表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結び目  作者: 狩野真奈美
1/4

1



死ねばいいのに。

そう思った。

昨日から運勢は最悪の模様である。三十六社目の不採用通知を見事に受け取った私は就活浪人生として、学生時代から続けているファストフード店でフリーターをしている。フリーター。どこが自由なのかさっぱり分からないこの名称に苛立ちを感じながら、日々、笑顔を振り撒いている。学生だった三年前、マネージャーという地位に昇進したが、時間給は三十円しか上がらない割に、仕事量は増え、責任は重くのしかかる。なぜ、バイトの身で他人のミスの責任を負わなければならない。なぜ、バイトの身で発注までこなさなければならない。なぜ、バイトの身で店の売り上げを真面目に心配しなければならない。時間給分だけ働き、へらへらしてればいいのがアルバイトというものではなかっただろうか。損得勘定で考えると間違いなく、損である。しかも、就職に有利だからという理由のみで店長の打診を受け、この地位に就いたというのに、今のところ、全く役に立っていないわけである。

昨夜、企業の事務の不採用通知を受け取り、自暴自棄な気分になり、缶チューハイを四つあけた。蒸し暑い台所でヴーンと唸り声をあげる冷蔵庫にもたれかかり、一口、一口、アルコールを含む液体は喉を過ぎていった。独特の浮遊感。ゆらゆら。ゆらゆら。明日も暑くなるということが分かりきっている。それでもアルバイトに行かなければならないという目の前の現実にうんざりする。どうせ社会人になっても、毎日会社に出勤することに絶望しなければならない。そう考えるとこの立場はまだましなのか。しかし、何の保障もない身分であるということは絶望に彩りを添える。赤、青、緑。酔っているとくすんだ色であるはずの絶望が明るくなる。アルコールは素晴らしい。私はそのまま、台所の床に倒れ伏した。 そして、朝になり、起きてきた母親に怒鳴られながら、二日酔いの頭を抱える。さあ、今日も働かなければならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