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天使の刻印と少女の異世界物語  作者: 黒雪うさぎ
13/23

憎しみと愛と

今回はアルクレアが主役ですね

怪しい執事との夢の話し合いは終わり目を覚ます。

結局あの人は何者だったのだろう?

あれはただの夢か、アルクレアに聞いてみよう。


「アルクレア起きてる?」

「はい。シトラ様が起きている間は私は起きてますので」

「覚えてる?」

「何をでしょうか?」

「夢の中で...」


話そうとすると体に衝撃が起こる。


「うっ...あ...」

「シトラ様!!どうしました!!」


アルクレアが現出して私に近寄る。

体がぐちゃぐちゃになりそうだ...。あまりの痛みに声すらでない。なんども咳き込み息ができない

アルクレアの声でナルルさんは跳ね起きる。


「シトラ!!」

「シトラ様!!」

「何があった!!アルクレア」

「突然で私にも何が起きたのか分かりません」

「シトラ夢を見たの?違ったら手を開いて」


焦る二人の声が聞こえる。ただ痛みがあまりにも強すぎて、何を言ってるのか分からない。


「アルクレア!!力を貸して」

「一体何を...」

「いいから!!」

「分かりました。何をすればいいのですか」

「シトラの中にこの石を持って入るんだ」

「この石を?」

「早くするんだ!!」


アルクレアが私の中へと戻ると、体の痛みが無くなり、意識が薄れていく。夢の中へと吸い込まれて行く

目を開けるとそこにはさっきの執事が居た


「どうやら話してしまったのですね」

「話そうとしたら体に痛みが走って...アルクレアに聞くのも駄目なんですか」

「ええ、失礼ながら約束を破ろうとした場合ペナルティとして体に痛みが走る呪いを付与致しました」

「アルクレアがさっきの話し合いを覚えていませんでした。どういうことですか?」

「ええ、私がそう致しました。精霊には呪いがかけられませんので、夢の記憶を消しました」

「本当にあなたは何者なんですか」

「只の執事ですよ」


そう言って私に笑いかける。

だんだんと辺りが壊れていく


「もう時間ですので、それともう石はお嬢様にお渡ししておりませんので、お気をつけ下さい」

「分かってますよ」


...


「シトラ大丈夫かい?」

「シトラ様...」

「驚かせてしまってすいませんでした」

「いやいいんだ。なにがあったのか教えてくれるかな?」

「起きて、アルクレアと話してるといきなり体に痛みが走ったんです」

「なんでそうなったか知ってる?」

「いえ...急に起きたので..。」

「アルクレアごめんね」

「いえ、そんな事よりもう痛みは無いのですか?」

「うん、もう大丈夫だよ」


そう二人に言ってさっきの事をもう一度考える。9日後にナルルさんと屋敷に戻らないとこの町に厄が訪れる

そう執事の人は言っていた。なら9日後まで待って屋敷に行き直接会って話を聞こう。


「アルクレア、シトラに異常は見当たらないかい?」

「はい、特に何も異常のようなものは見当たりません」

「そう。さっきの症状を聞くと魔力の欠乏かな...。シトラ、ローナに貰ってる飴があるだろう?」

「はい」

「朝起きたら直ぐにそれを食べる事、いいね?」

「分かりました。」


飴を食べた後ナルルさんと食堂に向かう。

しかし途中で休憩所に入り、私...ではなくアルクレアに言う


「アルクレア、いつも隠れてないでちゃんと出てきなよ」

「アルクレアならいつもの事ですから...」

「シトラにとってはいつものことだろうけど、これは他の大精霊ではありえない事なんだよ」

「そうなんですか?」

「そうだよ。本来、大精霊は尽きることのない魔力を持っている。だから他の大精霊は常に現出してるんだよ。普通の精霊だったら契約者の魔力が切れたら、現出できなくなるけど、大精霊の場合自分の魔力で現出できるんだ」

「アルクレアはどうして?」

「現出した際の容姿だけではないね」


そういえばアルクレアが初めて私に姿を見せた時にあまりにも幼いのであまり見せたくないって言っていたかな?


