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企画参加作品(ホラー抜き)

月を追って

作者: keikato

 満月の夜。

 野原のてっぺんに、たくさんのウサギたちが集まっていました。大きな輪になり、まん丸な月を見ながらおしゃべりをしています。

 そんなとき、一羽の若いウサギが立ち上がって叫びました。

「オレは月に行くぞ! 月で暮らすんだ」

 みんな、そろっておどろきました。

 これまでも――。

 月に行くと言い残し、多くのウサギが野原をあとにしていました。けれど一羽として、野原に帰ってきた者はいなかったのです。

「いっしょに行ってみよう、そう思う者は手をあげてくれ」

 若者ウサギの呼びかけに、ウサギたちの輪がざわつき始めました。

 となりの者と話をする者。

 じっと下を向く者。

 天をあおぐ者。

 行ってみたいのですが、空に浮かぶ月に着けるかどうかわかりません。家族や友達と別れてまで、月に行く決心がすぐにはつかなかったのです。

「よし、月に着いたらオレが手をふろう。それが見えたら、そのときみんなも来ればいい」

 そう言い残し……。

 若者ウサギは野原をあとにしました。


 山のいただきに向かって、若者ウサギはひたすら進みました。

 そこに月があったからです。

 山のいただきに着いたときでした。

 なぜか月は、ひとつ向こうの山のいただきにありました。

 若者ウサギは月を追って、次の山のいただきをめざして歩き続けました。ところが月は、やはり次の山のいただきにありました。

 こうして月を追ううちに、やがて夜は明け、月は山の向こうにかくれてしまいました。

 次の日も。

 その次の日も。

 そのまた次の日も。

 若者ウサギは月を追い続けました。


 季節がいくつもめぐりました。

 ある満月の夜。

 一羽の若いウサギが、またしても野原をあとにしました。

 月に行くと言い残し……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「月(と)のお話し企画」から拝読させていただきました。 それでも若者は月を追うのですね。 「そうか。頑張れ」としか言えない私がいます。
[一言] 武頼庵さまの月の企画から参りました。 夢を追って旅立つ若者達ですね。 月に辿り着いたもの、その途中で別の生活を見つけたもの、様々ありそうですが、なんとなく淋しい感じがしました。 読ませていた…
[良い点] とっても良いお話だと思いました。 「月に行きたい」 という願いはアポロ11号で達成しました。 どんなお話であろうが、現実的でなかろうか、そういう事は重要でないと思いました。 興味深く拝読…
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