第6話 : 自分で引く レール
本稿は第5話の続きですが、第1人称として表現しているのは孝次郎(孝太郎の父、孝のおじぃちゃん)の幼少期?~を描いてみました。
人生とは不思議な物である。 小学校、中学校? 位までは、親の都合で転入してくる児童、或いは、見栄? などで私立学校へ転校する子等もいる。
そんなある日、まだ、小学校の低学年かな? いつも一緒に遊んでいた渥美が親の都合で転校する事になった。
俺は、まだ幼かったので親の都合など解らず、
「どうして転校するんだよ。メンコもしたかったし、雷魚採りだって……、そしてベーゴマも。 最後のベーゴマやろうぜ」
とベーゴマ用の床を造り、いざ対決へ。
「こーちゃんのそのベーゴマ強えぃからな、でも、最後の勝負、負けないよ俺も 」 と言っていた。
案の上ではあったが、俺が勝ってしまった。
このベーゴマは毎晩コツコツと、鑢を懸けた逸品である。
「最後だからこれあげるよ」
「えっ、いいの? このベチャ… 最高に強いのに本当に?」
(ベチャとは『市販のベーゴマに改造を加え、背を低くし勝負に強くしたもの』)
なる自慢の、逸品をプレゼントした。
「もう、一緒に遊べなくなるけど、このベチャで転校先でも頑張れよ!、他の皆に負けるなよ」
そして、数日後には、もう渥美は転校して行ってしまった。
また、ある下級生は、親の期待・見栄? であろうか、
あっちの学校の方が全校生徒の成績レベルも高いからと、学区外の中学校に行ってしまった子もいる。
(私立ではなかったが、高校進学に備えたのであろう? ……)きっと。
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中学生時代も後半、
3年生を迎えようとする頃、将来の『夢』が『現実』の物となって来る時期である。周りの友だち達も。
そして自分自身の家庭環境・豊かさも……、
決して裕福では無かった我が家。
それでも、昔から電気イジリの好きだった俺は理工系に進みたかった。
どうせ、大学には行けないこんな家庭事情、……、なら学費も安いし公立の工業高校へ行って電気を学びたいと思っていた。
そして、いよいよ三者面談の日を迎える。その日は、偶然に父も仕事が休みであった事もあり、先生、俺、母、父と、ちょっと恥ずかしかったが(四者面談?)、中学卒業後の進路相談であった。
先生から、
「公立高校への進学を希望している様なので、今の成績なら、○× 高校なら充分に合格圏内でしょう」
それには親も納得していたのだろうが、俺は、理工系に進みたいとの思いが強く、まして今の家庭状況なら公立の普通高校を出ても、理工系の大学への進学はまず無理と、百も承知である……、
そんな事は。
そして私は、
「理工系を勉強したいので、△□ 工業高校へ行きたいと思っています」
すると、先生も両親も少し驚いた様子で、
先生が、
「君の成績なら △□ 工業高校へは行けると思うが……?」
そして、親の見栄? なのであろうか、
「先生が最初に勧めてくれた ○× 高校にしなさい」と、……。
俺は、理工系の夢は捨て切れなかった。第一志望の高校は親、先生の勧めた ○× 高校としたが……、
それなら、試験代も安かったので試してみるか? と、
合格は難しいであろうが5年制公立の ☆◆ 学校なる受験をしてみた。
合格、卒業をすれば短大資格も取れるだろうし……。
そして、その ☆◆ 学校の入試に合格した。
先生、親が勧めていた ○× 高校よりもレベル的には上位ランクで、
親の見栄? も 叶えられたのかもしれない。
学費も驚くほど安かった。 ○× 高校の3年間の学費より、☆◆ 学校の5年間の方が安かったと思える程。
(教科書代は、ちと値が張った? かな~ ……)
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人生には、沢山の岐路がある。
これは、自分で決めた最初の岐路でもあったのだろう。
幼馴染み、小学校時代、中学校時代……、
その時々で幼心にも葛藤・傷つき……、いろいろな事に遭ったであろうが、
それまでは、ある意味 自分では意識しないままで、
両親・環境に育まれ、そのレールに乗って進んで行っていたのではないか?……。
第5話、6話は孝のおじぃちゃん孝次郎の話でした。
第7話以降は、おじぃちゃんの孝次郎、父の孝太郎の死を経て、
主人公? 孝・ぼんず・プーニャ の本話に戻る予定です。
現代から近未来(未来?)へと繋げて活きたいと思います。