開始
俺はギルド連盟の建物の中に入った。人がごった返しているかと思っていたが、キッチリ列が出来ていた。まあ、かなり長いんだが。どうやら、この建物の奥に広い会場があるみたいだ。
受付の後に全員がそっちに向かっている。広い会場じゃなきゃこんなに人は向かわないだろう。
それにしても列長い…。暇だ。
こういうときは周りでも見ているのが一番だ。周りにはやる気溢れる人達ばかり。あれ?もしかして、やる気ないの俺だけ?
いや、そうでもないらしい。目の前の同年代っぽい女性が凄い勢いで、沈んでる…。「なんでこうなったんだろう」とかボソボソ言っている。なにこの人怖い。見た目は可愛いが、髪型はボブで小柄。小動物のような可愛さだ。
こういう変な人もいるんだ…。
まあ、でも怖いから触れないでおこう。触らぬ神に祟りなし。
とりあえず…待とう。他にはまあ、変わったやつは見当たらない。まあ、まだどっかにいるかもしれないが、まあ今、建物内にはいないらしい。いて当然、むしろいない方がおかしい。
時間帯的に真ん中だ。この辺りはまあ、普通なやつが多い。
最初の方は無駄にやる気あるやつ、最後の方には、やる気のないやつ、または寝坊こんな人達が多いのが大抵だ。
そんなこんな考えているうちに、列は進むが、俺は全然進めない。それはなぜか。答えは簡単だ。目の前のヤツが進まない。まだボソボソなんか言っている。
触れないでおくつもりだったんだけどな…。仕方ない。
「あの…すまんが前に進んでもらえるか?俺はまだしも、後ろが怖いからよ。」
そう、後ろの奴等がメッチャ睨んでる。いつ怒鳴るかわからない。
「あ、すいません!う…ホント、すいません!」
俺の方を向いて頭を下げて謝ったら、俺に頭をぶつけた。
なに?相当なドジっ子?まあ、いいや。
「あ、うん。とりあえずそういうの後でいいから。後ろの人、メッチャ睨んでるから。」
「すいません!」
その人は急いで前へ行く。
まあとりあえず一件落着ということで。
「先程はすいませんでした。頭、ぶつけてしまって…。」
「いや、別に気にするな。」
「いいえ、私が気にします。後でなんか奢らせてください!」
「そんなこと言われても試験だしな…。」
「あ、そうでした…。すいません…。え、え~と、じゃあ…」
「仕方ねぇな…。んじゃ、あのジュースなんか奢ってくれ。」
俺は自動販売機のようなものを指差した。多分、原理だけは違うだろうが、操作は変わらないだろう。
「え、あの、でもそれじゃあ…」
「俺が良いって言ってるから良いんだよ。」
「は、はい。分かりました。」
お礼が足りないとでも言いたかったんだろう。
「とりあえず、これが終わってからな。」
とりあえずこれは出席確認みたいなものだ。すぐ終わる。
どんどん列が進んでいく。まあ普通に進めばこんなもんだろう。嫌みで言ってやろうかとは思ったが、やめといてやろう。
既にスゴく落ち込んでるし。
そんなこんな考えているうちに前のやつが先頭になる。
そーいや、名前聞いてねぇな…。後で聞こう。
「2670851番、メルディ・キマレイトです。」
聞くまでもなかった。キマレイトの受付は終わる間もなく、俺は別の窓口へ。
「2671524番、シュウ・カゲミヤだ。」
俺は案内され、俺の分の受付は終了。
キマレイトも終わっていたらしく、待っていた。
「では、ジュース買いに行きましょうか。」
しっかり覚えていた。忘れていることを期待していたが、まあ普通に覚えていた。
今は9:50ちょい。まあ、時間的には余裕ってことだ。
「ああ、頼む。」
とりあえず自動販売機へ。
「どれにします?」
「キマレイトのオススメで頼む。」
「はい。…って、あれ?私、名のりましたっけ?」
「名のってないが。」
「そうですか…って、えー!じゃあ、なんで名前知っているんですか!?」
「声が大きい。静かにしろ。」
「す、すいません…。」
こいつが鈍くて助かった。一度見てみたかったんだよな。こういう反応。
「受付のとき、受験番号と名前言ってたろ。」
「それで…ですか…。」
「そうだよ。ってか、早くジュース買ってくれ。余裕があるとはいえ、時間が押してんのには変わりねえんだ。」
「はい…。すいません。」
キマレイトはジュースを適当に買った。俺に手渡され、俺はそれを開け、飲んだ。味は普通だった。
「あ、それで尋ねたたいことがあるんですが。」
「俺の名前か?」
「はい」
「俺の名前はシュウ・カゲミヤだ。よろしく。シュウと呼んでくれ。」
「シュウさんですね。私も一応なのっておきます。メルディ・キマレイトです。私もシュウさんとお呼びするので、メルディと呼んでください。」
「分かった。」
こっちの惑星に来てから下の名前で呼び捨てにしていることが多い。なんでこうなったんだ?ローのおっさんのせいか。そういうことにしよう。
「貴方は何も聞かないんですね…。」
「なんのことだ?」
「さっき、ボソボソと私が呟いていたことです。私に声をかけられたんだから、聞いてますよね…。すいません。」
「ああ、あの事の理由か。別に聞く必要はねえだろ。」
「そうですか?聞かれると思っていました。普通、気になることだと思いますし…。」
自覚してたのかよ。だったら、やんなよ。
「そりゃあ、まあ普通は気になるだろうな。ってことは俺は普通じゃねえことになるが。」
「そうなっちゃいますね…すいません。」
メルディ、お前…何回謝ってんの?
「まあ、俺もなんでこうなったかわかんねえし、人のことを言えた義理じゃねえってことだよ。」
俺は立ち上がり、こう言う。
「時間だ。行くぞ。」
それは、せめて試験終わるまで付き合ってやろうという覚悟の表れだった。
「え、あ、はい。」
時刻は10:10。試験開始まであと10分だ。




