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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第十章 学園生活に潤いを
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ep121 魔法競技会(予選)

ep121 魔法競技会(予選)




 試験日程を終えた翌日には魔法競技会の予選があった。魔法競技会は前回の魔物襲撃事件の教訓からいくつかの変更点が周知さている。そのひとつに参加者の資格として騎士や剣士の参加が認められて木製の武器を使用できる。また、ひとチームは競技に参加する六人と補欠として三名の登録が義務付けられた。補欠の三名は審判員と伴に競技会場の周辺を警護するためだ。彩色の魔法使いオレイニアが言う。


「マキト君たちが、復学して助かるわ。またチームで頑張りましょう!」

「はい。お願いします」


僕らは昨年の競技会で王立魔法学院に二勝して優秀表彰を受けたチームだ。昨年の人員は揃って参加を希望しているが、既定として9人の選手を登録するため追加の人員があった。


「フレイジア・アスタリスだ。……フレイと呼んでくれ」

「コリンダです。よろしくお願いしますぅ~」


剣呑な目付きの女と新入生の女子が挨拶した。剣呑な女フレイジアは先日の対戦で僕が打倒した騎士家系の者だが、僕らのチームへの参加を熱心に希望した。僕は彼女の熱意に負けてチーム代表のオレイニアに紹介したのだが、同じ下級貴族の出身で意外と気が合う様子だ。新入生の女子コリンダは砲術部の後輩でオレイニアの推薦だ。僕らが復帰しない場合は砲術部から補欠を埋める算段をしていたらしい。


「おう、よろしく頼む」

「うん…」


修行僧のカントルフは気軽な調子で言い。建築家のディグノは反応を見せた。これでも打ち解けた方だろう。


「二人とも固いですよ! 折角、美人が二人も加入して下さると言うのに……お合い出来て光栄です!」

「エルハルド。落ち着きなさい」


キラリと歯を光らせる偽子爵エルハルドの技術は見事だ。代表のオレイニアが窘める。


「リドナスと 申します♪」

「ポポロと呼んでね!」


河トロルのリドナスは人族の言葉を覚えて流暢になってきた。森の妖精ポポロは相変わらずチビッ子だ。チーム代表のオレイニアが作戦案を話す。


「前半戦の、前衛はカントルフとフレイ。中盤はあたしとマキト君。後方はコリンダとディグノよ」

「「「 おうっ 」」

「は、はい!」


最初から出場するのは想定外か新入生の女子コリンダの調子外れの声がした。


………


-PIYYY-


競技開始の合図だ。


前半戦は僕らが先攻で魔獣の革製の獣球に魔法を当てて獣球を運ぶ。通常の獣球には水魔法や風魔法を当てるのだが、ルール改正では木剣や木槍の使用が認められる。剣呑な女フレイジアが木剣で獣球を打つと勢いよく飛び出した。僕が杖で叩くよりは格段に速い。


「あまり遠くへ飛ばすと敵に奪われるわよ。フレイ、気を付けて!」

「なるほど…」


彩色のオレイニアが注意するのにフレイジアは素直に学ぶ。


「これは、楽で良い…」

「お姉さま! 敵の拠点が見えます」


昨年までは修行僧のカントルフが水の魔法で獣球を運ぶ役目が多かった。素直な感想に頷くとコリンダが索敵の報告をした。相手側の拠点は基本に忠実な防衛拠点と見える。


「カントルフ。全面攻勢よ」

「良し。出番かッ!」


カントルフが水の魔法で土の壁を破壊しつつ前進する。オレイニアが風の魔法で援護すると、雨季でぬかるんだ地形は暴風雨に晒された様な有様だ。二人の攻撃は意気の合った連係技と思われる。


-BOMF-


新入生の女子コリンダが準備していた砲撃が炸裂した。獣球が放物線を描いて防衛陣地の上空に迫る。


「させるか!【突風】」


防衛陣地から逆風が発生して獣球が反れた。


「ふはははは、彩色のオレイニア! お前の戦術はお見通しだッ!」


不敵な笑い声に注目が集まるが、


-DOMShuuU-


獣球が猛烈な加速をして防衛陣地へ飛び込んだ。右へ弾かれた獣球をフレイジアが木剣で打ち返した様子だ。僕はフレイジアと同時に前方へ飛び出して左側からその様子を眺めていた。


-PIYYYPIYYY-


終了の合図だ。僕らは得点に成功した。


………


砲撃部の後輩でもある新入生の女子コリンダと騎士家系のフレイジアの剣技を生かしたオレイニアの作戦は見事な物だった。後半戦は相手側からの侵攻を防衛陣地で耐えるという基本方針だ。


前半から拠点を構築していた建築家のディグノは泥に濡れて疲れ。先の攻勢で張り切り過ぎたカントルフは魔力不足と見える。索敵と砲術で活躍したコリンダもお疲れ様として……交代にリドナス、エルハルド、ポポロの3人が出場した。


僕がディグノの建設した土壁を補強していると、オレイニアがやって来て…


「表面加工の…【硬化】と【防水】!」

「マキト君。良いかしら……」


防衛作戦を相談した。


「敵が現われたゾ!」

「配置について」


エルハルドが索敵した様子をオレイニアに伝える。僕らは担当場所へ散った。


「ふん。土壁など破壊してくれる!」

「弾け飛べ…【水球】」

「…俺様の汗と涙を思い知れ!【水球】」


防衛陣地の前面に暑苦しい水球が殺到した。普通の土壁であれば脆くも崩れ去るだろう。


「伸びよ、フリュトレの種【繁茂】チャ!」


森の妖精ポポロが樹の魔法を唱えると蔦植物が伸び出した。雨季の地面は既に水も十分だろう。急速に伸び出した蔦植物が水球の攻勢を妨害した。水球の攻勢に紛れて剣士と見える男が土壁に突撃したが意外と手間取る様子だ。


相手側の風魔法は偽子爵エルハルドとオレイニアの二人で妨害して仕事をさせていない。彩色のオレイニアは火の魔法も使えるが、雨季の水魔法が優位にある事は間違いない。


さらに相手側の木刀を持った剣士は剣呑な女フレイジアの防衛と睨み合う。競技会では選手への直接攻撃は禁止されている。…違反すれば減点となる。拠点の防壁の前に立ち塞がるこの女は危険だ!…フレイジアの目付きの悪さが役に立つか。


すでに残り時間は少ないと思える。リドナスが獣球の奪取を提案した。


(ぬし)様 奪いますカ♪」

「うーむ。止めておこう」


無駄に危険を冒す必要は無いだろう。


-PIYYPIYYPIYYY-


終了の合図だ。


「くっそ! 卑怯だぞ……臆病者めッ!」

「うふふ、悔しかったら。優秀な建築家を用意する事ね」


悪態をつく相手方の代表の男をオレイニアが無駄に呷っている。恨みを買わなければ良いのだが。


僕らは魔法競技会の予選に勝利した。




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