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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第十章 学園生活に潤いを
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ep124 学園生活の日々

ep124 学園生活の日々





 魔法競技会の翌日は魔方陣概論の受講があった。この出席は朝が辛い。ひと晩も明けて魔力は回復しているが身体の筋肉疲労は簡単に抜けない。僕は特製の笹団子を齧りながら学舎へ向かった。笹団子は薬草を混ぜ込んで魔力と体力が少し回復する。


講義の方は担当のオー教授が遺跡の調査へ出かけているため、代理の講師で開講している。ほとんどの講義内容が基礎理論のためか不自由は無い様子だ。


「えー、魔方陣に使われる記号や紋様の意味と効果については、基礎研究がすすんでおり実際の研究結果も公開されております」


話を聞くと古代の魔方陣に関する研究成果は打規模な軍事魔法の魔方陣を除いて公開されているらしい。


「とくに、魔道具に利用する魔法回路への応用研究は進んでおり、トルメリア王国では研究機関にも援助をしています」


いつの時代も生活を便利にする方法と、外敵を滅ぼす軍事利用の分野は技術研究が盛んで発展も早い。


僕は興味深く魔方陣概論を学んだ。


………


 研究室を訪れて細菌の培養容器を観察する事は毎日の日課だ。僕が導入した温度計の動作は順調で備え付けの加熱の魔道具と冷気の魔道具を使い培養容器の温度を調節できる。


僕はオー教授の古い資料にあった魔方陣を応用して魔力の循環装置を考案した。粘土板に描かれた魔方陣へ魔力を注ぎ起動すると、それはグルグルと魔力を循環して魔力が枯れるまで状態を維持する。ただ、それだけの機能である。見た所では有益な利用方法も無かった様子で、魔方陣の資料は長く放置されていた。


「ようし…【回路】【接続】。起動!」


その循環の魔方陣に魔力を充填した魔晶石を接続し効果と稼働時間を延ばした。…粘土板が淡く光る。そこへ細菌の培養容器を乗せて観察記録を木札に記録する。


「青の月13日、魔力による負荷培養を開始。と」


細菌へ過剰な魔力を当てると機能阻害を起して殺菌状態となるが、手加減した威力の魔力に晒すと中でも魔力に強い菌種が残ると思われる。


僕は研究設備を点検して帰宅した。


………


 受講の無い日は、開拓地の販売所に関するメルティナからの報告書に目を通し、タルタドフの領地経営に関する内容をロベルトへ指示したりと雑事に追われる事も多い。


それでも、僕は下宿先のアルトレイ商会の工房を借りて魔道具の制作に取り組んだ。魔法競技会では防衛陣地の構築を行うデッグノの負担が大きい。そこで木べらを模した木製の道具を作成する。それは人の身長を超す長槍の仕様で穂先には粘土工作に使う木べらの形状とした。これで高い壁の形状も思いのままだ。


そして、もうひとつは肉厚の木材を使用した木砲を作成した。砲術部が得意とする砲撃の魔法を補助して威力と命中精度を上げる重量兵器だった。競技会ではコリンダの基本装備に登録しよう。これでも木製の武装だ!


「あとは、千年霊樹の杖の補強かなぁ……」


僕はもうひと仕事を仕上げた。


………


 魔物生態学の受講に出席すると、ざわめきがあった。


「…あれは、白薔薇のポポロ様よ!」

「きゃっ! 可愛いぃ……」

「…ざわざわ…」


僕らの魔法競技会での活躍は伝聞形式で広報される。王立魔法学院であれば高価でも映像を記録できる魔道具があるが、ここ私立工芸学舎の学生の大半は平民の商家や役人の子弟であり、新聞部に似た広報活動をする者があった。そのため、試合の模様は文学的な演劇調で紙面に書き起こされる。販売された高価な手書きの新聞は学生たちに回し読みされて情報が広がるのだ。


その新聞の文脈では()の魔法を使い得点のアシストをした森の妖精ポポロは「白薔薇」と呼ばれていた。…確かにライシプトの茨は白い薔薇を咲き誇り勝利に貢献した。


「…あぁ、水刃鬼(すいじんき)のリドナス様よ!」

「抱いてッ…濡れるわァ……」

「…ざわざわ…」


ついにリドナスも「神」の扱いか…えっ、水神ではなく水刃(すいじん)!? 僕は人目を避けて嘆息した。…水刃鬼(すいじんき)リドナスの神速にも勝る獣球(じゅうきゅう)の運びで得点を奪った。


なるほど、新聞の販売数は僕らの活躍につれて、うなぎ登りだろう。今回も王立魔法学院に勝利したチームは少ない。やはり学院の方が戦闘向きな講義科目が多い影響だろうか。


僕らは私立工芸学舎の期待を背負っている。


ちみっ子教授が講堂に現われると黄色い歓声が上がるのは既にお約束だ。


「きゃー、チリコ教授よ!」

「…今日も一段とロリロリだぜッ」

「あぁ、ルイーゼ様、食べさせてあっ……」


尻の軽いミーハーな学生が集まるのは仕方のない事だろう。ちみっ子教授が講義を始めると学生は静まった。


「本日は精霊と魔霊(まれい)の生態についての考察じゃ」


慣れた様子で、ちみっ子教授が合図をすると助手が壁面に精霊と見える絵図を張り出す。


「多くの精霊は実体を持たないが、稀に魔石を核として肉体を形成する者がおる」


僕らはちみっ子教授の話に聞き入った。


「そのうち我々の呼びかけに応じて、自然界の(ちから)を借りる事が出来るものは精霊として親しまれておるのじゃ」


さすがに本物の精霊は見た事も無いが、噂では精霊召喚の秘術も存在するらしい。


「…に対して、魔霊は我々に敵対して害悪をなし、自然災害を(もたら)すものも多いという…」


ふむ。魔霊(まれい)に出会っても回避できないかも。


僕は精霊と魔霊(まれい)の対処方法を夢想した。





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