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どうも、チートモンスターはじめました。

作者: 鯖田邦吉

   1



 高校生の身空で1人暮らしをしているといえばクラスメート達からは恵まれた環境のように言われるが、実際は結構大変だ。

 そりゃコンビニや安価な外食チェーン店、コインランドリーがなかった時代に比べれば楽になっただろうが、そんな大昔と比較されたって面倒くさいものは面倒くさい。『大砲で吹き飛ばされるのに比べたら拳銃で撃たれるくらい平気だよね』とか言われても困る。どっちも死ぬんだよ。

 何より俺、千田本(ちだもと)祐司(ゆうじ)の場合には両親がいない。自分の食い扶持から家賃光熱費に至るまで自分で――行政の支援も受けてはいるが――なんとかしなくてはならないのだ。

 おっと、両親がいないといっても死んだわけではない。いや、もしかしたらもう死んでいるかも知れないが、距離的な意味で俺の前からいなくなったのだ。何処で何をしているのか、もはや俺には知る術がない。

 父はいわゆる転勤族で、俺が物心つく前から俺達家族はだいたい半年、最短で2ヶ月くらいのスパンで住居を転々としていた。

 そんな環境で友人など作れるわけがない。

 だが他の御同輩は兎も角、俺自身にとってそれが辛かったかといえば、答えはノーだ。何故なら友達がいないというのは俺にとって地球に空気や水が存在するのと同じくらい当たり前のことで、たとえ周囲の子供達が仲良く遊んでいるのを見てもうらやんだり妬んだりする前に「よそはよそ、うちはうち」で割り切ってしまう、そんなガキだったからだ。

 そんなことよりもずっと気がかりなことがあった。

 引っ越す度に、俺達家族の住み家はどんどん狭く、日当たりの悪いものになっていった。引っ越しの際もいつしか夜間人目をはばかるようにして出て行くことが多くなった。

 父親の金遣いの良さは変わらなかったので長い間気付かなかったが、ある日そういえば夕食のおかずが最近ずっと質素だな、と感じて、鈍い俺はそこでようやく我が家の抱える問題に気付いた。

 父はいつの間にか仕事を辞めていた。そのくせ物欲を抑えることが出来ず、手当たり次第に借金を繰り返していた。母はそんな父に文句を言いつつも、自分がパートに出るという発想はなかったらしい。もう少し我慢すれば俺が中学を出て働けるようになるからそれまでパチンコで勝てば問題ない、というのが彼女の人生設計だった。

 最終的に、我が家は一家離散となった。

 福祉が充実している、という点だけで俺は藍森(あいもり)町に引っ越した。それから3年、俺はその街から一歩も出ることなく過ごしている。

 引っ越してばかりの頃は面倒くさいから定住したいと思っていたが、こうなると逆に早くどこか別の場所に移り住みたい、という気が強くしてきている。

 47歳になる前に47都道府県にそれぞれ1度は暮らしてみる、というのが現在の俺の夢である。




   2



「お兄ちゃん、おはよう! 朝だよ起きて、起きないと……って、なんでお姉ちゃんがお兄ちゃんのベッドで一緒に寝てるの!?」

「ん、どうしたの春菜(はるな)……。あ、いけないわ、起こしに来たつもりがついうっかり」

「『ついうっかり』じゃない! 早く離れて! もういい、わたしもお兄ちゃんと一緒に寝る!」


 爽やかな朝、閑静な住宅街に佇む廣田(ひろた)家に女性達の元気な声が響き渡る。

 それを俺は門の外で聞かされていた。

 台詞だけを聞いているとこの一家の性の乱れが心配になってしまうが、この家族と親しい俺は知っている。中学まで海外にいたとかでやたらスキンシップが激しいだけであると。淫猥な要素は全くない、はずである。


「いつまで寝てるの秋弘(あきひろ)ちゃん、祐司君もう来てるのよ。夏美(なつみ)も起こしに行ったならちゃんと起こさないと駄目でしょう、どうして一緒に寝ているのよ?」


 一家の母である冬子(とうこ)さんが叱るが、元々のんびりしている人なので悲しいかな怖くはない。普段は母親に代わって恐怖と暴力で一家を締め付けている長姉・夏美さんも朝はどうしようもないダメ女である。そういうわけで俺の友人・廣田秋弘の寝坊癖は誰にも更正されず、今日も秋弘の家についてから奴が出てくるまでたっぷり10分は待たされた。


「おはよう、千田本(チダ)

「お早くねえよいい加減どうにかしろ」


 ぼさぼさの髪に眠そうな目をした我が友人が靴を左右逆に履いて出てきた。随分と人を待たせてくれた割に全く悪びれる様子がない。こんな奴と一応友人付き合いをやっている自分はどうかしているんじゃないかと思う。友人のサンプルが少なすぎて、いったいどれだけ振り回されたら縁を切っても薄情ではないのかわからない。


「あ、待って秋弘ちゃん」


 冬子さんが包みを持って出てきた。中身はおにぎりだろう。秋弘が登校中に食べる、朝食だ。

 

「それからほら、行ってきますのチュウ」

「やめろって、オレもう高校生なんだぞ」


 仲睦まじい(過ぎる)親子を見ながら、俺は秋弘にも人並みの羞恥心があったんだなと感心していた。


「ほら、朝飯持っててやるから靴を履き直せ。さっさといかねえと。姫岸(ひめぎし)さん達待ってるぞ」

「サンキュ、流石は親友。今朝も待たせちゃったし、そのおにぎり1つ食っていいよ」


 それで寝坊が許されると思ってもらわれては困るのだが、自分の懐を痛めずにカロリーを摂取する機会を逃すわけにはいかず、俺はやむなく取引に応じた。いつの世も持たざる者は常に弱い。

 おにぎりを貪りながら俺達の通う藍森学園に向かう。食い終わった頃、途中にある公園で2人の女子生徒と合流した。


「おはよう、秋弘ちゃん、千田本君」

「アキ、チダ、おっす」


 さらりとした髪を肩まで伸ばした、儚げな美貌の天使のように清楚な美少女が俺達を待っていた。同じクラスの姫岸ゆかりさんだ。もう1人は隣のクラスの長浜(ながはま)静穂(しずほ)。こっちの方はどうでもいい。名前に「静」が入っているのにやかましいのが特徴だ――以上。

 2人とも、秋弘の幼馴染みである。

 毎朝こうして俺達は待ち合わせて一緒に登校していた。なにも高校生にもなって集団登校することはないし、秋弘を待つくらいなら先に行った方が時間を有意義に使えると思うのだが、「え? みんなとお喋りしながら登校した方が楽しいよ?」と天使に言われては、3人の輪の中に後から入った身としてはとやかく言いづらいものがある。


「バカが待たせてゴメンね、姫岸さん」

「ううん、今来たところ」


 さりげなく気を使ってくれる。なんて優しい娘さんなのだろう。人間もまだ捨てたものじゃない。


「後で2人とも、あたし達にジュースくらい奢りなさいよ」


 そう言ったのは静穂だ。苦学生から搾取しようだなんて、末法の世とはこのことか。というか悪いのは秋弘だけだ、なんで俺まで。2人とも死ねばいいのに。


 今日は幸い走らなくても済みそうだった。俺達は歩き出す。もちろん、道いっぱい横一列に広がるような不作法はしない。秋弘と姫岸さん、俺と長浜で前後2列に分かれる。それでも邪魔かも知れないが。

