行動目標 生存 2
大変長らく…………ってこれ、もしも一気に読んでいる人がいたら毎回毎回しつこいとか思われそうですが、今回も長らくお待たせして申し訳ありません。その上短いです。重ね重ねすみません。
あの後、二階の一番階段に近い教室だけをクリアリングし、最低限の荷物だけを運び込んだ。ナナに食事をさせたかったのだが、あのあと直ぐにまた眠ってしまった。
俺も疲れが出たのか、昨日は食事もとらずに眠ってしまった。
十月八日午前六時。
目を覚ましたが、まだ窓の外は暗く、不気味なほど物音もしない。傍らではまだナナが静かに寝息をたてている。
昨日は扉を机で塞いだだけだったが、もし校内にキラーがいた場合、扉ではなく窓を破って教室内に侵入してくる可能性も高いため、窓に金網を張るか、せめてガムテープでもあれば良いのだが、机といすだけでは如何ともし難く、仕方が無いので廊下にバリケードを作ることにした。
拳銃を持ってまずは窓から廊下を確認し、安全を確認してから扉を開く。ワイヤーも何もないため、ただ積み上げるだけになるが、それだけに積み方が難しい。とりあえず首ぐらいの高さまで机を積むが、複数体で襲われれば簡単に突破されるだろう。
幸い机はいくらでもあるので、数さえ重ねれば強度を補うことは可能だ。できるだけ早く校内のクリアリングを済ませ、安全圏を確立させたい。
「あ……あの…………」
小さな声が聞こえ、振り返るとナナが起きていた。
「ようやくお目覚めですか。お姫様?」
ナナが再び意識を取り戻したことにほっとし、つい軽口を叩いてしまった。
「えっと、あの……」
「?」
しかし、ナナの反応は予想とは全く違うものだった。なんというか、今のナナからは怯えた少女のような印象を受ける。
「どうしたんだ? ナナ」
そこまで言ってしまってから、一つの可能性を失念していたことに気付く。
仙田さんの死。つい四日前の出来事だった。
もちろん俺も悲しまなかったわけではない。ただ、正直なところ今ここまで生き残ることに必死で、ほとんど意識の外だった。この四日間という時間で、自分の中ではある程度の整理はつけたつもりだ。だが、ナナはどうか。ナナはこの四日間、ほとんどを深い睡眠に費やしていた。昨日目を覚まし、そして今目の前にいるナナの中では、なにか気持ちの整理はできたのだろうか。
ほとんどの人間が死んでいく中で出会った、数少ない仲間。その中でも、ナナは仙田さんとは特に仲が良かったように見えた。
死んだ世界の中で、心を通わせた人間の死。そのショックは計り知れないものだったはずだ。そんな中で、俺は一度、あの屋上でナナの心の傷を抉った。今まで眠っていたのは、再起不能なまでにナナを傷つけてしまったからではないのかと、そう考えていた。
「あの……ここは、どこですか?」
ナナの口から出たのは、意外なほど単純な質問だった。
「えっと、学校……だけど」
俺の答えは間違っていないはずだ。だが、なぜそんな質問をする? いつものナナなら、こんなことをわざわざ聞きはしない。黒板や、窓の外に見える校庭等、ここを学校だと結論づけるには十分な情報があり、それを得るための能力を、ナナは持っているはずだからだ。
そして、俺の感じた違和感は、ナナの次の一言で決定的となった。
「あなたは…………だれ?」
終末へ向けて。




