怪しい執事
友人に読みづらいと言われたので少し書き方を変えました
「3日間世話になったな。ありがとよルシル」
「もう皆怪我の方は大丈夫かな?」
「アリスのお陰でこの通りさ」
ぴょんぴょんとその場でジャンプするナルルさん。
「それは良かった。暇な時にはまた来るといい。私は待ってるよ」
「それとこの事はこの場に居る奴以外には言うなよ」
「勿論だよ。大切な情報源を潰すわけにはいかないからね」
「それじゃシトラもばいばい」
この3日間でルシルさんにはいっぱいお世話になった。この世界の最低限の文字を教えて貰ったり、私の能力についても助言を貰った。
ただ気がかりなのはあの戦い以来アルクレア話しかけて来なくなった。ルシルさんが言うには疲れてるだけだと言われた。でも多分違うと思う、アルクレアは怒ってるんだ...
「どうしたの?シトラ」
「あっ...いえなんでもないです。3日間ありがとうございました」
「うん。さてじゃあ門を開くよ」
ルシルさんが手をかざすと門が出現する。
門の中へと歩いていく。
ここの世界と私たちの世界では時間の流れが違うから、帰る時には三時間ほどしか経っていないらしい。けどギルドの皆は心配してる。早く帰らなきゃ
門の中へ入る。光が体を包み込み、私たちはギルドへと帰った
「お....い。おい!!大丈夫か!!」
「急に居なくなったから心配したぞ。三人とも三時間もどこに行ってたんだよ」
「いきなり居なくなったから心配したぞ」
「てめえは酒飲んで笑ってただけだろ」
「そうだったけか?まあ細かい事は気にすんなって」
「団長達も見つかんなかったしよぉ」
「うっわ酒くっさ」
「もう飲むのやめなよ」
「結局よぉ。団長達はどこに行ってたんだよ」
どうやって言えばいいのだろう?アリスさんには決して言わないようにと言われているから...
リトさんとお姉さんもどうすればいいのか迷っている。
「僕の為に来てもらったんだ」
突然食堂に入って来て言ったのはイースさんだった。
イースさんは話を合わせてと言うように目配せして話を続ける。
「ユグドにも前々から言われていたんだけど、賢者を辞める事にしたんだ」
「僕は帰ってきてもいいかな...?」
今度の言葉は偽りではなく、本当に申し訳なかったように言っていた。
きっと私では知らない事があるのだろう。前ローナさんに聞いた時も、曖昧な事だけであまり語ってはくれなかった。
だから私はあれ以来その事について聞こうとはしなかった。
ただイースさんはそのせいで自分自身を責めているのがよくわかった。おじさんとの口論では知りたかったと言っていた。
イースさんを責めている人はこのギルドには居ない。だから皆の反応はもう私は知っている。
「やっとですかぃ」
「帰ってきていいに決まってるじゃないですか」
「皆...」
「うちらいつもイースさんの賢者の話を聞いて心配してたんですよ」
「じゃあ復帰祝いになにかする?」
「なら明日パーティーだな」
「おっ...そりゃあ良いねえ」
「じゃあ明日はシトラの歓迎とイースさんの復帰祝いをしようか」
「じゃあさっさと準備を始めましょうかね」
皆一斉に立ち上がって準備を始める。
でも夜なのだから、もう少し静かにした方がいいと思うかな...
「良かったじゃないか、イース」
「ナルル...けど僕は」
「ユグドも言ってたけどイースを責めている人はここには誰も居ないんだ」
「そうですよ♪皆優しいのは兄様も知ってるでしょ」
「そうですよ。イースさん」
「皆さん私はちょっと用事があるので、すみません」
そう言って私は食堂から出る。
向かう先は休憩所だ。3日間アルクレア私に話しかけては来なかった。だから、ちゃんと謝らないと...