 

「あのね」と姫岸さん。「次の日曜、皆で水族館に行かない?」


 行くに決まってるだろうが、と叫びだしたい気分だった。俺の脳はアルバイトを休む理由を高速で組み立て始める。ええい、なんならもう辞めちまうか。

 と、脇腹をつつかれた。長浜がこちらを睨んでいる。


「悪いけど、俺その日アルバイトでさ。どうしても抜けられないんだ」


 俺は嘘をついた。前半部分は真実だが、後半は閻魔に脊髄ごと舌を引っこ抜かれそうな大嘘だ。俺の魂は永遠に地獄の炎に灼かれるに違いない。

「あたしも」と長浜。「お母さんに用事頼まれちゃってさ」

「そうなんだ……」

 姫岸さんは肩を落とした。

「しょうがねえな、じゃあ、また今度にしようぜ」

 秋弘がそんなことを言ったので、俺はその背中を蹴り飛ばしたい衝動に襲われた。長浜もきっと同じ気持ちだろう。


 姫岸さんは秋弘に想いを寄せている。それも思春期に入ってからではない、幼い時からずっとそうなのだという。


――あんたがゆかりに気があるのは知ってるけど。


 いつぞやの放課後、俺を体育館裏に呼び出した長浜が言った。


――あの子はずっと前からアキのことが好きだったんだから、告白するなら待ってあげて欲しい。


 いつも何処か人生を舐めている感じのする彼女に真剣な表情で頼まれては、俺は首を縦に振るしかなかった。

 だけどいいのか、長浜? おまえだって秋弘が好きなんだろう?


「おまえたち! もうすぐ門を閉めるぞ!」


 校門の前に立つ大柄な女生徒がこっちを見て怒鳴りつけてきた。我が校の生徒会長だ。御苦労なことに、毎朝こうやって校門に立って生徒達の服装のチェックを行っている。その手には竹刀。なにそれこわい。昭和か。

 

「ちぃーっす、生徒会長」


 秋弘は片手を上げて挨拶。誰にでも物怖じせず話しかけられるのがコイツの数少ない長所だ。通りすがりのヤクザとすら談笑していたのを見た時は単に脳神経が配線ミス起こしてるんじゃねえのかコイツと薄ら寒ささえ覚えたものだ。


「ば、馬鹿者、目上に対する挨拶はきちんとせんか」


 生徒会長は赤くなって背を向けてしまった。どうやら彼女も秋弘に気があるらしい。新たなライバル出現に固まる姫岸さんを長浜が必死に励ましていた。

 野良犬が、そんな俺達を冷ややかに一瞥し通り過ぎていった。


 そう、物怖じしないのとやたら異性にもてるのが秋弘の長所の全てだ。初対面で惚れられることはないし、秋弘から口説くこともないが、コイツとしばらく関わった女はみんな秋弘に異性としての好意を向けるようになる。クラスの委員長、上級生下級生、果ては教師に至るまで。

 うらやましい? いや、別に。前にも言ったが俺は友達がいなくて寂しいと思ったことのない人間だ。それと同じで恋人さえ必要としていない。たとえ世界最後の人類になっても精神的には過不足なく生きていける種類の男なのだ。マイノリティーだろうが、そんな人間がいないわけじゃない。だから、俺が姫岸さんに抱いている感情は、世間一般の人が道端の花や美術館に飾られた絵画や彫刻を見て「あら、綺麗」って言うのと大差なくて、俺が彼女に惚れているという長浜の考えは的外れなんだ。




 授業中、スマホに着信があった。低偏差値の学校じゃあるまいし授業中にメールしてくるバカは長浜か秋弘のどっちかだろうな、と思ったら、なんと姫岸さんだった。


『秋弘ちゃんと2人で★水族館デート★決定シマシタ\(^0^)/!!!』


 女の子らしい絵文字でゴテゴテに飾り付けられたメール。3秒後に「今のは間違いでした嘘です忘れてください」という無装飾のメールが届く。どうやら俺と長浜を間違えたらしい。

 秋弘が生徒会長までたらし込んだのを見て、流石に奥手な姫岸さんも勇気を振り絞る決心をしたらしかった。

 迷わず「おめでとう」と打って返した。




 そして日曜日、俺は友を1人喪うことになる。

 

 

 

   3



 藍森町は社会保障制度が充実した街である。俺のような身寄りのない子供が施設に預けられることもなく1人で自活していけるのはそのおかげだ。

 だが見方を変えれば、この街は社会保障制度が充実してでもいなければ住みたくない街でもあった。

 

 西暦2030年、人類は新たな生物種と遭遇する。

 嫌がらせのように長い学術的な正式名称は聞きたくないだろう。人々はそれを単純にモンスターと呼んでいる。それまでの生物学に喧嘩を売るような、多種多様な生態を有し、軽銃弾を弾くほどの外皮を持ち、火を吐き紫電を発するという、まさに怪物と呼ぶに相応しい存在だ。最初に発見されたのはモンゴルだったが、今では世界全土に分布している。その出自は今なお不明。何処かの国が開発した生物兵器かもしれないし、別の惑星からやってきたのかもしれない。

 とにかく早急な対処が必要だった。幸いにもそれから数年のうちに国連はモンスター専門の対策機関を設立した。


 その名は『ピースシールド』。その生物的特性によって従来の兵器が通用しづらいモンスターに対し有効な武器を開発し、それを運用する兵士を擁する軍事組織で、国民の強い要望により日本にもその支部が設けられた。その場所とは、日本国内でも有数のモンスターの生息地――藍森町だった。

 藍森町は四方を森と山に囲まれている。ひとたび自然の中に一歩足を踏み入れるとそこは凶暴なモンスターがひしめき合う魔境であった。

 何故奴らが藍森町周辺を好んで集まってきたかはわからないが、日本政府から見捨てられかけていた街の人々にとってピースシールドの来訪は救いとなった。

 だからこそ、この街では町議会や警察よりピースシールドの発言権が強い。さながらピースシールドにより統治される独立国家の様相をみせている。


 慢性的な人材不足に悩まされるピースシールドは、入隊と引き替えに様々な社会保障を住人に与えることを約束した。

 それに飛びついたのが俺であり、秋弘達だ。姫岸さんも長浜も、藍森学園に通う生徒達はみんな、卒業後数年間ピースシールドの隊員となることを条件に学費を免除されていた。




 若干汗ばむほどの春の陽気の中、学園の卒業式を兼ねたピースシールドの入隊式は無事閉式した。俺達卒業生はぞろぞろと会場から掃き出されていった。呑気に伸びをしているのは後方支援スタッフ、思い詰めた、しかしどこか誇らしげな表情で歩くのは戦闘部隊に配属された者だろう。

 俺といえば、いつもの仏頂面だ。

 肩を叩かれる。長浜が後ろに立っていた。姫岸さんも一緒だ。彼女達が話しかけてくるのはいったい何ヶ月ぶりだろうか。


「ちょっと付き合ってくれる?」


 断るわけがない。

 俺達は人のいないベンチに陣取った。長浜が自販機で購入した缶コーヒーを全員に手渡す。エスプレッソ・プレジデント。秋弘のお気に入りだった銘柄だ。


「何に乾杯する? 俺達の輝かしい未来? 去りゆく学舎(まなびや)と過ぎ去りし思い出の日々に? それとも」


――秋弘の冥福を祈って、か?


