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行動目標 避難

たいへん長らくお待たせしました‼第二話になります‼今更ながらこの話はビミョーに未来設定です。まあ、あまり未来っぽくはならないと思いますが。まあとにかくっよろしくお願いします‼

二〇一七年十月一日 午後一時三十五分

オレとタクヤはケンに先導され、元来た廊下を走っていた。

「おいケン! 逃げるのはいいけどどこに逃げるんだよ」

逃げるのには大賛成だが、目的が無いまま走りまわるのは危険だ。いつあの変な奴らに出くわすか分からない。

「ちょうどこのフロアに実験動物を飼ってる部屋がある。脱走防止用に扉が二重になってるからあれが来ても少しは時間が稼げる」

「ちょっと待て、時間が稼げたとしてもそこから動けないんじゃ意味無いだろ」

すぐにこの事件が解決するのなら時間を稼ぐだけでいいのだろうが、今回のこれはどう見ても異常だ。被害者が加害者になるなんて、しかも人に噛みつくなんて聞いたことが無い。

そんなことを考えていると、

「そこから旧避難所に行く」

と答えた。

「旧? そんな場所知らねぇぞ。しかもなんでわざわざ旧なんだよ」

「それはな」

ケンの答えをまとめると、この学校施設は今でこそ巨大なものになったが昔は普通の学校だったらしい。しかし財政の悪化に伴い存続があやしくなった。そこで経営を民間に委託した。もともとその学校は東京都と千葉県の県境付近にあり、都市再開発計画で付近が更地になることが決定していたこともあり、超大幅増改築をした。その際、県境を越えたので運営経費を東京、千葉両方の教育委員会からもらえるようになり、さらに増改築をした。それが去年の話らしい。で、避難所は学校が最初期の三倍ほどの大きさになった時に造られたのだが、そのあとすぐにまた増築したため、ほとんど使われないまま新しい、有事の際には一般人の避難所としてつかえるほど大規模なものを造ったらしい。その名残で3階までのフロアに所々塞がれたり隠されたりはしているが入り口が残っているらしい。

ちなみに、こいつが異常なまでに詳しいことには特に驚かない。こいつはかなりの歴史好きだ。この学校の《歴史》に詳しくても不自然ではない。

「で? だからなんでわざわざ旧なんだよ。新しい方がいいだろ」

「この施設にいる全員がマニュアル通りに動いたら避難所は人でいっぱいになるだろ? もしそこにあれが現れたら大参事だ」

「なるほどな。で、その旧避難所にはどうやって行くんだ?」

「だから、動物飼ってる部屋から行くんだよ」

う~ん、よく分からないがとりあえず付いていくことにした。今もどこからか悲鳴が聞こえてくる。被害はどんどん広がっているようだ。

ちなみにタクヤがずっと黙っているのはいつものことだ。女の話以外はほとんだ話さないし、テンションもかなり低めだ。しかも超冷静になる。これはもう二重人格と呼べるのではないかと、オレはそう思っている。

「ここだ」

ケンが立ち止まったそこには強化くもりガラスのスライドドアがあった。ここまで来ることはほとんどないからもちろん入室も初めてだ。

「おい、どうやって開けるんだ?」

こういう部屋には普通鍵が掛かっている。

「あ……」

おい。考えてなかったのかよ。

「えっと……」

ケンが言葉を詰まらせたままとりあえずスライドドアを横に引いてみる。

すると普段はロックされているはずのドアが開いた。

「よかった。とりあえず入ろう」

ケンが先に入る。

二枚目のドアもロックが掛かっておらず、すんなり入ることが出来た。念のため内側から施錠しておく。

「おい、あれ」

ずっと口を閉ざしていたタクヤが一つの方向を指さしている。その方向を見ると、鉄製の檻が一つ開いていた。何が入っているのかを示すタグは掛かっていなかった。

「何かが脱走したのか?」

辺りを見渡してみるが何もいない。

「そんなのほっといて早く逃げるぞ」

ケンが急かすので捜索は中断した。

「どっから行くんだよ」

見た所入り口らしきものが見当たらなかったので聞く。

「ここさ」

ケンが指さしたのは壁だった。

「ここって、壁じゃねぇか」

ケンが指した場所は紛れもないただの白い壁だった。

「ただの壁じゃぁ無いんだな」

そう言ってケンが壁の端っこを指で押した。するとそこから取っ手が出てきて、さらにそれを引くと壁の一部がずれてもう一枚の灰色の塗装のされていないコンクリートの壁が出てきた。

