プロローグ「私のためにお体を大切に。」
赤、青、紫、黄、緑、橙、桃。
色とりどりの花が咲く、花畑で七歳ぐらいの一人の少女が、花飾りを作っていた。
燃えるような赤毛に海のように澄んだ青い瞳。
相反する二つの色。
それもまた少女の魅力を引き立てる。
少女は花飾りを作り終えると、ぱっ、と立ち上がり走り出す。
その先は薔薇の木に囲まれた、机と椅子がおいてあるテラスのような場所。
そこには少女と同じ燃えるような赤毛をもち、しかし瞳の色は月のように黄色い瞳。
健康には見えない白すぎる肌。
20代前半のように見える彼女。
そんな彼女に抱きついた少女は
「おかあさま。花飾り作ったの。おかあさまにあげる。」
とツツジの花で作っていた花飾りを手渡す。
「あらあら、ありがとう。でもこれはあなたのものじゃないの? 」
と微笑みながら彼女は尋ねる。
「大丈夫。私のぶんは、後で作るから。」
満面の笑みで答える。
そして少女は彼女から離れると、
「作って来るね。」
と、花畑の中に戻って行った。
ちなみに少女が、使ったツツジは西洋ツツジで、花言葉は
『私のためにお体を大切に。』
少女は西洋ツツジにそんな花言葉があることを知らない。
けれど彼女は、すっきりしたような顔で、
「あの子のためにもあともう少し頑張らないとね。」
と言って少女の向かった方に歩き出していった。