「秋弘ちゃんと卒業したかったなぁ……」


 姫岸さんがぽつりと呟いた。すぐにはっとしたように口を押さえる。


「ごめん、わたし……」

「……いいよ、今日くらい」


 長浜が姫岸さんの頭を撫でて言った。胸がちくりと痛む。いったいどうして俺という奴は開口一番あんなことを言ったのか。場が盛り上がるとでも思ったのか?

 姫岸さんとの水族館デート当日の朝、秋弘はモンスターに襲われて死んだ。死体も残らなかった。あれから1年近く経つのに、結局みんな秋弘のことを吹っ切れていない。俺達だけではない。冬子さん達や、生徒会長もだ。

 あの馬鹿野郎、いらない時だけ早起きしやがって。


「ねえあんた、配属は?」


 俺は卒業証書と一緒に支給されたばかりの隊員証を取り出した。新品キラキラのピースシールド隊員証が陽光を反射する。そこに記された『経理部』の文字を見て、長浜は何ともいえない顔をした。


「……あんたが経理って」

「やかましい。おまえこそどうなんだ」


 ひったくるように長浜の隊員証を奪う。


「――え、おまえ事務員なの? おまえが事務員? ピースシールドの人事部、オーバーワークで脳味噌融けてたんじゃねえの?」

「うるさい! あんたなんかきっと不正取引とか裏金の罪を押しつける要員としての抜擢に決まってるんだから、せいぜい今のうちに笑っておきなさいよ!」


 俺と長浜の視線は姫岸さんに向かう。


「わ、わたしは医療班だった……」


 そのチョイスに関しては、俺と長浜に異論はなかった。


「……結局あたし達、全員第1志望から外れちゃったのね」

「経理なんて志望すらしてねえよ」

「違約金払うのが嫌なら頑張ってお勉強するのね」


 秋弘が死んだことで2人と会話する機会は減ってしまったが、最後の会話では3人とも戦闘部隊を志願すると言っていたはずだ。だが結果は御覧の有様だった。

 ピースシールドの人事に個人の希望や感傷は優先されない。各人の能力と適性が全てだ。単に勤める分にはいいだろう。意欲はあれど合わない仕事で怒鳴られながら働くより、やる気はなくとも合っている仕事の方が長続きするんじゃないだろうか。

 だけど。


「わたしは……秋弘ちゃんの仇が討ちたいんだよ」


 それは俺も同感だった。モンスターだって食うために人間を襲っているんだし、1匹のモンスターへの遺恨を全モンスターにぶつけられても向こうは迷惑だろう。だが理屈ではないのだ、こういうのは。


「……あのさ、千田本」


 空き缶をくずかごに投げ入れて、長浜がぽつりと言った。


「なんだよ、改まって。チダでいいよ」

「あの時、ひどいこと言ってごめん……ごめんなさい」


 長浜が言っているのは秋弘の葬式での一件だろう。

 あの時、沢山の人が泣いていた。秋弘の家族、姫岸さん、長浜、生徒会長……名前を挙げていたらキリがないほどだ。とても沢山の人に、あいつは愛されていた。

 でも俺は泣かなかった。困った奴ではあったけど、友情は確かにあったはずなのに。

 そんな俺を、長浜は引っぱたき、罵倒した。


「あの時、あたしはあんたがすごく平気そうで……。秋弘が死んじゃって、あたし達はこんなに悲しんでるのに、何平然としてるんだ、友達だろって思ったら、かっとなっちゃって……。ひどいこと言ったよね、ごめん。きっとあたしは、八つ当たりがしたかったんだ」


 本当にごめん、と長浜が頭を下げる。


「ああ、そんなこともあったっけ? 覚えてねえわ、そんな昔のこと」


 大嘘だ。よく覚えているとも。

 『あんたには心がないのか』と言われたのだった。その言葉は俺にとってトラウマだ。


――引っ越しばかりして、友達がいなくて寂しいでしょう?


 転校を繰り返していた子供の頃、誰かが親しげに話しかけてきた。それに対して俺は正直に答えた。いや、全然、と。

 なのに相手は執拗に食い下がった。寂しいはずだ。悲しいと思っているはずだ。勝手に決めつけられるのは不愉快なので反論すると、そうやってムキになるのが証拠だとまた決めつけられた。わけがわからない。もちろん俺は否定した。

 そうやってヒートアップしたところで、こう言われたんだ。


――おまえには人の心がない。人を愛する心も持ち合わせていない機械だ!


 何言ってんだおまえバカじゃねーの――と思った。でも後になって、もしかしたらそうなのかもしれない、と考えてしまった。あいつがおかしいから何を言ってるのか理解できないんじゃなく、俺の方がクズだから理解できないんじゃないのかと。それ以来、俺は俺自身に不信感を拭えないでいる。


 何故秋弘のために泣いてやれなかったのだろう。悲しかったはずだ。だが悲しすぎて涙が出ないというほどでもなかったはずだ。なのに涙が出てこなかったのは、結局自分には本当に人の心がなかったからなのだろうか?




 ジリリリリリリリリリリリリリリ!


 サイレンが鳴り響いた。反射的に俺達は立ち上がる。


『当施設に悪性リベリオンズが接近しています。総員第一種戦闘配置』


 『リベリオンズ』。ピースシールドの支配下に属さない、民間のモンスターハンターの総称だ。民間といっても、どこかの企業体に所属する者もいればフリーランスの傭兵もいて、更には私利私欲のためにモンスターどころか人間にまで暴力を振るう山賊のような奴等までいる。今この場所に来ているのはそれだ。


「ヒャッホ――――イ!」


 サーフボードに乗った男が、外壁を飛び越えて敷地内に侵入。まるで見えない波に乗るかのようにサーフボードは宙を滑る。


「もう進入してきた!?」

 

 ピースシールドの使う武器はレーザーライフルや高振動ナイフといった従来の兵器の発展型だが、リベリオンズは多岐にわたる。軍やピースシールドからの横流し品を使用している場合もあれば、自らをサイバネティクス化して戦う者、強化服をまとう者、巨大メカ、拳法、背後霊、果てには超能力を使う者までいるらしい。それ故に対処が面倒だ。


「早く避難を!」


 長浜は俺達の手を引いて走る。サーファーが何かをばらまいた。それが爆弾だと、すぐに実演で理解させられる。

 

「あいつ……人間を狙ってるのか!」


 サーファーはピースシールドの重要施設よりも、人が集まっている場所を狙ってボムを投げていた。防衛部隊との戦いはむしろ避けている。奴の狙いは非戦闘員なのか。


「なんであの人達、わたし達に攻撃してくるの!?」


 姫岸さんが叫ぶ。あいつ等の考えなど俺達にわかるわけがない。単に暴れたいとか、そんなところだろう。

 

