大通り
「…セラ・エンリオ…それが私の名前…。」
やっと姓が分かった。が、今更呼び方を変えても不自然だ。
「分かった。よろしく。」
「話は終わったようだな。それでフロンティアになったら、儂のギルドに入ってくれないかということだが…」
「ああ、入るよ。受かったらだがな。」
「…君の実力なら…余裕…だと思う。」
少しは心を許してくれたらしい。ほんの少しだろうが。
「やってみなきゃ分からん。
あ、そうだ。それでなんだが…フロンティア認定試験の申請をしなければならないんだ。それで道案内をしてくれないか?ついでに武器も買いたい、そっちの道案内も頼む。」
よく考えたらフロンティアって名前…地球では確か…「最前線の」って意味だったはずだが…こっちでは開拓者って意味らしい。実際、この惑星の開拓者は最前線にいるだろうし、変な偶然だな。
「わかったぞ。セラ、頼む。」
「…マスターが行けばいい。」
「儂よりセラの方がいい店を知っているだろう。シュウもむさいおっさんと行くより、セラみたいな綺麗な女の方がいいだろ?」
それはそうだが…答えにくい質問をするな!
「…どっちでも構わんが。」
「…分かった。…新しい仲間のの為にそうしてあげる。…でも…最後のは余計。」
本当に少しだけ心を許してくれたみたいだ。
多分、これが普段なのだ。まあ、新しく仲間になる可能性が高いからだろうが…
「よろしく頼む。」
「うん、分かった…ついてきて。」
そして、俺たちはギルド『神速の不死鳥』を出た。どうやらここは入り組んだ路地裏のどこからしい。俺は周りを見ながら道を覚えようとした。
…
沈黙が続く。
…
まあ、でも俺は静かなのは嫌いじゃあない。どちらかというと好きなほうだ。俺はその静けさに逆らわず、セラについて行った。
大通りに出た。流石にガヤガヤとしている。まあ、でも賑わっている。少し遠くには城が見える。恐らくあそこが街の中心だ。その付近には大きな建物がそれなりに見える。その中に、一際大きい建物がある。恐らくあれがギルド連盟の建物だろう。
セラはどこかオロオロしている。理由はよくわからないが、話した方がいいだろう。
「セラ、さっきからお前のことセラと呼んじゃっているが、このままでいいか?ダメならエンリオとかに呼び方を変えるが。」
「…大丈夫。気にしない。もう50代のおっさんに言われているから。まだシュウみたいに若い人に呼ばれる方がいい。」
「そりゃそうか。分かった、それじゃあ今まで通りセラって呼ぶな。」
「分かった。」
「そうだ、セラはフロンティアなんだろ。何級なんだ?」
「C」
「へぇー、なるのは大変そうだ。」
「そんなことない…シュウなら多分、余裕。」
「そーいや、俺が助けられたとき、モンスターが燃えてたってことは火の系統ってことか?」
「そう。でも…私は基本この剣で戦う。あの時はタイミングがタイミングだったから、魔法を使った。」
「すげぇ…コントロールいいな。」
「あんなの、慣れれば普通。」
いつの間にか、オロオロはしなくなっていた。恐らく、何を話したらいいか考えてオロオロしていたか、人見知りなのに、周りの人に見られてオロオロしていたかとかそんなんだろう。
なにせ、この人は凄い綺麗なのだ。自然と視線が集まる。軽く説明すると、顔立ちはかなり整っているが、胸はさほど主張はしていない。が、この人の体型に合っている。
マイペースだから少し話すだけでも気が紛れるのだろう。
「失礼は承知だから答えなくてもいいが、何歳なんだ?」
「…17」
「やっぱ、似たような歳か。」
「シュウは?」
「俺?俺は16だ。」
そんな半分どうでもいいようなことを話しながらギルド連盟へと向かう。距離は後少しだ。