「アルクレア出てきなよ。もう失いたくないんだろう?」


ナルルさんが言うとアルクレアが出てくる。少し怒っている、なにかまずいことでもナルルさんは言ってしまったのかな...

敵意を明らかに向けている


「あなたがなにを知ってるんですか」

「大体知っているよ。アルクレア・フォーリエン」

「なぜ私の真名をあなたが...」

「知ってるさ、君がどんな扱いを受けてきたのかもね」

「ならなぜあなたは出てこいと言うんですか」

「君は確かにアミナやシトラを本気で守ろうとしていた。君自身も戦えるはずだ、なのに戦わなかった」

「それは...」

「アミナの時はシトラが居たから、マギア・カルリ戦では私達が居たから。畏れられるのが怖い?気味悪がられたくない?どっちかな...いやどっちもかな」

「ナルルさん言い過ぎじゃないですか」

「シトラは黙って」


今のナルルさんはとても怖い。なんでここまでアルクレアを責めるのだろう。

アルクレアは黙ったまま、俯いている。泣きそうな子供のように...


「私は..嫌なんです」

「そうだろうね。私もあんな扱いは耐えられない」

「でもね、皆は優しいんだから出てきなさい」

「私の事をそこまで知っていて、なぜあなたはそこまで..」

「これからのためにだよ。アルクレア、君は守ろうとしてるけど、守ろうとしていない。」

「これからのために?なにか起こっているとでも言うのですか!!」

「第6使徒が目覚めた。すでに何ヵ国も滅ばされている。私が戻ってきたのもその為だよ」

「彼が...。そんな..」


動揺を隠しきれないアルクレアは私の手を強く握る。

こんなにも怖がっているアルクレアを見たことがない...


「シトラ..様」


今にも泣きそうな顔で私を見上げる。

ナルルさんは一体何がしたいのだろう。こんなにもアルクレアを追い詰めて、だんだんと怒りが込み上げてくる。怯えているアルクレアの手を強く握る

きっと気持ちが表情に出たのだろう


「そんなに怒らないでよ、シトラ」

「アルクレアを泣かせないで下さい」

「そうだね、アルクレアには申し訳ないけど話を続けるよ」

「ナルルさん」

「静かにして、シトラ」

「......」

「アルクレア、アミナが主人だった頃シトラをただの使徒だと思ってたはずだよね」

「そうです...ですが!!」

「今では、絆まで結んでいるね。アミナの時は結ばなかったのにね」

「それにアミナの時と今のシトラと一緒にいて、私達の事をよく分かってるはずだよ」

「憎い...」


ボソッと呟くアルクレア。段々と手のひらの紋様が薄くなっていく


「アルクレア...?」

「皆楽しそうにしていて、私をあんなに辛い目に合わせたのに」

「アルクレアどうしたの!!」

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

「シトラ!!下がって!!」


アルクレアの周りに黒い霧が出現し始める。


「何をしたんですか!!」

「これもじいに言われたことだよ。レアトとの接触で綻びが生じるとね」

「じゃあ何か貰ったんですか?」

「いや助言してもらっただけだよ?」

「ええ!!どうするんですか!?」

「自分の精霊でしょ。自分でなんとかしなさい」


辺りの黒い霧がアルクレアに集まり収束する...

黒い衣に身を纏った姿で、剣を出現させ襲ってくる。


「シトラ剣を貸して上げよう」


もの知らぬ顔で剣を渡してくる。一体何を考えてるのだろう。ナルルさんといい、執事といい、いつも道が決められているようで..


「心底苦手ですね」

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

「どうしたのアルクレア?いつもみたいに私を守ってくれるんじゃなかったの」

「無駄だよ、その子は人工的に作られた精霊、過去の悪夢を見続けてるんだよ」

「ナルルさん...ならこうですね」

「...なっ!?」


剣を投げ捨てアルクレアに近寄る。

あの時アルクレアが止めてくれなきゃ、私は壊れていた。

今アルクレアは苦しんでいる。だからやることは戦うことじゃなく...


