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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第二章 魔物と戦って見たこと
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012 魔法陶芸

012 魔法陶芸






 僕は無罪放免となって報酬もゲットして生活資金の余裕を得た。すぐにブラアルの町を出る事も可能だが、良い機会なので選別場の職人の技を学ぶ事にした。チルダの口添えもあり寮から出て職員宿舎に移った。

寮での生活の間にピヨ子はすくすく育ち飛び回れる様になっていた。あまり遠くへは飛べない様子だけど…ピヨ子は寮の職員には人気で密かに食糧を貰っているらしい。そのくせ食事時にも餌をねだる。

よく食べて大きく育てよ!


◇ (あたしは、鉱山の騒動のあと自分の実力不足を実感したわ。今は魅惑(エロ)身体(ボディ)も無くて小鳥の姿では飛行のままならない…早く大きくならねば…神鳥(かんとり)魔法【神鳥(ゴッド)餌場(ベェイ)】を発動する。この魔法に影響された者は神鳥(あたし!)に貢物をせざるを得ないのよッ!)


恩赦が決まって無罪放免となった事で、装備と持ち物が手元に返還された。ブラアルの役人にチルダとギスタフ親方が嘆願してくれたおかげか、千年霊樹の杖も無事に戻った。

旧坑道にある換気用の魔道装置の魔力線の一部として接続された千年霊樹の杖だが、旧坑道に派遣された調査隊に発見された際には、魔道装置の魔力の流れを助ける整流器として機能していたそうだ。

魔力の導通に優れた千年霊樹の特性が生かされた様だ。


僕の前で陶芸工の爺さんが実技を見せる。


「こうして、魔力を操作して粘土を形成しますじゃ」


陶芸工の爺さんは手を触れずに粘土を形成している。見事なものだ。


「さっそく、やってみなされ」


見よう見まねで粘土に魔力を注ぎ魔力を操作する。


「そうそう、いい調子じゃ」


褒められているが上手くは出来ない。つい手が触れそうになるのを我慢して魔力の操作を続ける。その日は粘土を相手に魔力の操作で日が暮れた。


職員宿舎に移ってから待遇が変わった。当然のごとく毎日の給金は無く食事も自炊となった。僕は夕食のためブラアルの町へ出かける。


町の商店が店じまいするのを横目にしつつ、酒場や飲食店などが賑わい始めていた。ふと以前に訪れた鉄製品店が目に付いた。


「よぉ兄弟! 無事だったかい」

「こんばんわ」


兄弟になった契は無いが、心配していた様子だ。


「兄弟に相談があってよ…これを見てくれ」

「これは…」


見ると鉄の鍋に金属製の蓋が固定きれている。圧力鍋の試作品か。


「どうだ。自信作だぜ」

「!…」


鍛冶の男は煤に汚れた顔で笑顔をきめた。


「ただ、ちーと蓋に問題があって…」

「なるほど、さっそく試してみましょう!」


大急ぎで夕刻の市場をまわり、豚肉に似た肉塊とハーブ類を買う。

肉塊を適度に切りハーブと酒に塩をいれて煮込む。醤油が無いのは残念だが豚の角煮だ。


圧力鍋を火にかけて蓋を観察すると…蒸気が抜ける弁の動作が不安定のようだ。適度に手操作で蒸気を抜きつつ観察を続けた。


その後は鍛冶の男と豚の角煮を夕食にして、蒸気弁の改善案を検討した。



◆◇◇◆◇




 次の日も粘土の魔力操作に取り組む。


僕の前で陶芸工の爺さんが実演する。


「こうして、魔力を操作して粘土を形成しますじゃ」


陶芸工の爺さんは手を触れずに粘土を形成している。言うほど簡単な事ではない。


「さっそく、やってみなされ」


爺さんの手元と粘土の魔力量を観察すると、魔力が均等に感じられた。真似してやってみる。


「そうそう、いい調子じゃ」


褒て育てる指導方針なのだろう。ついに、手を触れずに魔力の操作で粘土を変形出来た。その日も粘土を相手に魔力の操作で日が暮れた。


鉄製品店スミノスの店に向かう。圧力鍋の試作改良を見るためだ。途中の市場に立ち寄り食材を買い込む。


「よぉ兄弟!」

「こんばんわ。スミノスさん」


鍛冶の男スミノスは、鍋を手にして出迎えた。


「蒸気弁の改良が出来たぜ!」

「さっそく試してみましょう」


酢に漬けた豚肉を適度に切り、大蒜に似た球根と生姜に似た根菜を入れる。ハーブ類と酒に塩をいれて煮込む。豚の角煮の改良飯だ。


圧力鍋を火にかけて蒸気弁を観察するが動作は良好だ。しばらく煮込む。

手操作で蒸気を抜き鍋蓋をあける。


「おお、ウマそうな煮込みだ」

「完成ですね!」


鍛冶の男は煤に汚れた顔で笑顔をきめた。


「兄弟のおかげだ!」

「…」


その後はスミノスさんと豚の角煮の改良飯を夕食にして、圧力鍋の完成を祝した。



◆◇◇◆◇




 次の日、陶芸工の爺さんは姿を見せなかった。


仕事が立て込んで来たので、指導の時間が取れないそうだ。…仕方ない自主練習にしよう。いくらか、粘土を相手の魔力操作は出来るようになってきた。


その日は魔力操作でいくつかの粘土作品を作り夕刻になった。特に出かける予定も無いので自炊しよう。


………


 次の日に灰色の粘土が届いた。僕の前で陶芸工の爺さんが実演を見せる。


「こうして、魔力を操作して粘土を形成しますじゃ」


陶芸工の爺さんは手を触れずに灰色の粘土を形成している。いつもながら見事な技術だ!