その中央には鉄でできた薄いふたのようなものがあった。そのふたは上に蝶番が付いており、ケンがそれを開けた。

「ほら、ここから地下に行けるんだよ」

ふたを開けると下に続く、人一人がやっと通れるような細い穴が下へと延びていた。

「ここからって、え? ここに入るのか?」

明かりも無ければ下も見えない、そんな所に入れって言うのかよ。

「ああ、この滑り台を滑れば旧避難施設だ」

正直行きたくない。 

「おい早く行けよ」

ケンが急かす。オレから行くのかよ。

仕方ない。ちょっと怖いが行くしかないか。

ちなみに順番はオレ、ケン、タクヤになった。

いざ滑ってみるとかなり圧迫感があって、それなりにスピードも出た。少しするとやっと出口が見えてきた。

そこにあった空間はせまく、今どきあまり見なくなった茶色い電球が数個あっただけなので薄暗かった。

「うわっ!?」

その空間には無いと思っていたものを部屋の中でも一段と暗い場所に見つけ、かなり驚いた。いや、普通に知っているものなのだがまさかこんな所に……

「おっと」

この思考回路の中でうしろから突っ込んできたケンとタクヤに気づけたのはほぼ奇跡だ。

「おいナギサ! あぶねぇじゃねぇ……か」

ケンも気づいたらしい、部屋の奥の机で一人、今入ってきたオレ達に目もくれずに本を読んでいる水色を基調としたセーラー服を着た、少し小柄でセミロングの赤いメガネを掛けた少女(?)の姿に。もちろんタクヤはノ―リアクション。

とそこまで考えた時、その人物がパタンと本を閉じ、目線をこちらに合わせた。

「少女の後にハテナはいらない」

「いやだってさ、18で大学生になると……」

そこまで言うと彼女がこちらを睨んできた。すごく怖い。

「いや、すいません。18は少女です」

とりあえず謝っておく。

(ん?)

