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行動目標 就寝

たいっへん長らくお待たせしてしまって申し訳ありませんでした‼

本当はこれの倍くらいの長さで一話にしようと思っていたのですが、これ以上お待たせするわけにもいかないので二つに分けさせていただきました。

二千一七年十月一日 午後四時


 寮を飛び立った後、スイミングスクールへ向かう予定だったが、暗くなる前に夜を明かせる場所を確保しようというナナの提案もあり、ヘリは寮とスイミングスクールのちょうど中間あたりにあるグラウンドに着陸していた。

 ここは、グラウンドと言ってもとんでも無い広さなのだが、周りを高いフェンスに囲まれており、扉も施錠することが出来、さらにもしもキラーに侵入されたとしても中心地点まで距離があるので、最も安全だと判断した。(ナナが)

 で、今オレ達は、そのバカみたいに広いグラウンドの外周にあるフェンスを二手に分かれて施錠して回っている所だ。

 グラウンド移動用のバイクを一台見つけたので、オレは一人で右回りに、残りが機材運搬用の軽トラに乗って左周りに移動している。

 一部のフェンス沿いにキラーが居たので、89式とその予備マガジンを4本、ポーチに入れて。

 向こうにはタクヤとナナがいるので、戦力的には大丈夫だろう。

 (むしろオレ一人でいるのが心配だが、まぁなんとかなるだろう)