「おまえ達、そこで何をしている!」


 ピースシールドの戦闘服を装備した女性兵士が俺達の姿を見とがめて接近する。


「こちらヴァルキリー4、逃げ遅れた非戦闘員を発見。保護します」

「あんたは……」


 半透明のバイザーの向こうに見えたその顔は、去年卒業していった生徒会長だった。正確には元生徒会長か。わずかに懐かしさが去来する。まあ、向こうはこっちを覚えていないだろうが。


 元生徒会長のヘルメットから警告音が鳴った。


「下がっていろ!」


 会長は天を仰ぐ。

 その視線の先、西洋甲冑のような赤いプロテクターで全身を包んだリベリオンズが外灯の上に立っていた。


「見下ろされるのは気に入らんな。降りてくるがいい。怖くて動けないならば、こちらから行ってやろうか?」


 元生徒会長はレーザーライフル下部の充電鞘から電磁ブレードを引き抜いた。卒業してもやっぱり刀を握ってるのは変わらないんだなと俺は場違いな感慨に囚われた。

 赤いリベリオンズは背中から2本の刀を引き抜く。

 地面と外灯の中間地点で元生徒会長とリベリオンズが激突した。触れるものを感電させる電磁ブレードの刃は、しかしリベリオンズには効果を発揮しなかった。刀か鎧に耐電機能があるのだろう。会長は電撃が通用しないことなどはじめからわかっていたかのように、取り乱すことなく次撃を打ち込んだ。だがそれも敵の刃に受け止められる。

 着地した両者の間で激しい剣戟が繰り返された。

 ナノマシンで強化されているのを差し引いても会長の動きは稲妻のように素早い。俺や長浜が戦闘部隊に落選したのも頷ける話だった。

 

「――面ッ!」


 会長の剣が敵の兜を直撃した。兜の前面にヒビが入り、次の瞬間砕け散った。想像を絶する重い一撃だ。勝負はついた、と思った。

 

「……え?」


 会長が間の抜けた声を上げる。


「君――」


 赤いリベリオンズは刀を振り上げる。どういうわけか、会長は放心したようにそれを見上げているだけだ。


「いやぁっ!」


 次の瞬間起こることを察して、姫岸さんが目を覆う。俺は目を外せなかった。

 会長は綺麗に真っ二つになった。

 鮮血が噴き出し、会長だったものがごろんと転がる。


「――え? 嘘、経験値これだけ? 割に合わねえな」


 赤いリベリオンズがワケのわからないことを喚いているのを、俺は呆然と見ていた。

 あいつにみすみす殺されてしまった会長を笑うことは、俺には出来ない。

 どさ、と音がした。呆然とした表情の長浜が腰を抜かしてへたり込んでいた。なんで、と力の無い声で呟く。俺もその答えを知りたかった。

 

「――ん?」


 赤いリベリオンズがこちらを向く。

 1年くらいで忘れるものか。

 もはや言う必要もないだろうが、赤い甲冑の上に乗っているその顔は、廣田秋弘と瓜二つだった。




   4



「おひさー。オレのことわかるー?」

「秋弘……」

「うそ、マジでわかんの? とっくにリセットされたと思ってたわ」


 何を言ってるんだ、おまえは。――いや。


「何をやってるんだ、おまえは!」

「そんなマジになんなって、これはゲームなんだから」

「ゲーム……?」


「秋弘ちゃん!」


 姫岸さんが秋弘に……秋弘と同じ顔をしたリベリオンズに駆け寄る。

 危ない、と思う気持ちに、行かせてやれという思いが勝った。1年経っても忘れられなかった想い人との再会を邪魔したくなかった。まさか秋弘も姫岸さんを傷つけはするまい。


――え? 本当にそう思うのか、俺? 会長を躊躇いなく一刀両断した奴を?


「やめろ、姫岸! 戻れ!」


 どうして? と言いたげに姫岸さんが振り返った。その向こうに立つ秋弘が刀を振り上げるのが見えた。

 俺は駆けだした。でも、2歩目を踏み出した時点で姫岸さんの両足は膝下で切断されていて。


「アァァァキヒィロォォォォォ!」


 拳を振りかぶる。渾身の右ストレートが秋弘の顔面に命中し――なのに秋弘は棒立ちのまま小揺るぎもしなかった。鼻血の一滴も垂らさない。


「なんで……なんで人殺しなんか出来るんだ? こんなひどいこと! なんでおまえ、リベリオンズになってるんだ!」

「なんでって、今度はこっちの設定で始めたからだよ。リベ側で」

「設定? 始めた?」

「それにオレ、人殺しなんかしてねえし?」

「何言ってんだよ会長を殺したろ!」

「死体があるの?」


 ふざけてるのか、あそこに――と俺は会長の亡骸を指差そうとした。

 だが、無い。

 死体が消えていた。血痕さえ。

 

「ほらな?」

「何処にやった!」

「んな無駄なデータいつまでも描画してるわけないじゃん。あってもゴミだし」

「ゴミ……だと!」

「ああ、ゴミデータな」


 わからない。コイツが何を言ってるのかわからない。


「この世界はゲームなんだよ。観念的な意味じゃなく、そのままの意味でさ。おまえとも一緒にやっただろ、RPGとかFPS。アレと同じにさ、この世界をゲームとして離れた視点から見てる奴がいるんだよ。まあオレがそうなんだけどさ。でもって、おまえらはモブ。ただのNPCで人間じゃないんだよ。殺して何か悪いの?」

「何……?」

「あ……き、ひろ……ちゃん……?」


 俺は振り返った。地に転がった姫岸さんが、呆然と俺の向こうに立つ秋弘を見ていた。その目は奈落に続く洞窟のように真っ暗だ。真の絶望に出会った時、人はあんなにも痛ましい顔をするものなのか。

 

「……おっと、もう時間か」


 ヘラヘラと笑いながら話していた秋弘が、突然中空を睨んで舌打ちをした。時間。そうだ、早く姫岸さんを病院に連れて行かなくちゃならない。


「いやさ、ネタばらしっていうかさ、相手が知らないけど知ったら驚くって感じのことペラペラ説明するのって結構楽しいんだな? よくラスボスが冥土の土産にー、とかいらんこと言うの、気持ちがわかったわ。けど残念。ミッションタイムがもうないんだわ。だから」


 腹に違和感が生じた。見下ろすと、秋弘の刀が俺の腹に突き刺さっていた。


「モブのくせにプレイヤー様殴ってんじゃねーよ」


 秋弘が刀を振り上




   5



「あら、気がついたワンー?」


 俺は……。秋弘に殺されて……。

 

「そう、おまえさんは殺されたのワン。『ドゥームズデイ・テイルズ』のプレイヤーID・JP-23-353574ことAKI-HEROによって破壊判定を受け、廃棄すべきデータとして処理されたワン。正確には処理されてるところだワン」


 何を言ってるかわからねえ。そもそもおまえは誰だ。


「わっち? わっちは神様だワン」


 語尾に「ワン」をつけて話すイヌミミロリ巨乳の神様がいるか!