「アルクレア」

「憎い憎い憎い憎い憎い...憎..に...」

「あなたが苦しんでいるなら、私がその倍愛してあげるから戻ってきてよ」

「シト..ラ...サ...マ」


手のひらの紋様が光だす。

アルクレアは言っていた、これは絆の証、見えなくても繋がっている。

なら、会いに行こう


「待っててねアルクレア」

...


「この化け物!!」

「どうしてこんな化け物がうちに生まれたんだ...」


苦しい。生まれてくるだけで恨まれる私が憎い。自分自身が嫌いで嫌いで死にたくなる


「ねえ、お母さんあの子泣いてるよ?」

「いいのよ、気にしなくてもあれは人じゃないから」

「そうだぞ、決して話しかけたりするんじゃないぞ」

「そうなの?」

「あれはね化け物なんだよ」

「こわーい化け物で食べられちゃうよ」

「ふーん...」


いつも村人が私を見る目は、冷たいものだった。


「この化け物!!」

「死んじゃえよ」

「やりかえせないだろ!!」


人としての感情は捨てたつもりだった。けど蹴られれば痛みは感じ、心のピースは少しずつ欠けていく。

ただ必要な存在になりたかった


「どうかね?私達の下で人類の為に力を貸してくれないか?」

「賢者様!!このような化け物と話をしては....」

「いつ...私に命令出来るような身分になった?」

「そ...それは」

「いつ君が私に話しかけてもいいと言った?」

「賢者様...も..申しわ..!!」

「もういらないよ。君たちは廃棄だ」


村が破壊されても、なんの感情も無かった。ただもう痛みから解放されるんだ、と喜んでいた。

実の両親が目の前で異形の姿へと変わってもなにも感じない。

すでに私の心は、人として必要なものが欠落していた。


「さあ行こうか。君の名前は?」

「名前はないのか...私がつけてあげよう。そうだね、名はアルクレア、性はフォーリエン。君の名前はアルクレア・フォーリエンだ」


最初の優しい言葉は、全て嘘だと知ったのはずいぶん時間がかかった。


「レアト、あの子気味が悪いわ」

「そう言わないでよ。あんなのと話してる僕のほうが辛いよ」

「それもそうね。実験の方は順調?」

「ああ、少しずつだが、体が変異してきてる。もう少しで僕達は大精霊の制作に成功するんだ」

「マギア·カルリも、もう少しで完全体だ」

「やっとね」

「ああ、やっと天使に届くんだ」


少しずつ私の体がおかしくなっていく。けどそれにすら私は感情を抱く事は無かった。


「ふん...しょせんは化け物だったか。実験は失敗、アルクレア・フォーリエンの処分を命じる」

「レアト、残念ね。もう少しだったのに..」

「なにまだまだ時間はある、今度は素材にも気をつけないとね」


結局私を必要とする者は居なかった。私を者でなく、物のように扱った人間なら何百といた。

しかし、時が過ぎていくと、感情はやがて活動を始める。何百という年月をかけて...