自分の自己満足の為に心配してくれたアルクレアの話を聞かずに魔法の制御を止めさせたのだから。
休憩所に着き私はアルクレアに語りかける。
「アルクレア」
名前を呼ぶと辺りに光の粒が現れる。
3日ぶりに私の前に出てきた。アルクレアはやっぱり怒っていた。
「アルクレア...やっぱり怒ってるよね」
「当たり前です。あんなに無茶な力を使い続けてシトラ様が使徒だからといって天使の力を酷使すれば心を失ってしまうのですよ」
「ごめんね。愛してるなんて言ってたのに結局アルクレアを苦しめてた...」
「私はもう...嫌なんです。失ってしまうのは...けど制御を止めてしまった。」
「私が無理やりやらせてしまったんだからアルクレアのせいじゃないよ」
「私はどうすればいい...?」
許してなんて自分勝手にもほどがあるけど、アルクレアと一緒に居たいという気持ちは変わっていない。だから私はアルクレアに許して貰いたい。
こんな私にアルクレアは何て言うのかな...
「それでは失礼します」
アルクレアは私の前に来て、頬っぺたにビンタをする。
ローナさんの時より力は弱いけど、ローナさんの時より痛く感じる。
それほどアルクレアは私の事を思っているのが伝わってくる。
アルクレアは言葉を続ける
「私は怒っています」
「うん...」
「ですがシトラ様を愛しています」
「う....ん」
自然と涙が出てくる。
私いつも泣いてばっかだな...
「だからシトラ様を許します」
「あ...りがと..う」
「そんなに泣かないでください。シトラ様」
「けど止めようとしても溢れてくるの..」
「アルクレアごめんね」
「大丈夫ですよシトラ様。ですからお願いです、もうこれ以上無茶をしないでください」
「うん、分かった」
その後10分ほどアルクレアは私の手を握っててくれた。
...
「どうした?シトラ目が赤いぞ、泣いてたのか?」
「いえ何でもありませんよ」
「そうかならいいんだけどよ」
ニヤニヤしながら言っている...
きっとあの嫌らしい能力で私の記憶を見たのだろう。
「で...何の用だ?」
「文字を教えて欲しいんです」
「文字?」
そう。天使界でルシルさんに最低限の文字は教えて貰ったけど、まだまだ分からないことが多い。算数でいうとまだやっとかけ算を解けるようになった位だ。
この世界で生きていく以上文字を覚えるのは必ず必要なことだから、早く覚えてしまいたい。
「頼ってくれるのは嬉しいけどよ。そういうのは師匠やイースに頼んでくれ」
「何でですか?」
「俺やリトは剣術とかを教えるのは得意だけど、文字とか魔法関係はめんどいからやんねえんだよ。その点イースは魔法のこととかは教えるのうまいし、師匠は全般的になんでも知ってる。だからイースか師匠に頼め」
「ナルルさんてそんなに凄いんですか?」
「師匠はイースに魔法を教え、俺やリトに剣術を覚えさせてくれたんだぜ」
ナルルさんてそんなに凄い人だったんだ。マギア・カルリ戦ではルシルさん達に魔力を供給してたから戦えなかっただけで、本当はこのギルドで一番強いのかな?
「まあそういうこった」
「そうですか。ありがとうございました」
そう言って二人を探しに行く。
...
【食堂】
「シトラちゃーん!!」
食堂に入るのと同時にローナさんに呼ばれた。
「お姉さん、どうかしました?」
「ほら天使界に行ってる間にネムコンガイの飴が切れちゃったでしょ。だから新しく作ったの♪」
「ありがとうございます。ところでイースさんかナルルさんがどこにいるか知りませんか?」
「兄様は資料をまとめているから、今は無理だけど、ナルルさんなら部屋に戻ってるよ~」
「お姉さんありがとう」
「どういたしまして♪」
ローナさんに場所を聞いて、食堂を出ようとした時にコックの人に呼ばれて振り向く。
「シトラちゃん、パーティーででだしてほしい料理ってあるかしら?」
「料理です....か」
後ろを振り向いて私は硬直する。
なぜならそこに居たのは俗にいう、オカマだったからだ...