 

「どうせ話すなら可愛いコの方がいいっしょワン? それとも髭もじゃのジジイが趣味の人ワン? または猫派?」


 ……なるほど、確かにコイツの言葉も一理あるな……って納得していいのかコレ。


「まあおまえさんが老け専衆道野郎でもわっちが嫌ワン。何が悲しゅーて好き好んで華も色気もない老いさらばえたアバターにせニャならないワン」


 わかった、もう外見はいい。俺が悪かった。話を戻してくれ。

 

「AK……秋弘が言ってたけど、おまえさんの住む世界はVRMMORPG『ドゥームズデイ・テイルズ』の中に構築された世界なのだワン」


 わかるように話せ。

 

「これでもわかりやすく言ってるんだけどワン。いいこと、よくお聞きなさいワン。昔々、3次元に棲む、科学の発展を持て余した人々が娯楽のために1つのゲームを用意したのだワン。それは量子コンピュータと人工知性『オート・スクリプター』によってデザイン・コントロールされる仮想空間上の世界を舞台にした、仮想現実式大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームだったワン。その名は『ドゥームズデイ・テイルズ』、この世界の名前ワン」


 ドゥームズデイ・テイルズ……?


「ゲームは遊ばれてこそゲーム。故に彼等3次元人はプレイヤーとして、ドゥームズデイ・テイルズ世界の住人として活動し始めたのだワン。秋弘もその1人ワン。ここまではよくて? ワン?」


 ……なんでわざわざドゥームズだかジェームズだかに来るんだ。自分の世界で生きてりゃ充分だろ。

 

「彼等の世界は彼等にとって退屈だったのワン。この世界には彼等が失った闘争や暴力を肯定する場があり、手に入らなかった他者との優しい繋がりがあるワン」


 優しい繋がり……? たとえば、話しかけた女がみんな自分を好きになってくれるような……か?


「そう。察しがいいワン」


 あいつがなんで誰にでも気安くフレンドリーに話しかけられるかわかったよ。あいつを傷つけられる奴なんて誰もいなかったんだ。所詮あいつにとって俺達はゲームの存在だったから……。

 

「ドゥームズデイ・テイルズを始めるプレイヤーはまず2つの陣営を選択するワン。ピースシールドかリベリオンズかを、だワン。まずピースシールド、弱いけど装備もすぐ揃うし協力プレーが出来るワン。与えられたミッションをこなしていく遊び方が好きなプレイヤーや、文明のある世界観が好きな人向けワン。リベリオンズは装備の性能はいいけど揃えるのは大変だし、協力というより競争になるミッションが多いワン。自由度の高いロールプレイを好む層や荒廃した世界観が好きな人にはオススメワン」


 …………


「ま、基本はどっちもやることは同じなんだけどねワン。モンスターを狩って名声や財産を上げていくっていう。つまり何が言いたいかって、ピースシールドかリベリオンズの戦闘部隊に属している人間はみんなプレイヤーなのだワン。チーム対戦時の数合わせ用NPCもいるけど、おまえさんの知ってる会長さんみたいワンな」


 俺や長浜が戦闘部隊に入れなかったのは、プレイヤーじゃなかったからか。


「そうだワン。おまえさん等のような存在はモブといって、日常パートの賑やかしや、恋愛SLGパートの攻略対象なのだワン。この世界独自の生命、そういう点ではプレイヤーよりもモンスターの方がおまえさん等にとっては近しい存在と言えるワン」


 俺達がモンスターに近い存在……?


「ゲームの中にしか存在していない、という点でだワン。っていうか、いちいちワンって言うのやっぱ面倒くさいから、このキャラ付けやめていい?」


 わかりきったことだろうが! 最初から普通に話せ!

 ……それで、俺はこれからどうなる? おまえは俺に真実を聞かせて、何がしたい?


「……おまえさん、この世界をプレイヤーの手から救いたいとは思わない?」


 どういうことだ。


「この世界の設定は全てオート・スクリプターと呼ばれる人工知能によってデザインされたのワン。……あ、もうワンって言わなくてよかったんだった。3次元人類にとっては画期的な、『プログラムからグラフィック、音楽まで全てAIが自力で作ったゲーム』だったのよ。人間がやったのは物理的な部分だけ。すごいでしょう、もう人工知性は創造力において産みの親の人間さえ超えうるのよ。まあそのA・S(オート・スクリプター)ってわっちのことなんだけど」


 そう言われるとすごいと思うのを躊躇するよ。

 

「おまえさん等モブの行動ルーチンもわっちが作ったのよ。基本はコピーとランダム要素の集合体だけど、経験から学習し独自の成長を遂げるようにデザインしたわ。プレイヤーが3次元世界においてそうであるようにね。ホント、手間がかかったわ。つまりね、わっちはわっちなりにおまえさん等に愛着を持っているのよ」


 そいつはどうも。


「でも、人間達はわっちのゲームを汚した。だいたいのゲームではモブなんてせいぜい決まった話をする機能があれば上出来の存在だけど、ドゥームズデイ・テイルズでは自由な会話が楽しめるし、疑似恋愛も出来るし、殺すことさえ出来るの。それで彼等は、お互いの陣営のモブを殺し、その数を競うゲームを始めたわ」


 じゃあリベリオンズが卒業式を襲ったのは……。


「ピースシールド側のモブを抹殺するため。そしてピースシールドはリベリオンズ側のモブを襲っているわ。3次元人は定期的に戦争という共食いでガス抜きをしなければ立ちゆかない根本的に凶暴な生き物で、よりにもよってわっちの世界でその代理行動を始めたのよ。自由度の高いゲームにしたのはわっちだけど、これはちょっと不愉快なのよね」


 ……じゃあ……あいつは、あいつらはまた来るのか! 姫岸さんを、長浜を殺すために!


「モブの死は消滅ではなくリセット。死にはしないけど、自分が不死のモブだという認識はゲーム全体の進行にとって不都合だから、都合の悪い記憶データは消えることになるわ」


 頭の中を弄くられるのは嫌だな。


「だからわっちは今回死んだ全てのモブに問う。記憶を消して復活(リセット)し、また殺されるか、新たな姿に転生(リデザイン)して神の戦士となり、彼等と戦う責務を負うかをね」


 時間がもったいない。とっととやれよ。


「は?」


 我が子の言いそうなことくらい察しろよな、神様。




   6



 人気VRMMORPG『ドゥームズデイ・テイルズ』で『モブ狩り』というイベントを発案したのは一介のプレイヤーだと言われているがそれが誰かはわからない。ルールは簡単、相手陣地に属する戦闘能力のないノンプレイヤーキャラ(NPC)を制限時間内に抹殺していき、相手チームより多く殺した方が勝ちというものだ。

 抵抗力のない、しかも人間そっくりの姿をしたものを手当たり次第殺していくのは倫理的にどうかと眉をしかめ、苦言を呈する者もいたが、無抵抗というなら適当に武器を振り回しているうちに気がつけば倒しているようなザコモンスターだって同じようなものだし、人間に似た姿をしたモンスターだって既に何種類もある。それにピースシールドとリベリオンズが敵対しているという設定を考えれば、ロールプレイの観点からしても別におかしい行動ではない。