 途中、何回か向こうから銃声が聞こえてきたが、どうやら大丈夫そうだ。

 そう言うこちら側も、7つ目のゲートにキラーが4体ほどいたので発砲した。

 ダットサイトもあったのだが、調整がうまくいかなかったので今ははずしている。

 あとでナナに調整してもらおう。

 アイアンサイトでヘッドショットは難しいので、胴体に2発ずつ射撃した。

 2発外したのだが、マガジンにはあと20発残っているので、リロードはせずに先へ進む。

 その後、さらにいくつかのゲートを閉じ、最後のゲートへたどりつく。

 が、最後のゲートには、十数体のキラーが群がっていた。

 即座にバイクを停め、銃を構える。

 が、すでに辺りは薄暗く、目標がしっかり見えない。

 それでも撃ち続ける。

 そこでナナ達が合流し、何とかキラーを抑え、ゲートを閉じることが出来た。

「帰りはそっちに乗せてくれ。さっき停めた時にバイクが故障したみたいなんだ」

「うん。じゃあ後ろに乗って」

ナナに言われ、軽トラの荷台に乗る。

 荷台にはタクヤが乗っていて、ケンは中に乗っているようだ。

 「ケン、バラの弾持ってたよな。適当に渡してくれ」

「どの弾だ?」

「5,56ミリだ」

「だからどれだよ」

 ケンには早急に各名称を覚えてもらった方がよさそうだ。

「細長いやつの短い方だ」

「ああ、これか」

ケンからバラの弾を受け取り、残弾がわずかとなったマガジンに込める。

 が、スピードローダーが無いので指が痛い。

 そう言えばナナが、タクヤが弾込めがうまいと言っていたな。

「タクヤ、これ頼む」

 タクヤに弾とマガジンを渡す。

 タクヤは無言でそれらを受け取った。

 タクヤの弾込めは、とにかく早かった。

 たぶんスピードローダーを使うよりも早い。

「できたぞ」

あっという間に込め終わった。

「ああ、ありがとう。にしても早いな。なんかコツがあるのか?」

 今後のために是非教えてもらいたい。

「無駄な力を抜く」

 どうにも真似できそうにないものだった。

 それから少しの間、とくに会話も無く、トラックに揺られていた。

 無事にヘリまでたどり着いた。

「夜はヘリの中で寝るのか?」

 ケンが問いかけてくる。

「いや、テントを張ろう。ヘリの中で寝るのはきつい」

倉庫で見つけたテントがあったので、それを張る。

しかしテントは小さく、頑張っても2人しか入れそうになかった。

「どうするよ。テント2つしかないぞ?」

男女は分けた方が良いのではないかという意味で問いかける。

「無いもんは仕方無いでしょ」

 ナナが言う。

「じゃあどう分ける?」

 ケンが会話に混ざる。

「ん~、じゃあケンとタクヤはそっちで」

「いいのか? オレと一緒で」

「あの二人よりマシ。それとも君一人でヘリで寝る?」

「一緒でお願いします」

エンジンの掛かっていないヘリの中はとにかく寒い。

「ちょっと早いが、メシにするか。ケン、何がある?」

「なんでもあるぞ。なんか言ってみろ」

「じゃあ焼肉」

「ほらよ」

 絶対にないと思って言ってみたのだが、真空パックの肉と米、生石灰のセットを渡された。

「二人は?」

「じゃあ私は……和食ある?」

「えーと、何かあったかな……なんでもとはいえ、洋食中心だからな~」

ケンが荷物を漁る。

「カンメシあっただろ」

「カンメシってどの缶だっけ?」

「戦闘食糧一型だ」

「ああ、あったあった。タクヤはどうする?」

「……和食」

「ほらよ。俺は……カレーでいいか」

 各々の夕食を調理し、食べ始める。

 だんだんと暗くなって来ていたので、地下から持ってきたLEDをランタン型にして置いている。

 「これ食べたらもう寝るのか? 俺まだ眠たくないんだけど」

「確かに寝る分には早いけど……他にすることも無いだろ。ケイタイは落ちてるし」

「でも何かあるだろ? なにか…………」

「じゃあさ」

ケンと二人で寝るまでに何かすることは無いかと話していると、ナナが入ってきた。

「ん? 何かあるか? トランプくらい持ってくればよかったと今更思っているんだけど」

「じゃなくて、よく動いたし、お風呂、入りたいんだけど」

なるほど、それは思いつかなかった。

 だが……

「風呂なんてないだろ?」

 今いる場所は地獄の中に作った安全な砂地オアシスの中、あるのは持ちこんだものと軽トラ、壊れたバイク、吹きさらしの体育備品くらいだ。

「シャワールームなら北の出口からちょっと行った所にあるでしょ?」

「わざわざ外に出るのか?」

「大丈夫、周辺に人影はないから」

「お前にはレーダーでも備わってるのかよ……」

「同じような事ならできるけど?」

 こいつならほんとに出来そうだから困る。

「ケン、タクヤ、お前らはどうする? 別にここに残ってもいいんだぞ?」

 会話に入っていない二人の意思を確認する。

「俺もシャワーは浴びたいかな……汗かいたし、なによりも返り血浴びてるし」

「そう言えばオレも浴びてたな、返り血」

今まで生きる事に夢中で忘れていたが、きれいに拭いたとはいえ、やはりいい気持はしない。

 ちなみに、タクヤは特に何も言っていないが、恐らくオレ達が行くならば来るだろう。

「シャワーか。これはサービスシーンのフラグか!?」

「「「だまれ‼」」」

 …………タクヤは特に何も言っていないが(以下略)

「さて、歩いてでも行ける距離だけど、一応軽トラに武装して、それで行きましょ」

 と、いう事で、急遽軽トラを武装トラックにすることになった。

 個人では使いにくいだろうと、ほとんど持ってこなかったMINIMI軽機関銃を運転席の屋根に固定し、荷台には、フラッシュライトとナナに調節してもらったダットサイト付きの89式装備のオレとタクヤ、それに予備の銃を積んだ。