まるで未知の生物に会ったような感覚に陥る。
そして私は数秒考えた後一つの結論にたどり着く。
私...この人苦手だ。なぜか見てるだけで鳥肌が立ち、失礼だけど吐きそうになる...
勇気を振り絞って回答する
「ミーア·ポルネを、お...お願いします」
「ミーア・ポルネね。楽しみにしててねシトラちゃん」
言い終わると早足で食堂を出る。
食堂を出るとアルクレアが心配してるかのように話しかけて来た。
「シトラ様どうかいたしましたか?」
「ちょっとびっくりしただけ大丈夫だよ」
「先程の料理長に何か感じたのですか」
「なんか鳥肌が立って、見られてるだけで威圧感を感じたの」
「やはりそうでしたか。料理長は半獣ですよ」
「はん...じゅう?」
「はい。料理長は獣人と人間のハーフで、本人はそのことをコンプレックスに思ってます。一見怖そうに見えますがとても優しくて、料理も美味しいです」
「....?食べたことがあるの?」
「はい。アミナ様が前に一度風邪を引いた時に付きっきりで看病してくれた時に。半獣だけあって敏感なようで私に気付き話しかけてきてくれました」
「そうなんだ。じゃあ悪いことしちゃったかな...」
「優しい方なので、心配はしなくても大丈夫ですよ」
今後こういうことが無いようにやっぱり勉強しないと...
そして若干迷いながらも部屋に着いた。
【部屋】
「ナルルさんお願いがあります」
「どうしたの?」
「文字などを教えてください」
「文字?なん...。ああ...そうだったね。シトラは別の空間から来たんだったね」
「はい。他にもこの世界の事も知りたいんです」
「うーん...出来れば教えてあげたいんだけど、10日後には屋敷に帰らないといけないんだ」
「そうですか...」
じゃあイースさんが仕事を終わるまで待ってからにしよう。その間は魔法の練習や剣術の練習をしようかな
おじさんに聞いた話だとナルルさんは世界各地に行って、伝承を調べたりや遺跡などに行き昔の事について調べてるらしい。
「私と一緒に屋敷に来れば教えれるんだけど...どうする?」
ナルルさんと一緒に屋敷に帰る...
でもおじさんやイースさんが止めるかな...
「少し考えていいですか?」
「その方がいいよ。それにもう夜も遅い、ローナは明日の準備だし、もう寝ようか」
「でも...お姉さんと一緒に寝ないと...夢を見るんです」
「夢?」
ルシルさんによると、どうやら私の意識が薄まると終末の天使が干渉しやすくなるらしい。だからマギア・カルリ戦でレアトに魔法をかけられ、意識がぼんやりとしたから、ニアラストラスという天使が私の中に入って来たらしい。
あの時見た夢は終末の天使の記憶で下手をしたら体を乗っ取られてしまうらしい。
だからルシルさんには気を抜かないようにと言われた。
「ローナは癒しの精霊と契約してるから天使の介入を拒むんだったね」
「はい。だからお姉さんが戻って来るまで待ってます」
「不便だね...。そういえば...」
ナルルさんは立ち上がりバックの中から薬のようなものを取り出す
「これを使うと良いよ」
「これは...?」
「じいが作った物で、前に屋敷に帰った時必要になる時がきっと来るから持っておくように言われたんだ」
「必要になる時って...その人はどういう方なんですか?」
「私の執事だよ。ただなにか起こる時にいろいろ助言をくれたりするんだ」
「占いですか?」
「多分ね。でもじいがなにかしら助言をくれると決まって不吉な事が起こってるんだよ」
「不思議な人ですね」
「そうだね」
「まあ騙されたと思って飲んで寝てみてよ」
「はあ...」
果たして本当に大丈夫なのだろうか?
そう思いつつも薬を飲む。
「どうかな?」
「特に何か変わったとかは感じません」
「さて...じゃあ私は寝るよ」
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
電気が消えて静寂が訪れる。
本当に夢を見ないだろうか...。心配でなかなか寝付けない
「しょうがないね」
隣で寝ていたナルルさんが私の事を抱き締めてくれた。
「これで安心できるかな?」
「ありがとう...ございます」
だんだん眠くなってくる...
