第5話、「信じるものの幸福。」
大男達が帰ったあともなき続け、そのまま寝てしまった彼女を放っておくことなどできず、僕は彼女の家に連れて帰り毛布をかけてベットで眠らさせていた。
彼女が起きたらどうなるのだろう。
僕は、僕はどうしてあのときなにも彼女に言うことができなかったのだろう。
これ以上一人で考えているとネガティブになりそうだったので僕は花の世話をすることにした。
最後の一株となったショウブを見て僕は君のように強くなれたらな。なんて思ったりした。
そんなときだった僕に声をかける人がいたのは。
「はじめまして。嶺さん。」
そう僕に声をかけた人は彼女と同じ燃えるような赤毛を持ちしかし彼女とは違う澄んだ黄色い瞳を持つ女性だった。年齢は不明だ。僕と同じくらいにも見えるし20代後半にも見える。
「はじめまして。えーと。」
知ってる人にこんな特徴的な人がいたら忘れる訳がない。
なので初対面のはずだ。
しかし女性は僕の事を知っている。
だけどはじめましての挨拶。
訳がわからない。
「私はアヤメ。あの子の母よ。杏菜だったよね。私の代わりに名前をつけてくれてありがとう。」
アヤメさんは、杏菜のお母さんらしい。
なら、どうして杏菜と一緒にいないのかということが気になった。
もう知らないことがあるのは嫌なんだ。
「どうしてアヤメさんは杏菜と一緒にいないのですか? 」
「うーんと、私ねもう死んでるの。今はそのショウブに乗り移っているからこうやって話すこともできるけど色々と制限があってね。」
「制限ですか。」
「そう、制限。だから聞かないで。」
「はい。」
僕は素直にうなずく。
それが精一杯だった。
「ねぇ、私の話を聞いてくれる? 」
それはありがたいと、思う。
だって僕はあなたに色々聞きたいことがあったから。
いや、この場合はできたという方が正しいのか。
「そうねえ、じゃあ私の名前についてから。正直どうでもいいと思っているだろうけどね。私の名前はアヤメ、漢字にするとショウブと同じね。だからなのかな私がこのはなに乗り移ることになったのは。まあ、ショウブの話しよりアヤメね。アヤメの花言葉知ってる?」
いきなりの質問に戸惑いながらも僕は答える。
「メッセージ、愛、あなたを大切にします。
でしたっけ。」
「他にも、私は燃えている、消息、吉報。なんてのがあるけど私が言いたかったのはこちらじゃない。あまり知られてないけれど…まあ、一部の人は知ってるけど『信じるものの幸福』なんてのもあるのよ。」
そこで言葉を切り思い出すように遠くを見るアヤメさん。
この時アヤメが
(こんな花言葉があるって知ったのは○パイ○ルっていう漫画の影響なのよね。ス○イ○ルは、アニメは途中までしか見てないけど漫画はよかったね健気なヒロインが実は兄の手先だったとか、主人公は兄のクローンだったとか色々よかったよね。ああ後で読みましょう。)
なんて考えていたのは誰も知らないことだ。
「信じるものの幸福か、」
と、一人浸っていた嶺には知るよしもないし、そもそも彼はその漫画を知らなかったのでわかったとしても理解はできなかったであろうが。
アヤメさん、意外とオタクなのかも。