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死ねばいいのに。
そう思った。
昨日から運勢は最悪の模様である。三十六社目の不採用通知を見事に受け取った私は就活浪人生として、学生時代から続けているファストフード店でフリーターをしている。フリーター。どこが自由なのかさっぱり分からないこの名称に苛立ちを感じながら、日々、笑顔を振り撒いている。学生だった三年前、マネージャーという地位に昇進したが、時間給は三十円しか上がらない割に、仕事量は増え、責任は重くのしかかる。なぜ、バイトの身で他人のミスの責任を負わなければならない。なぜ、バイトの身で発注までこなさなければならない。なぜ、バイトの身で店の売り上げを真面目に心配しなければならない。時間給分だけ働き、へらへらしてればいいのがアルバイトというものではなかっただろうか。損得勘定で考えると間違いなく、損である。しかも、就職に有利だからという理由のみで店長の打診を受け、この地位に就いたというのに、今のところ、全く役に立っていないわけである。
昨夜、企業の事務の不採用通知を受け取り、自暴自棄な気分になり、缶チューハイを四つあけた。蒸し暑い台所でヴーンと唸り声をあげる冷蔵庫にもたれかかり、一口、一口、アルコールを含む液体は喉を過ぎていった。独特の浮遊感。ゆらゆら。ゆらゆら。明日も暑くなるということが分かりきっている。それでもアルバイトに行かなければならないという目の前の現実にうんざりする。どうせ社会人になっても、毎日会社に出勤することに絶望しなければならない。そう考えるとこの立場はまだましなのか。しかし、何の保障もない身分であるということは絶望に彩りを添える。赤、青、緑。酔っているとくすんだ色であるはずの絶望が明るくなる。アルコールは素晴らしい。私はそのまま、台所の床に倒れ伏した。 そして、朝になり、起きてきた母親に怒鳴られながら、二日酔いの頭を抱える。さあ、今日も働かなければならない。