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愚かな生き者達  作者: えだいち
12/13

第12話 : 幸せ? 不幸せ?

 人類は、その進歩に酔いしれていた。

『ぼんず』の死は解かっていた。


 いや、そんな事、信じたくない!!……思いで、いつもの様に『ぼんず』の羽化を待ち望んでいた。

もう、羽化する事はない。

最後の言葉、

「孝君、ありがとう。プーニャをよろしく」と心の言葉で聞いていたのである。

でもかすかな望みを心に抱き……、


『ぼんず』が、「おはよう御座います」と言ってくれる……声(期待)は、いくら待ってもやっぱり無かった。

孝は、4才? 頃の物心が付いてから、集めたていた『ぼんず』の抜け殻を自分の部屋で、

「なぁ、『ぼんず』これからどうなるんだろうな、教えてくれよ、この地球・生物達、お前だったら解るんだろう……、

私が世界に向けて警鐘を鳴らしても……、人類が人類に対する過ち? を私が示しても、何の反省? も返ってこない。

だから自然界から伝えてくれよ! 私も私が知っている知識を駆使してでも、何でもやってみるから」とこぶしを机に何度も何度も叩きつけた。


 すると、ぼんずから心の声が、

「もう、僕は黄泉よみにいます。『以前黄泉の世界くに』で出会ったセミじぃさんからの教えに従い……、過ごしています。

現世では、ありがとう御座いました、

でも、もし僕から我がままを言っていいのなら、プーニャをよろしくお願いします。

でも……」

と心の言葉を閉ざした。


 プーニャにも僕の心の言葉は、伝わっていた。

そして、僕からの言葉、「でも……」の続きをも理解していた様である。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 それから10年以上経ったであろう。人類の進歩は過度を増していた。

「でも……」 の 『……』の意味さえ解らず。


 ある朝、

「コン・コン……、キィ~、コンキン、キィ~コン・キンコン……」

おじぃちゃんの大切にしていたレトロな目覚まし時計の音で目が覚めた。

私の大切にしているコレクション、年代物である。

無機質な電子音に比べれば、心地がいい。

レトロな目覚まし時計の音の中、数分後、その無機質な音も流れる。

いつ壊れるか解らないレトロな目覚ましを信じていたいが、壊れてしまって寝坊? など許されない時代だ。


 その目覚ましの音に気が付いたのか? 妻が、

「今日は、会社休みじゃないの?」と

「うん、今日は休みなんだけど、もうすぐテレビ会議が始まるんだよ、1時間位で終わるから……」

「じゃぁ、その会議が終わってから朝食ね」


 さすがに、いくらテレビ会議とは云えどもパジャマ姿では…?、

上半身はカッターシャツに着替え、顔を洗い髪を若干整へ、朝食代わりに牛乳をグイッと飲み、

家のパソコンからアクセスした。

程なくして、会議は始まった。

「おはよう御座います」から始まり、

でも議題の真髄は、

『プーニャ』の商業化の案件だった。


 私には、やっと気が付いてくれたのか、

これで少しずつでも世界の自然界に陳謝出来るのであれば、大賛成である。

商業化によって、会社の売上? に貢献するよりも、そのほうが嬉しかった。


 ただ、プーニャには、ぼんず兄さんの

『でも……』の言葉は既に解っていた様で、その嬉しさを表す事は無かった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 テレビ会議も終わり、朝食タイムである。

私は、休みの日は昔ながらの和風が好きだったので、

みそ汁、たくあん、味付け海苔、そして目玉焼き、アジの開き、

妻が、

「ごめんね、アジの開きはテレビ会議があるとは思っていなかったから、ちょっと、温め直す?」

「うん、いいよ、このままで」と、朝食を摂っていると、

妻から、

「ねぇ、知ってる? DNA」

私は百も承知であるが?、何故?

「あのノーベル賞を受賞した金谷教授のDNAが入手出来るんだって、そして、組み換えし出産すれば、その子は未来のノーベル学者になる可能性が高いんだって、

でも、やっぱり、お値段は高いけどね~」と、軽い気持ちで言ったと思う。

私は、以前より危惧していたが、やっぱりこんな時代が来てしまったのか。

人類は、人類の繁栄のためだけに英知を絞るのか?


 私は、いつも温和な人間を務めていたが、妻の「 ~ 組み換えし出産すれば ~ 」の言葉に、

語気を強め、

「人間って何なんだ、じぃちゃん、父さん、そして、ママのご両親も、ぼんず、プーニャ全てが自然の摂理で生きて来たんだよ。DNAを組み換えて何が本当の幸せなんだ……」

妻は、滅多に見ないそんな私の様子に驚いたのか言葉を繕いながら、

「……、そうよね、うちの二人の娘は、パパとママのDNAで幸せに暮らしているもんね!」


 少し怒るような口調で言ってしまったのは、少々反省であったが、

何が幸せで不幸せ? なのか。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 どんな事が幸せ? 不幸せ?

それさえも解らなくなって来てしまう時代なのだろうか?


 奇麗な桜・紅葉、不如帰ほととぎす朱鷺とき、カブトムシ・クワガタ……等々、

そんな光景を観て勝手に喜んでいる、人類が安心だから? そう思うのか?、

それは、今だけの話であろう。


 読んで下さる方、ありがとう御座います。

次回作でENDになると思います……、たぶん? 。

(頭。ぺこり)


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