「て言うか何で分かったんだよ、ナナ(・・)」

いきなり超能力的な力を披露した少女の名前はナナ。オレのほぼ唯一の女友達である。今オレの思考を読み取ったように、ナナには何か特殊な力があるらしい。

「特殊って言うほどのものじゃないでしょ」

ほらな。

「十分特殊だよ。お前いつも他人の思考読んでんのか?」

だとしたら大変だ。考えてることダダ漏れじゃないか。

「ううん、普段からそんなことしてたら頭がいっぱいになっちゃうからね」

ならよかった。

「で? ここにいるってことはあれを見てたんだな?」

オレ達よりも早くここにいたのだから最初の事件を見ていたのは間違いないだろう。

「うん。あそこの3階から全部見てた」

「全部ってことはああなった原因も知ってるのか?」

だとしたら助かる。原因不明じゃ手の打ちようが無いからな。

「知ってる。彼女はヘビに噛まれた」

「ヘビ?」

聞き返したのはオレではなく、部屋を漁っていたケンだ。

「そう、ヘビ。ヘビに噛みつかれてああなったの」

「ヘビってもしかして飼育場から逃げたやつか?」

飼育場にあった、開いていた檻。ナナが知っているかどうかは分からないがもしやと思い一応聞いてみる。

「知ってたの? たぶんあのヘビは脱走した奴ね。なにせあのヘビは自然界にはもういないはずだから」

「それってどう言う……」

「一か月ほど前、日本各地でヘビに噛まれたって言う報告が多発したのは覚えてる?」

「ああ覚えてる。新種のヘビだったよな」

あの頃は新種やら人に噛みついたやらで、ニュースになってたからな。

「あの時ヘビに噛まれた人の体調が悪化したことからヘビに毒があったと考えられた。噛まれた人はすぐに血清を投与されて助かった。で、自衛隊と警察、研究機関が合同で生息場所を特定しに急いだ。幸い生息できる環境がごく限られていたおかげで、捕獲は順調に進んだ。最初の個体を調べた結果、その新種は外来種が変異したものだという事が分かった。そのヘビの個体のうち一匹がここにあったの。それが脱走し、人に噛みついた結果ああなった」

ここまで聞いてきたがとても信じられない。まさか原因がヘビだったとは。

「じゃあそのヘビの毒でああなったってことか?」

「ほぼ間違いないと思う。しかもあのヘビは一匹しかいないはずなのに同時に3か所以上で事件が起こった。これは私の仮説なんだけど、前に噛まれた人も同じようになったんじゃないかって」

その仮説が合っていたらやばいな。

「たしか噛まれた人は2000人以上だったはず。それが全国各地で同時にああなったとしたら……」

オレは頭の中で想像した。日本の人口が1億2000万人、そのうち、噛まれたのが2000人。しかも全国各地で同時に事件が起こっていたとしたら大変なことになる。

「しかも噛まれたら感染するのか……」

ますます絶望的だ。

「毒だから感染病じゃなくて法律的には伝染病になるけどね」

ナナが訂正する。

「お前のその冷静さを1ミリでいいから分けてくれ……。でも毒なんだよな? だったら体内で生成されることは無いはずだろ? たとえ最初に噛まれた時に入った毒を他人に移せるとしても、無限には続かないはずだろ?」

ならば持っている毒を使い果たせば害は無くなるはずだ。

「私に聞かれても……。でも毒で性格まで豹変するなんて普通じゃないでしょ。だとしたら毒が切れるかどうかもあやしいけどね」

ナナの推測はほとんど事実だからな。望み薄か。

「じゃあどうするんだよ」

ナナに聞くと、

「とりあえず今できることをする」

と返ってきた。

「今できることってなんだよ」

少しいらだちがつのるのを感じながらも質問する。

「優先順位的に、まずは情報収集かな」

そう言われてみてケイタイを取り出してみたが、地下だったせいか圏外だった。それどころか電源も入らない。まあ圏外なら電気がきてないのは当然なのだが。一応理由を説明すると、今大多数の人が使っているコレは、旧型と比べるとかなり軽いし、薄い。おまけに向こうが透けて見える。電力は無線で送られてくるのでバッテリーもいらない。なので圏外=電源オフなのだ。つまり今は使えない。