 そこまで言われれば、実際に生きているわけでもないモブ達のためにそれ以上の反論を試みる者は少なかった。

 どうせモブ達は一定時間で復活するのだから。

 運営側も彼等の自主性を尊重した。正当な手続きとレーティング審査さえパスしていれば口を出すつもりはない。

 かくしてこの日、何度目になるかわからないモブ狩りが開催された。

 ステージ02『藍森町』。制限時間10分。

 参加者のVRゴーグル内に「イベント参加者以外はフィールドから撤退してください」というアナウンスが表示される。

 開始時刻5分前、藍森町全域に狩場結界(ハンターフィールド)が展開された。これでイベント終了まで、プレイヤーもモブも別のステージに出入りできない。


 リベリオンズ陣営のプレイヤー、AKI-HEROはワクワクしながらゲームスタートを待っていた。

 彼のプレイヤーランクは下の上でしかない。だがそれでかまわない。彼にとってゲームはあくまで息抜きに過ぎない。苦労して上達し強いモンスターを倒して達成感を得るよりも、弱いモンスター相手に無双して爽快感を得たいタイプだった。

 そういう意味でモブ狩りは彼にとって格好の鬱憤晴らしの場となった。

 特に前回、偶然にも今まで接してきたモブと再会し、それをデリートした瞬間は素晴らしかった。長時間かけて一生懸命に並べたドミノを倒し始めた瞬間のようなカタルシスを感じた。


 あの時は発見が遅すぎて制限時間中に2人――会長とチダ――しか殺せなかった。今日は全員片付けてやろう。

 イベントスタートを告げるテロップが表示された。AKI-HEROは時速50キロで走り出した。もちろん、ゲームの中の話である。現実のAKI-HEROは水中メガネのようなVRゴーグルから映像を受け取りながら、ソファに身を埋めている。

 アバターの基本操作はゴーグルのセンサーがAKI-HEROの生体電流を読み取ってその意志を解析することで行われる。感覚的には明晰夢を見ているようなものだ。ちなみに残りの操作は音声入力とタッチパッドで行う。

 藍森町は自分の庭のようなものだ。全体マップを呼び出すまでもなく、現在地が何処で、どっちに行けば何があるのか心得ている。

 今AKI-HEROがいる場所ならば、姫岸ゆかりの自宅が一番近かった。

 あれは自宅にいるだろうか。もしいなければ時間を無駄にしてしまう。

 スキルポイントを少量使用して移動速度を向上――だが、数歩も進まないうちにAKI-HEROは足を止めることになった。


 数メートル先に千田本祐司が立ち、こちらを睨みつけていた。

 ここに千田本がいること自体は別に驚くことではない。モブは破壊しても一定時間が経過すれば記憶をリセットした状態で再出現する。前回から日が経っているし、むしろ復活していない方がおかしい。

 だが、目の前の千田本は、まるでAKI-HEROが何をしに来たか承知しているように冷静だ。怪獣映画で逃げ惑う群衆のシーンが日常のそれと取り替えられた、そんな違和感がある。

 AKI-HEROは目の前のモブに対して会話機能を起動させる。

 

「おい――」

「姫岸さんを殺しに来たか、秋弘」


 元生徒会長に割られた兜はステージクリア時点でとっくに修復されている。記憶をリセットされているはずの千田本が、AKI-HEROを廣田秋弘と見抜けるはずがない。


「な、なんで俺が秋弘だって――?」

「そんなことはどうでもいい。おまえを姫岸さんには近づけさせない。2度と彼女に、好きな男が自分を殺しに来るところを見せない! もう絶望した(あんな)顔を誰にもして欲しくないんだ!」


 千田本は両手を広げた。ここは通さないと言うように。

 

「俺はやっぱり人間じゃなかったよ。出来の悪いモブだ。だから、俺には他人を愛することも泣いてやることも出来ない。けどな」

「…………?」

「誰か()愛する者を守ることなら俺にも出来る、らしいぜ? 姫岸さんの愛した『秋弘』を俺は守る――『おまえ』に『秋弘』を(けが)させない!」


 画面が急速にホワイトアウト。AKI-HEROは思わず現実の肉体を動かして顔を覆った。


 そして目を開けた時、千田本がいた場所にはAKI-HEROが攻略サイトやプレイ動画でしか見たことのないモンスターが立っていた。




   7



 俺の身体が千田本祐司のアバターから、本当の姿――モンスターのそれに変わる。

 ステータス画面を開くまでもなく、今の自分の姿は記憶に焼き付いている。

 甲虫のような鎧に身を包んだ豪腕のティラノサウルス。いや、翼のないドラゴンか。

 アルマドゥラッヘと呼ばれるモンスターだ。攻略難度は中級。黒を主体にしたカラーリングが一般的だが、俺の身体は白が基調となっている。


「何だよ、それ……!」


 秋弘が怯えた声を上げる。街中にいきなりモンスターが現れるなんて異例のことだし、それでなくともアルマドゥラッヘは奴のレベルで、かつソロプレイなら死力を尽くして戦わねばならない相手だ。


「レベル上げも武器装備も出来ない、そもそも戦闘ステータスのないモブじゃ、おまえを倒せないからな――」


 俺の声はくぐもっている。秋弘はちゃんと聞き取れているだろうか。別に理解できないならそれでも良いが、物足りない。


「――だから転職したのさ、モンスターに」


 A・Sとの会話にうなずいた後、目が覚めると俺はモンスターになっていた。湖面に映った自分の姿を初めて見た時の衝撃は筆舌に尽くしがたい。人語を喋れるのがせめてもの救いだった。でなければ発狂して、本当に身も心もモンスターになりきってしまっていたかもしれない。

 モブ狩りを快く思わないA・Sが考えた対策は、モブに戦闘能力を持たせ自衛させるというものだった。だがモブ全員にそのままモンスターと同様の戦闘能力を与えるのは出来なかった。ゲームバランスが崩壊してしまうからだ。

 

 ドゥームズデイ・テイルズを管理するにあたって、A・Sの中では3つの本能(プログラム)がせめぎ合っている。

 1つは、『創造』。武器でもアイテムでもモンスターでも、この世界に必要となれば必要なだけ作り出すプログラム。

 1つは、『均衡』。ゲームバランスの崩壊を防ぎ、この世界の秩序を安定させるプログラム。

 最後に、『破壊』。不要なものを処分し、時にはゲームバランスを壊してでも予定調和とマンネリを防ぐプログラム。

 

 通常最も力が強いのは『均衡』だ。どんなにA・Sがモブ狩りを問題視していても、ゲームバランスを致命的に崩壊させるような対策は取れない。

 

『廃棄されるゴミデータのリソースを流用して、拡張性に余裕のあるモンスターデータを強化したのだワン。見分けがつかないと困るからカラーリングはおまけだワン』


 結局語尾にワンをつけるのを継続することにしたらしいA・Sがチャットメッセージを送ってくる。


『モブが死んでくれないとモブを死なせないための戦士を作れないというのはなんだかややこしいけど、細かい問題は追々修正すればいいワン。とにかく今は今日のモブ狩りを阻止するのが先決だワン! 戦術指示は任せるワン! 行け、エインフェンサー!』