「着換えはいくらでもあるからいいとして、下着はケンの部屋から持ってきたやつしかないけど、ナナ、サイズとか大丈夫か?」

「まぁ大丈夫でしょ。最悪ショーツだけあればいいし」

「そんなもんなのか? まぁ本人がいいならいいけど……」

「さて、出発しましょう」

全員が武装トラックに乗り込み、ゲートを目指す。

 ゲートに着いたらオレが一旦降りてゲートを開ける。

 もちろん閉める事も忘れない。

 索敵を最優先に、慎重に、かつ遅すぎないスピードで進んで行く。

 5分ほどでシャワールームに着いた。

 シャワールームと言っても、ポツンとコンクリート造りの長方形の建物があるだけで、周りは茂みに囲まれている。

 周辺のクリアリングを済ませ、中へ入る。

中には個室が3つあった。

「二グループに分けるか。まずは……」

「じゃ、男グループ先で」

「でも周辺警戒のために二人づつの方が良くないか?」

「私一人で十分、でしょ? 89式貸して。屋根登るから」

 確かにこいつなら360度、全てを警戒出来そうだ。

「じゃぁ頼んでいいか?」

「任せなさい」

 と、いう事で、男性陣が先に中に入る。

「は~、風呂っていいよな。血と汗と、ほかにもなんかいろいろ流せてさ」

「ナギサってたまにおっさん臭い事言うよな」

「昔からよく言われるよ」

 死んでしまった世界の中でも、やはり風呂はいいものだ。

 他愛の無い会話を2,3言しながら、安らぎの時間が過ぎてゆく。

 ほんの十分ほどであったが、良い時間だった。

「おーい、上がったぞー」

 声を掛けると、ナナが屋根から飛び降りてきた。

「うぉっ! あぶねーなー」

 危うく飛び蹴りをくらう所だった。

「大丈夫。君が避ける事も計算して飛んだから」

 全く……。

「じゃ、警戒よろしく」

 そう言って銃をオレに手渡し、中へ入って行った。

「さて、オレ達はナナみたいにはいかないからな。ケン、双眼鏡と拳銃もって上登れ。タクヤは裏、オレは表だ。いいな」

「分かった」

 タクヤも無言でうなづく。

主にオレとケンが会話をしながら、時間は過ぎてゆく。

 この季節、外気は冷たかったが、さすが自衛隊、防寒はばっちりだった。

「あのさ……」

 裏側にいるので直接姿は見えないが、珍しくタクヤが口を開いた。

「ん? なんだ?」

 タクヤの意思表示は珍しいので、しっかりと聞いておく。

「やっぱり……覗くよな」

 …………そうきたか。

「あのなぁ、まぁ考えなかったわけじゃないが……その好奇心は自分を殺すぞ?」

「それでも、俺はやらなくちゃいけないんだ!」

「それっぽく言うな! おいケン、お前からも何か言ってやれ」

「……覚悟は出来てる」

「アホ。こんなとこで死んでどうする。それよりちゃんと見張れ」

「はいはい。…………今、北西で何か動いたような気が……」

「おいおいマジかよ……」

 武装トラックから双眼鏡を取り出し、北西の方角を見る。確かに何か、茂みの中に影のようなものが動いたような気がする。

「タクヤ、あれ、何か分かるか?」

 タクヤなら、ナナほどではないとしても、もっと効率よく情報を集められると思ったからだ。

「…………」

「どうだ? 何か見えるか?」

 聞くと、双眼鏡を手渡された。

 タクヤの指さす方向を見ると、さっきよりもしっかりと、それも複数の陰が見えた。

「これは……間違いないよな」

タクヤがうなずく。

「北北西、敵影多数‼ こちらへ接近中‼」

 叫び、銃を取る。

「ケン! 降りてこい! トラックのエンジンを掛けろ! タクヤ! 出来るだけ足止めしてくれ‼」

 ナナにも知らせるべく、シャワールームへ入る。

「うぉっ!? 悪い着換え中だったか」

「いい。それより状況は?」

 ナナは手早く着換えながら、いつ持ちこんだのか、拳銃を既に用意していた。

「えーと、北北西に複数の敵だ。こっちへ向かってる」

「それは分かってる。距離は?」

「悪い、そこまで分からない」

「そう。ならいい。すぐにヘリまで戻るから準備して」

ナナとともに外へ出、トラックの荷台へ飛び乗る。

 既にケンとタクヤは乗り込んでいた。

 キラーもかなり接近している。

 MINIMI軽機関銃を屋根から外し、構え、弾幕を張る。

 すぐさまナナが車を走らせる。

キラーとの距離は離れ、何とか逃げ切ったようだ。

ゲートを施錠し、ヘリへと戻る。

「ふぅ。せっかくシャワー浴びたのに汗かいちゃったじゃない」

ナナが愚痴を漏らす。

「無傷で帰ってこれただけ良かっただろ」

「それはそうだけど……あ、そうだ。外で変なことしゃべってたでしょ。もし実行してたら今頃命は無いと思いなさい」

 聞こえていたか……相手が相手なだけにごまかすのも無理そうだ。

「は、はい」

とりあえずそう言うしか無かった。

 戦闘で疲れた上、今度こそなにもやることが無かったので寝る事になった。

「じゃあケン、タクヤ、明日の朝は目覚ましも何もないから何時とは言えないけど早めに起きろよ」

「分かってるって。じゃ、おやすみ」

 テントは緊急事態に備えてぴったり並べて張ってある。

 ケン達とおやすみを言って、自分もテントに入る。

「お前朝って起きられる?」

 隣のナナに話しかける。

「好きな時間に起きられるけど? 何時がいい?」

 羨ましい。

 オレは朝は弱いからな。

「そうだな……七時くらいでいいんじゃないか?」

「分かった。じゃあ七時ね」

 その後は会話も無く、静かに眠りについた。





ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

おかげさまで「手乗りネコ耳少女観察日記」のアクセス数も順調です。

まだ読んでいない方がいらっしゃったら是非ご覧ください。

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