「おーい、いいもん見っけたぞー」

ずっと部屋においてあるものを漁っていたケンが何かを持ってきた。それはテレビだった。性格には、ラジオにモニターを付けたような特に小さなテレビ。

しかも電話線に接続する今どき珍しい有線タイプの。

「これで情報は集まるだろ?」

「ナイスだケン」

オレ達はテレビの周りに集まり、電源を入れた。

するとなぜかは知らないがアメリカ大統領が映っていた。

『This world is over the other. The world is dying. Guys to kill the world! !』

と叫ぶように言ったきりアメリカ合衆国と国際連合の旗しか映らなくなった。

「ナナ、なんて言ってたんだ?」

英語がかなり苦手で、ほとんど聞き取れなかったので聞いてみる。

「え~と、世界が……」

「この世界はもう終わりだ。世界が死につつある。やつらが世界を殺す」

翻訳に苦労しているナナに代わってケンが答えた。

「お前英語得意なんだな」

「まあな。歴史文献の中には日本語に翻訳した時に微妙に意味が違ってくる事があるからな。ほかにもいろいろいけるぞ」

こいつ……やるな。

「ありがと。でもやつらが世界を殺すって言ってたって事は、日本だけじゃないのね。しかも銃声も聞こえてたし」

「銃声? そんなの聞こえなかったぞ」

「え? 聞こえなかった? 357SIG弾と5,7ミリ弾と9ミリ弾の音。大統領だしシークレットサービスかな」

「まあそのラインナップならシークレットサービスだろうけど……何で聞き取れるんだよ……」

いや、こいつの「能力」の1つ何だろうけど……すごすぎるだろ。

「でも銃声か、ってことはあっちはかなりヤバいみたいだな」

大統領の後ろで銃を撃ってるってことはもう逃げる場所も無いぐらいなのか?

「他のチャンネル回してみろよ」

日本国内の状態の方が今は重要だからな。

今度はニュース番組が映った。しかし人は映っておらず、テロップが流れていた。


「アメリカ合衆国大統領命名の「ワールドキラー」による被害は世界中に広がっています。現在、警察、自衛隊により事態の収束を図っていますがなおも事態は悪化しています。治安維持部隊の指示があるまで自宅待機して下さい」


これが何度も繰り返されているだけだった。

他のチャンネル変えると、大通りに設置された音声の無い、固定カメラのライブ映像が流れていた。しかしそこに映っているのは大通りの人の流れではなく、先ほどテロップに出ていた警察と自衛隊混合の治安維持部隊が作ったであろう、ガードレールやらパトカーやら人員輸送車やら戦車やら。とにかく寄せ集めで作ったような通りを塞ぐバリケードに押し寄せる奴らの流れだった。

治安維持部隊もなりふり構ってられないようで、奴らに向けて発砲、手榴弾の投擲をしている。

「これが平和の国日本かよ……」

ケンが驚愕の表情でつぶやいた。

まあ確かに、街中で発砲なんてめったにどころか全く無いからな。

「ん? なんだこれ」

そんなことを考えているとチャンネルを回していたケンがその手を止めた。

「どうした?」

オレとナナが画面を覗き込む。

画面はいくつかに分割され、それぞれ別々の場所を映しているようだった。

「これは……」

ナナの言うとおり、画面に映っているのはどれも見覚えのある場所だった。間違いなくここの敷地内だ。

「監視カメラだな」

「そうみたいね」

しかし先程のライブ映像と同じく、そこに映っていたのは地獄絵図だった。

ある画面では、オレ達が遭遇したように奴らが人に噛みついていた。

またある画面では噛まれた人を助けようとして自分が噛まれていた。

奴らが噛みつく場所は特には決まっていないようだが、頸動脈を噛まれている者が多かった。

それゆえ、あたりは血まみれになっていた。

「これは……ひどいな」

奴ら、ワールドキラーの映っていない画面は一つとして無かった。

一通り見終わり、またチャンネルを変えてみる。

「っ‼」

今までに見たのも十分悲惨だが、そこに映っていたのはもっと悲惨だった。

たくさんの人がいる所にワールドキラーが流れ込むように入ってきて、そこの人たちを襲っている。その場所は……

「避難所、か」

本当に行かなくてよかった。ケンに感謝だな。

「このまま増え続けたら外に出られなくなるよ?」

ナナが言う。

「ってことは、今すべきことは一刻も早い脱出だな」

目標は決まった。後は実行するだけ、とそう簡単にはいかない。火災や自然災害ならルートさえあればそれでいいが、今回はそうはいかない。ルートが開けたとしてもそこに奴らがいたら通れないばかりか襲われる危険性まである。

とにかく少し準備が必要そうだ。



こうしてオレ達の行動目標は、避難から脱出に変わった。


ここまで読んでいただきありがとうございますっ‼次回からはもっと早く投稿できるように頑張ります‼リメイクなんですが、第四話辺りにつながるように書いていますのでそのあたりから数話分はかなり速くなると思います。どうかそこまでお付き合いください‼


こちらもよろしくお願いします‼

http://ncode.syosetu.com/n0081br/

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