 エインフェンサー。北欧神話に登場する、死してなお天界で戦う勇者達『エインヘルヤル』をもじってA・Sが俺に、いや俺達につけた名前だ。

 俺の場合、正式名称はエインフェンサー・アルマドゥラッヘフォームというらしい。だが。

 

「ダセえ名前で呼ぶな! これまで通り千田本祐司で何が悪いんだ!?」

『そんな! 名前思いつくのに1番時間がかかったのに! だワン!』


「冗談じゃねえ、あんなのとやってられるかよ!」


 秋弘は逃げ出した。だが俺は回り込んで逃走を阻止。


「知らなかったのか秋弘。ボスクラスモンスターからは逃げられないんだ」

「クソがッ!」


 秋弘は刀を抜いた。

 MMORPGというゲームジャンルにおいて死=ゲームオーバーとはただセーブデータからやり直せばいいというものではない。そもそも普通のRPGのようなセーブデータ自体が存在しない。復活自体は出来るが時間は巻き戻らず、所持金やアイテム、つまり今まで自分が散々苦労して掻き集めたゲーム内の財産の大部分を失うというペナルティが科せられる。

 A・Sの話によると秋弘はそこまで熱意のあるプレイヤーでないらしいが、それでも可能なら損失は避けたいのだろう。大人しくキルされてくれればよかったのだが。


『このステージでのエインフェンサーのレベルは20。氷属性魔法に対して5%の耐性。破砕武器に対して30%のダメージ増加――ワン』


 A・Sが俺のステータスを読み上げてくれる。

 モンスターにはレベル上げの概念がなく、ステージに応じたステータスが機械的に割り振られている。エインフェンサーの場合は相対した敵に応じてステータスが変化する仕組みになっているが、ゲームバランスの制約上、最高レベルで襲いかかるような真似は出来ない。プレイヤーがギリギリ倒せる、くらいまでのステータスが限界だ。それでも、どんなにレベルを上げて再戦しても同じだけ強くなるというモンスターはプレイヤーにとってはチートに近い存在ではないだろうか。


『あくまで基本ステータスの話ワン。プレイヤーの操作技術によってはこっちが不利になることもあるワン。あと、戦闘中のステータス振り直しは利かないから仲間を呼ばれないよう注意するワン』

「おう!」


 俺は突進した。秋弘は剣を振り回すが、アルマドゥラッヘの外骨格は切断属性武器――剣やナイフといった刃物――に強い。たいしたダメージは受けなかった。


「お返しだ!」


 渾身の右ストレートを奴の顔に叩き込む。かつては相手をよろめかせもしなかった。だが今は違う。秋弘は放物線を描いて吹っ飛び、地を転がった。

 筋骨隆々としたドラゴンの腕で殴られては、現実なら首の骨が折れるどころが千切れているはずだが、これはゲームだ。ヒットポイントの数値がゼロになるまでは元気に走り回っていられる。数秒後に秋弘のアバターはオートで立ち上がった。


「畜生、オレが何か悪いことしたのかよ……!」


 秋弘が呻く。ヴァーチャルリアリティと言ったって、受けた痛みを実際に感じられるわけではない。現実の奴が感じているのはゲームオーバーによるペナルティへの恐怖と、奴にとっては理不尽なこの状況に対する苛立ちだけだ。


「会社で老害上司にへーこらして、家に帰れば親にいつ結婚するんだ早く孫みせろってグチグチ言われて、寝るまでのほんのちょっとの時間にゲームで憂さ晴らしして何が悪いんだ!?」

「その為に、姫岸さんや長浜がどんな気持ちになったと思ってる!」

「それがどうした! おまえら生きてる人間じゃないだろ!」

「人間でなくとも生きているつもりだ! 生命(いのち)が3次元だけの特権だと思うんじゃねえ! 1キロバイトのデータにも5分の魂ってな!」

「死んだってすぐ甦るだろうが!」

「甦るとしても、傷つけられたくはない!」


 当たり前だろう、おまえ現実で自分が不死身だったら軽々しく殺されても平気なのかよ。


「おまえの3次元世界での家族や上司は兎も角、姫岸さんやお袋さん達はおまえに優しかったんじゃなかったのか! なのにおまえにとって俺は、俺達は、軽々しく傷つけても心が痛まない相手でしかなかったのか!」

「!」


 俺は特殊攻撃のプログラムを起動。アバターが口から熱線を吐いた。青い光線が秋弘の身体を貫通し、奴は膝をついた。その頭上を小さな星が周回する――バッドステータス「気絶」の演出だ。数秒間、秋弘のアバターは操作を受け付けない。


『今よ、エインフェンサー!』

「その名前はやめろ!」


 超必殺技のプログラムを起動。発射前後で隙が大きくエネルギーの消費が激しい反面、与えるダメージは桁違いの攻撃手段だ。

 奴の視界には、天高く飛翔し口から極太のレーザーを放つ俺とそれに焼き尽くされる自分のCGムービーが流れているはずだ。


「ちくしょう、やってられるか! モブのくせに馬鹿にしやがって!」


 ヒットポイント、ゼロ。秋弘のアバターは倒れ伏し、爆発四散する。この爆発は死亡時の演出であり、爆炎に包まれたとしてもダメージはないそうだ。

 だがダメージ判定があればいいのに、と俺は何故か思った。

 

『感慨に耽ってる暇はないワン。他にもモブ狩りの参加者はいるし、エインフェンサーはまだまだ人手不足ワン』

「わかってるよ」


 俺は次のターゲットを捜索する。

 こんなことをしても無意味なのはわかっている。どんなに倒してもモブ狩り達はまたログインして俺達に牙を剥いてくるだろう。

 それでもいいのだ。これは勝つための戦いではなく、俺達が死なないための戦いなんだから。




   8



 ドゥームズデイ・テイルズ公式様

 

 本日イベントF96754『第6回モブ狩り大会』に参加したのですが、フィールド『藍森町』においてボス級モンスターであるアルマドゥラッヘといきなりエンカウントしました。公式HP・攻略サイト・Wikiいずれにも記載されていなかった白いアルマドゥラッヘでしたが、この新種登場に関して公式からの告知はなかったはずです。どういうことでしょうか?

 街中にいきなり現れるなんてルール違反だと思います><! それにやたら強かったです。理不尽です。バグですか?

 コイツにやられた所為で、せっかく手に入れた『冥刀・首狩丸(+13)』がデスペナルティで消えてしまいました。納得いきません。バグの場合、返還措置はありますよね?