「さっそく、やってみなされ」


灰色の粘土に魔力を注ぎ魔力操作する。


「そうそう、いい調子じゃ」


何だか重い感触だが、ゆっくりと変形できる。

その日は魔力不足で疲労困憊したので、早めに眠りに着いた。

 

………


 次の日は陶芸工の爺さんが職場を見せてくれると言う。ありがたい話なので、喜んで見学させてもらう事にした。

爺さんの職場は町の上層区にあった。古色蒼然とした趣のある工房は中に入ると活気に溢れていた。


「師匠、おはようございます!」

「「「「おはようございます!」」」」


「うむ」


爺さんが頷く。入口の建物では年若い職人が粘土を形成して壺や皿などを作っていた。それぞれが手早く粘土を形成していく。形成された壺や皿は奥の乾燥室へ移されるようだ。


「師匠、おはようございます!」

「「「「おはようございます!」」」」


「うむ、うむ」


次の部屋では熟練の職人が灰色の粘土を形成して装飾品や燭台などを作っていた。


「この粘土には金属鉱石が含まれておるのじゃ」

「…」


陶芸工の爺さん改め師匠の解説が続く。


「金属成分が多いと形成が難しくなるが、焼成すると金属器となるのじゃ」

「へぇ…」


職人の技に関心することしきりな僕は奥の部屋に案内された。


「ここはワシの研究室じゃ。よく見ておれよ」

「!…」


師匠は銀色の金属塊を手に取り形成を行った。次第にふたつの車輪が形成され前後に連なる構造となった。


「どうじゃ」

「すばらしい! 自転車ですね」


駆動するペダルも歯車も無い、その単純な構造の二輪車はまさに自転車のミニチュアに見えた。


「…おぬしも、このぐらい出来るように精進するがよい」

「ありがとうございます」


いいものを見学した。明日からも技術の習得に励もう。

その日は希望に胸をふくらませて、眠りにつきいい夢をみた。



◆◇◇◆◇




 休日の朝、ブラアルの町へ買い物に出かけた。買い出しの途中で、鉄製品店スミノスの店に立ち寄る。


「よぉ兄弟!」

「こんにちわ。スミノスさん」


鍛冶の男スミノスは、鍋を手にして出迎えた。


「新商品の蒸気鍋たぜッ」

「おおぉ!」


店の商品台には圧力鍋の試作品から改良した、大小の蒸気鍋が並んでいた。


「完成のお礼だ。ひとつ使ってくれ!」

「えぇ~」


僕はスミノスの行為に驚いたが、小の蒸気鍋を貰うことにした。本心では買い取りたい所だけどスミノスの好意をうける。これで食事の幅が広がるだろう。


………


スミノスの店を後にして町歩きを続けると、ある露店に人だかりを見つけた。人垣の間から覗くと水の魔道具を売っている様子だ。


「この水差しはトルメリアで発明された、水の魔道具でございます」


商人の男が実演しながら商品を説明する。


「魔道具で集めた水は、ごらんの様に無色透明でじつに新鮮!」


水の魔道具の上部は透明のガラスの様で上品な造りとなっている。


「しかも、この水を飲むと気分が高揚しスッキリ致します」


助手と見える美女が美味しそうに水を飲む。ゴクリと喉を鳴らしたのは観客か…


「あぁ、気分爽快だわ♪」


水も滴る良い女とはこの事か、あの演技力だけでも買いかな。僕が美女を見ていると、既にいくつか水の魔道具が売れている様子だった。

ここブラアルの町では水の魔道具は貴重品だ。安くはないだろう価格を見ると360カル!


その時、ギスタフ親方に声をかけられた。


「よぉ、マキト話がある」

「はい」


ギスタフ親方に連れられて昼間から酒場に入る。


「早速だが、オレは村に戻る。店を放っておけん」

「…」


もっともな話だ、村の商店でも長く休むと商売に影響がある。


「そこでだマキト、オレの代わりに水の魔石を仕入れて来て欲しい」

「また、どうして?」


ギスタフ親方の話では商会の業務拡大として水の魔道具も取り扱うそうだ。水の魔道具の転売ではあまり儲けが無い。出来るなら水の魔石から魔道具を製作したいという。

ちょうど、トルメリアの町にギスタフ親方の縁故の者がいるとの事だった。


僕はその依頼を引き受けた。





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