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無色魔法使いの異世界放浪ちゅ ~ 神鳥ライフ ◆◇◇◆◇  作者: 綾瀬創太
第八章 領地を開拓してみた
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ep101 魔獣ガルムの討伐

ep101 魔獣ガルムの討伐





 僕らが砦の前庭と見える現場に向かうと、魔獣ガルムは巨体な狼の容姿で喉から腹にかけての毛並みは血濡れに赤く、ユミルフの兵士たちは混乱して狩られていた。


(ぬし)様、ここは我らに お任せを♪」

「うむっ」


河トロルの戦士を率いたリドナスが言うので戦闘の許可を出すと、戦士団は勇ましく突撃して魔獣ガルムに殺到した。河トロルの戦士は陸上でも俊敏で敵の動きにも対応しているが見るからに分が悪そうだ。魔獣ガルムが暴れる度に何人かの戦士たちが吹き飛ばされる。それでも、河トロルの戦士たちの奮戦でユミルフの兵士たちの混乱は回避できた。


「ギンナ! 煙玉を」

「はいですぅ~」


僕と同乗して馬の背に乗ったギンナに指示をして煙玉を投げた。狼系の魔物には嫌な臭いのする薬草の粉末が詰まった煙玉が良く効くハズだ。煙玉は素焼きの土器で地面に落ちて衝撃を受けると内部からのガス圧で炸裂する。紫色の煙と嫌な臭いが立ち込めて魔獣ガルムが怯んだ。僕はこの機に撤収命令を発した。


「リドナス!砦の内部へ 逃げろ! 兵士は門の外へ」

「「 はひぃ! 」」


魔獣ガルムは砦の前庭に侵入した僕らを攻撃したが、砦の内部には立ち入らなかった。また、門の外に撤退したユミルフ兵を追う様子も無く砦の前庭を占拠したまま牙を剥いて僕らを威嚇していた。どこかに魔獣ガルムを操り指示を出す者の気配は無い。…あらかじめ命令されて砦の前庭に留まっているらしい。


「歩兵は 密集陣を取れ!」

「はい!」


砦の門から内部を伺う位置に大盾を構えた兵士を並べる。彼らには煙玉に使う嫌な臭いのする薬草の粉末が詰まった袋を支給して盾に吊るした。僕らも嫌な臭いに閉口するが狼系の魔物は嗅覚が優秀なだけに百万倍も嫌だろう。その後ろには長槍を持った兵士を密集させて横隊を組み穂先を前方へ向ける。三列目以降も同様にして長槍の密度を固め念の為に穂先には麻痺毒の薬液を塗ると準備は完了だ。僕はその隊列の後方から号令した。


「全隊ぃ前へ!」

「はッ!」


門から前庭に侵入すると横隊を横に広げて隊列は魔獣ガルムへ迫った。開いた隙間には二列目以降の隊を差し込んでスキを作らない。魔獣ガルムは飛んだり跳ねたりして長槍の穂先を避けるが徐々に追い込まれた。


「囲め!」

「ッ!」


三列目以降の隊も動員して囲みを作り魔獣ガルムを壁際に追い詰めた。


「刺突っ!」

「「「 ! 」」」


余りにも多数の長槍を受けて魔獣ガルムが傷ついた! 致命傷ではないが十分だ。


僕らは魔獣ガルムが麻痺毒に倒れるまで、包囲を維持して戦った。




◆◇◇◆◇




ティレル女史が指揮した騎兵の包囲網と伏兵していた兵士たちが砦に集結した。無事に元領主のカペルスキーを捕えた様子だ。魔獣のガルムは口と手足を鎖で縛って砦の前庭に転がしてある。


「クロホメロス卿。上手くやった様ね♪」

「そちらも、お怪我はありませんか?」


BUFUN(モンダイない)


カイエン号がドヤ顔で鼻息を吐くが、いつもの事だ。河トロルのリドナスが怪我をしたユミルフ兵の水治療をしいてる。


「魔獣ガルムの討伐は契約外ですよ!…ホント苦労しました」

「それは、……特別に報酬を支給しましょう」


僕がへぼやいて見せると、ティレル女史は気前よく応じた。さすが男前である。


山賊砦の討伐戦の全体を通して第一功は元領主のカペルスキーを捕えた騎兵隊とした。第二功は魔獣ガルムを討伐したユミルフの歩兵隊とされた。ユミルフの兵士たちは山賊砦に先行して突入したが魔獣ガルムに襲われて砦の備蓄品などを鹵獲できずに不満な様子だった。…混乱して先に砦の内部へ突入した河トロルの戦士たちが既に砦を占拠している。ところが、戦闘での功績を表彰されて追加報酬があれば気分も良くなる。


僕らは山賊砦で鹵獲した備蓄品から帝国ヘの税を支払い…さすがに帝国の優秀な徴税官は税収には厳しい…特別に報酬として魔獣ガルムを手に入れた。元領主のカペルスキーの身柄は再度にユミルフの牢獄へ収監されて、警備体制は見直すそうだ。


「さて、煮て食うか?…焼いて食うか?」


-GKN!FKN!-


魔獣のガルムは麻痺毒に侵されながら必死に身を捩って腹を見せている。小一時間もすれば麻痺毒は抜けるのだが、…


「ギンナ焚火の用意を! リドナスは大鍋に水を!」


-KFN!KHN!-


-FSHU!FHA(ははは)-笑笑


カイエン号がにやけ顔で鼻息を吐くと…そんな顔もするのだな…魔獣のガルムは身悶えて嫌がった。炊事の準備が進む。


「やはり、獣の肉には醤油ダレが合う!」

「じゅるり…」


-KHA!KFA!-


誰が涎を啜ったのか、竈に並べた串焼きからは香ばしい醤油の匂いがして食欲をそそる。砦に備蓄された食糧庫を開き兵士たちにも振る舞った。


僕らは戦いに疲れて食事を楽しんだ。


………



魔獣のガルムは知能があるらしく僕の言う意図を理解する様だった。料理に刃物を振るう僕の働きを見て麻痺毒の影響か心なし涙目となって降参の態度を示していた。既に見た目は超大型犬なのだが…これでも子供のガルムらしい。赤毛の腹を見せて地面に転がる様子は子犬の様にも見える。どのような経緯で魔獣ガルムの子供を手に入れたのかカペルスキーを尋問したいが、魔獣を支配する指輪を手に入れたので当面は良しとしよう。カペルスキーは支配の指輪で魔獣のガルムに砦の前庭へ侵入した者を食い殺す様に命令していたが、その命令も解除している。


「可愛いですぅ~」

「そうかい?…」


鬼人の少女ギンナは魔獣ガルムの仔を気に入った様子だが、僕には麻痺毒の影響かだらしなく見えるので、とても可愛いとは思えない。


主を失った山賊の砦は武器防具のほか粗方の金品を運び出して無人の廃墟となったが、また破落戸(ごつき)や盗賊団の根城となる事を恐れて…魔獣ガルムの飼育小屋となった!…正確には僕らタルタドフ勢の管理下に置かれたのだが、僕の勝手で魔獣ガルムを配置している。これも特別報酬の配慮だろうか。


僕らは戦利品を抱えてタルタドフ村へ帰還した。





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