「くそ!!あの小娘がまさか裏切るなんて!!あそこまで力を与えてやったのに!!」

「レアト!!落ち着いて」

「もう...おしまいなんだよ...。あは...あははははは」


私を作った人物が殺されてるのを見てた私は笑っていた。


「あれ?あなたはたしか...アルクレア!!そうアルクレアだよ」

「喋らないの?ふーん...壊れてるねあなた」

「じゃあ新しいおもちゃで遊ぼーっと」


何千、何万という死を体験した。しかし尽きることのない痛みに耐えていた私は初めて抵抗をする。


「あーあ...心臓が無くなっちゃった。今まで抵抗しないから面白かったのに...もう飽きた」

「そろそろルシル達と遊んでこよーっと」


それから世界に闇が訪れた。その中で私は痛みから解放され、感情の修復に長い年月をかけて始めて思ったのは...愛して欲しかった。


「私は...ただ愛して欲しかった。それだけで救われる。なのに...」


最初は優しい主人も私の出で立ちを知ると、皆私を軽蔑し、物のように扱った。

やがて私は人と関わるのをやめた。自分自身を深い深い闇の中へ閉じ込め寝ていた。

闇の中で存在した感情は憎しみだけだった。


「私を化け物扱いした奴らが憎い。おもちゃのように扱った、あいつが憎い。」

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」


深い闇はさらに深くなる。もう二度と出れないように押し込めた。


「私もアルクレアが好きだよ」


どうせまた私を裏切る。人間なんて信じては私が壊れてしまう。このシトラとかいう娘もまた私を苦しめる。


「本当に?」


そう、結局人間は嘘つきで自分勝手で、私を物のように扱う。ただ愛して欲しいのに...。誰も...


「私もシトラ様の事を愛しています...」


これも私の嘘。人間なんて愛せるはずがない。何度も辛い目に合わせたのに、自分の幸せを私に見せつける。

そんな人間が心底嫌いだ。


「でも...皆優しいんだから出てきなさい」


優しい?優しい人間が、私を苦しめるんだ。ほら...また嘘だ


「辛いよね」


当たり前だ、2000年近く絶望の淵で過ごしたのに辛くないはずはない。


「愛して欲しかったんだよね」


なんで....あなたが話しかけてくるんですか...


「シトラ様」

「うん。シトラだよ」

「どうせあなたも私に失望したのでしょう」


パチンッ!!

頬に痛みが走る。ほら...また私を痛めつける


「アルクレア、聞いて」

「嫌です。もう何も聞きたくない」

「前を向いて」

「もう前を向けません」

「前を向けないなら、私が前を向かせてあげる」

「どうやって」

「愛してあげる」

「また嘘ですか...。これ以上やめてください!!」


手が私を掴み、顔を上げさせた。

...!!


「ごめんね、アルクレア」


私よりも小さな体を抱き締める。

そして綺麗な赤い髪を触り優しく頭を撫でてあげた



「....!!」

「戻って来てよ。アルクレア」


ああ...これが、私に足りなかった“もの”だったんだ...。

始めての感覚に戸惑う。

やがて周りの景色は無くなっていく。

やがて跡形もなく砕けちって、現実へと私を引き戻す。

...


「シトラ...さ..ま」

「うん。シトラだよ」

「信じてもいいんですか。」

「当たり前だよ。私はあなたを愛してるって言ったでしょ」

「あなたが2000年間苦しんでいたなら、私がその倍愛してあげる」

「正確には私達がだよ」

「ナルル様...」

「いいんだよ。私を様呼びしなくて...もう寝ちゃったか」


目の前の女の子は安心したように眠っている。

ようやく示した私の思い、これで良かったのかな?


「これで正解だったんですよね」

「うん。よくやったね、シトラ」


そう言ってナルルさんは私の頭を撫でてくれる。


「ところで....なんでいきなりこんな所で?」

「これでも配慮したつもりだよ?ユグド達の前でやると、アルクレアが起きた時恥ずかしがるでしょ」

「それも...そうですね」

「ナルルさんさっきはすいませんでした」

「いいんだよ。何も言わずにあんなこと言ったら怒るのは普通だよ」

「アルクレアはなぜあんなことに?」

「シトラも見たとうりだよ。アルクレアの思い出したくない過去が天使界でのレアト・フォーリエンとの接触で綻びが生まれ、少しずつアルクレアを蝕んでいた。」

「とても過酷な人生でした」

「その分愛してあげるんだろう」


ニヤニヤしながら私に言う。やっぱりおじさんの師匠だけあって性格が良いとは言えないかな..


「はい。勿論です」

「うん...いい返事だね」


いきなりの出来事でビックリしたけど、この世界に来てちゃんと何かを出来た気がする。

ほんの30分ほどの出来事なのにとても長く感じた。

ちょっとやり過ぎた感が....

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