!」

「!…」


突然に防御壁が自壊して押し寄せて来た。まるで泥の津波の様だ!


「マズイわ、戻して!」

「応ぅ…」


オレイニアの指示で獣球(じゅうきゅう)を守りカントルフが突撃を中断する。泥と見えた流れは動きを止めると泥沼と化した。足場が悪くては攻略も困難だろう。


曇天の空は雨が降り始めた。視界が降雨にかすみ見通しも悪くなる。悪天候でも競技が中断される事は無いが、手をこまねいては試合の時間切れとなる恐れがある。


「あれを使いましょう」

「…」


僕らは砦の西方の丘に布陣した。密かに持ち込んだ木砲を設置する。


「放てッ!」

「はい…【砲撃】」


-DOMF-


正確な砲撃でも目標に命中させるのは難しい。ましてや悪天候で視界も悪く地盤も不安定だ。放物線を描き砲弾が飛ぶが、…


「甘い! その手は露見したッ」


要塞に設置された見張り台から風魔法が放たれて、砲弾が破壊されてバラバラとなる!


僕はその様子を観測して赤旗を二度振った。


「第二射、放てッ!」

「はい…【砲撃】」


-DOMF-


オレイニアの指揮の元で砲撃部の新人コリンダが砲撃を続けた。


次弾は風魔法の妨害を排して相手の陣地へ飛び込んだ。


しかし得点の笛は吹かれなかった。


………


利用チームとも無得点のまま延長戦となった。このままではマズイ。相手チームには優秀な参謀がいるらしく試合の流れが悪い。僕らの戦術も研究されて対策されている様子だ。


前半戦は落とし穴の罠へ誘導する効果的な防衛ができたが、同じ方法は通用しないだろう。防衛陣地の補修も大急ぎとなる。また、延長戦では防衛するこちら側が圧倒的に不利だ。重装備の魔法の防具に対策も無い。


僕らは途中の林に潜伏した。


雨の中、獣球(じゅうきゅう)を運び重装備の男が言う。


「がはははっ、我らが軍師殿の言う通りだッ」

「俺に、決めさせてくれぇぇ!」

「兄貴ぃ~」


そこへ奇襲する声!


「見よ! 海神オランドカイフの怒り」


修行僧のカントルフが大量の水を巻き上げて突進した。周囲の雨水を味方に付ける。


「吹き荒れよ…【突風】!、そして【突風】」


偽子爵のエルハルドが形振りを捨てて魔法を連打すると、雨は横殴りの嵐となり前衛の三人を巻き込んだ。そこへ軽装のフレイジアが突撃する。狙いは獣球(じゅうきゅう)の奪取だ!


しかし大盾の男に阻まれた。


「女ぁ! 兄貴には、近寄らせません」

「ふん」


意外にも大盾の男は俊敏な様子で、防護の突破は出来ない。


「ブリジット。守備を! ランドルフ。敵襲に警戒ッ」

「はいっ」「ハッ」


あれが参謀殿か。僕は包囲の後方へ突撃した。


-DOMF-


砲撃の音に続いて。何かが弾ける音がして蔦植物が伸び出して来た。僕は蔦の成長に追加の魔力を与えた。…【増殖】


「きゃっ!」「こなくそッ!」

「慌てるなッ【風刃】!」


予め襲撃地点は決めてあるが…【干渉】して風の刃は妨害しておく。その後方へ森の妖精ポポロが【繁茂】の魔法をかけた砲弾が炸裂した。急激に茨が伸び出して行動を阻害する。


「リドナス!」

「♪」


雨の中をひと粒の泥も跳ね上げずに河トロルのリドナス走る、獣球(じゅうきゅう)の奪取に成功した様子だ。


そのまま、無人の相手陣地へ獣球(じゅうきゅう)を運び得点した。





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