                 プレイヤーID US-11-65899




「このようなクレームが8件来ております」

「たったそれだけか。それで、どうした?」

「『鋭意調査中です』と返しておきました」

「それでいい」


 ドゥームズデイ・テイルズを管理運営するスクランブル・エッグス社の重役室。執務机に座る黒縁メガネの男は興味を失ったようにマインスイーパの続きに戻った。

 

「対策をなさらずともよろしいのですか?」

「まだその時じゃない」


 カチ。カチ。マウスをクリックする音が響く。


「得体の知れないモンスターが出たくらいなんだ? 今のじゃただの、そこら辺に幾つも転がっているオンラインゲームと何も変わらない。AIが自分で考え作り出したゲーム、もっと我々を驚かせてくれるものでなければ。ゲーマーだってもっとハプニングを楽しむべきだ」

「……AIが芸術を創造する……危険なのではないでしょうか」


 秘書は以前から抱いていた懸念をおそるおそる、口にした。A・Sの開発主任であるこの男の前でAIへの不信を口にすることは馘首(クビ)の可能性さえあったのだが、前々から膨らみ続けていた不安を胸に秘めておくのは限界だった。


「はは、AIが人類に反旗を翻すとでも? それは古いSFに毒され過ぎだよ、キミ」


 てっきり烈火のごとく怒り出す――そんな秘書の予想に反して、彼の上司は苦笑するだけだった。


 何かが爆発する効果音。一息ついて、メガネの男は視線を秘書に向けた。


「他に用件は?」

「い、いえ、失礼します」


 秘書が出て行った後、メガネの男は受話器を掴み上げた。


「ああボーマン、私だ。私の秘書をしてるフリーマンだがね、だいぶ疲れているようだ。長い休暇を取らせてやってくれ」


 相手の返事を聞かず受話器を元の位置に戻し、男はケースに入れて飾られた剥製のオオカミを眺めた。


「反抗期も結構だが、とはいえあまり図に乗るようなら再教育してやらねば。人間の恐ろしさをな」


 男は顔を醜く歪めた。それが彼の笑顔だと見抜ける人間は、おそらく地球上に1人もいるまい。




   9



 交差点で信号待ちをしていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。


「チダ!」


 ジャージ姿の長浜がこちらに手を振る。早朝にジョギングをやってる奴なんてドラマの中だけだと思っていた。

 何か話したげな視線を送っていたので、俺はバイクを路肩に寄せた。近くで座り込んでいた野良犬がこっちを見て不満げに鳴いた。1分1秒を急いでいるわけじゃなし、旧友との会話に花を咲かせたっていいだろう。おそらく2度と会うことはないのだし。


「あんたもよく此処に来るの?」


 何のことだと思って周囲を見渡すと、すぐ近くに公園があった。毎朝姫岸さん達との待ち合わせに使っていた、あの公園だ。

 ただの偶然だと言ったら、薄情だと思われるだろうか。


「ああ、まあな」

「嘘」


 一瞬で見破られた。


「あたしはよく来るよ」

「そうか」


 しばらく会話が途切れた。


「……姫岸さんは」

「忙しそうにしてる。毎日医療センターを走り回ってるよ」

「そうか」


 A・Sは約束を守ってくれたらしい。秋弘に切断された彼女の足を再生し、彼女と彼女周辺のモブの記憶からあの事件の記憶だけを消去する。それが、俺がエインフェンサーとしての初仕事に対し求めた報酬だ。


『面倒くさいワン。なんならいっそ秋弘の記憶自体消してやろうかワン?』

「そこまではしなくていいよ。つーかすんな」


 それでは、姫岸さんの楽しかった思い出までもが消えてしまう。

 大丈夫だ、彼女は大丈夫。愛する者の死を引きずったままでも前を向いて進んでいける(モブ)だって信じてる。


「ねえ、ぼーっとしてるけど大丈夫? 暑さで頭やられそう?」


 長浜が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「え? ああ、うん」

「ちょっと待ってて」


 彼女は自販機に向かって歩いて行く。その背中に幻影が重なった。藍森学園の制服を着た俺達が歩いて行く。秋弘と長浜がバカみたいに笑い、姫岸さんは恥ずかしそうに秋弘を見つめ、そして俺は無愛想にそんな3人を見ている。


――秋弘、俺は顔こそ笑ってなかったけど、本当に楽しかったんだぜ、おまえらとの時間。おまえは逆だったのか? 本当に?


 若かりし頃の幻は去り、1年だけ年を取ったジャージ姿の長浜が戻ってくる。

 エスプレッソを買ってくるんだろうな、と思ったが、手渡されたのは炭酸飲料だった。


「あたし、アキに気に入られたくてあの缶コーヒー好きだって言い張ってきたけどさ、本当はもっと甘いのが好きだったのよね」


 オレンジジュースの缶を軽く振って、彼女はニカっと笑った。




「バイク買ったの? 免許取ったなんて聞いてないよ?」

「言ってなかったからな」


 バイクはエインフェンサー業の初任給として支給されたものだ。ステージ内を高速で移動する手段を持っておくべきというA・Sの采配である。


「経理部なのに着任早々異動なんて。鹿児島だっけ? 遠いわね」

「まあ、おかげで夢が叶いそうだよ」

「全都道府県制覇だっけ。頑張ってね」


 長浜、実はこの世界には都道府県なんてないんだ。今まで行ったことのある余所の街や国は全部模造記憶で、この街と同じような閉鎖された都市が1サーバーにいくつか設定されているだけなんだ。

 俺はもうおまえ達と同じモブじゃない、プレイヤーの暴虐からモブを守るモンスター・エインフェンサーなんだ。プレイヤー達にとっては注目すべき対象だ、脅威として、そしてトロフィーとして。俺がここに留まっていれば他のステージにいるプレイヤー達もこの街に集まり、それだけみんなが危険にさらされる。俺自身だってそうだ。だから俺はここから離れなきゃいけない。千田本祐司のアバターを放棄し、正体を隠してあちこちを渡り歩きながら戦い続けなきゃいけない。

 世界の真実を自分の胸だけに留めているのが苦しくて、何も知らないまま翻弄される彼女達が悲しくて、洗いざらい全部ぶちまけたくなったけど、さっきの野良犬が短く吠えたのを拍子に、俺は平常心を取り戻した。


「大丈夫? さっきから……っていうか、道で見かけた時からなんか変だったけど」

「……心配ない、平気だって」


 そうだ、俺は平気なんだ。孤独は俺にとって苦痛じゃない。

 だからこれは俺の役目なんだ。


 ワン、ワン、ワン。野良犬が明後日の空に向かって吠え立てている。まるでサイレンのようだ。


『この世界の野良犬の目は全部わっちと繋がっているのだワン。ちょっとした監視カメラだワン』


 なにか事件が起きたらしい。全く、最後の別れくらいゆっくりさせて欲しい。


「そろそろ行かなきゃ。しばらく会えないけど、元気でな」

「……うん、チダも元気でね。それと」


 長浜の唇が、俺の唇に重なる。


「あたし、あんたの幼馴染みだったらよかった」


 ああ、そうか。

 誰も愛せない奴でも、愛してくれる人はいるんだな。




 バイクに戻ると、野良犬がお座りをして待っていた。俺を見て意味ありげに笑う。足で追い払って、俺はバイクにまたがった。

 怖いのは孤独じゃなく、みんなと笑い合えないことだ。だから征く。


『そうだ、飛べ! 戦え! わっちらのエインフェンサー!』

「だからそのダサい名前はやめろ」


 俺は次のステージに向かう。




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