「おやすみシトラ」
「おやすみ...なさ..い」
眠りにつく。
しかしナルルさんが言ったような事にはならなかった。
そう...ここは夢の中だ。目の前には大きな屋敷がある。そして客人を招くように扉が開く
これも天使の記憶なのだろうか?
「外に居ては危険ですよ。どうぞお入りください」
中からおじいさんが出てきて私に入りなさいと言う。
「お嬢様にお薬を渡されたのでしょう?」
「なんでそれを?」
「私が作った物ですから」
じゃあこの人ナルルさんの言っていた、じいなのかな?
悪そうな人には見えないけどやっぱり怖いな..
「いきなり信用しろと言っても無理でしょう、ですが大丈夫ですよ」
「でも...」
「なら精霊を出すと良いですよ。いざとなったら守ってくれるでしょう」
「なんでもお見通しなんですね」
「この話し合いを設けたのは私ですから」
「シトラ様」
「うん..お願い」
「よろしいでしょうか?ではお入り下さい」
アルクレアを呼び出し、中へと入る。
案内されて着いたのは小さな部屋だった。
「お座りください」
席に座り警戒しつつ話をする。
「あなたは?」
「ナルルお嬢様の執事、イニアスと申します。以後お見知りおきを」
「なんで私をここに?」
「少しお話をしたいと思いまして、お嬢様に薬をお渡しました」
「そうですか...」
なにか企んでいるようには見えない...けど普通の執事ではないのだろう。
一体私になにを聞きたいのだろう。
「まずは一つご警告を致しましょう」
「警告ですか?」
「今そのまま町に居続けるのはあまりおすすめしません」
「なにか知ってるんですか」
「詳しい事はお話しできませんが、ただそのまま居続けると厄が訪れますよ」
「妙に自信がありますね、イニアス様」
「いえいえ。私はご警告するだけです」
「ならギルドの皆も町に居たら危険じゃないんですか?」
「いえ、あなた方が町から出ればひとまず町に危険はありませんよ」
「私たちが元凶なんですか」
「ええそうです。終末の使徒に大精霊使い、十二分に襲われる理由はありますよ」
「いつシトラ様が使徒だと言いました」
「そんなに警戒なされずに...。大体の事は存じております」
この人は本当に何者なのだろう。初対面でアルクレアに気付き、使徒であることを知っている。あまりにも詳しすぎる。
ナルルさんに今まで助言をして助けてきたのだから信用したほうがいいのだろうけど..
「アルクレア、どう思う?」
「私たちに害を及ぼすつもりはないようですが、危険ですね」
「まあそれが当然のご反応ですが、信用して頂きたい」
「時間を下さい」
「残念ながら、予約は今日だけなのでここでお決め下さい」
どうしよう...。町に居たら皆が危険になる...でも町を離れたくない
それにこの人を本当に信用していいのかな..
「もうそろそろお時間です。お答えを」
「....」
「シトラ様、私は町を出た方がいいと思います。ナルル様とこの方が何かを企んでいるとはあまり思いたくありません」
確かにナルルさんを信じたい、でもこの人がもし騙している場合アルクレアにまで被害が及ぶ。それだけは何としても避けたい....けど町に居てもアルクレアだけでなくギルド皆にまで危険が及ぶ。
「分かりました。イニアスさんを信じます」
「感謝致します。では10日後ナルルお嬢様と一緒に屋敷にお越しください」
「分かりました。ナルルさんと一緒に来ます」
「ではこの事は他言無用でお願い致します」
「シトラ様何かあったら私がお守りするので、安心してください」
「いえいえ、屋敷に来ていただいたらなにも起こりませんよ」
「本当にですか」
「ご信用ください」
「そろそろ朝ですので、ここまでです」
「信じていいんですよね」
「勿論ですとも」
夢の中での話し合いが終わり、意識が戻る...
そろそろ一章終わりかな...




