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世界史最後の大事件

お待たせして申し訳ありません‼ やっと第一話のリメイクが完了しました‼

二〇一七年十月一日 午後一時十五分

「やっぱり王道の曲がり角でぶつかるシチュエーションが最高だろ?」

今俺に話しかけてきている少し幼い顔立ちをしているコイツの名前はケン。自分で言っていて悲しくなるが数少ない親友である。

「そうか? 王道よりも少しぐらいひねってた方が面白いじゃねえか」

オレが言うと、俺の持ってた携帯の通話相手が話しだした。

『お前ら分かってねえな。突然教室に押し掛けてきて「あたしの奴隷になりなさい!」とか言って屋上まで引きづられるとかもう最高じゃねえか。やべっよだれ出てきた』

「「黙れドМ」」

この通話相手の変態野郎がもう一人の親友のタクヤだ。通話なので直接顔を見ることはできないが、少し不良っぽく、もてるらしい。しかし、女子にまでこういう会話をするのでいつも引かれている。

顔は結構いいのにもったいない。

で、オレとケンは今大学の中でもかなり人通りの少ない狭くて薄暗い廊下を歩いている。

理由は言うまでも無くタクヤのせいだ。

講義が終わって次の講義までにかなり時間が空いたので、たまたま時間が合ったタクヤと、屋内にある噴水広場で待ち合わせをしていたのだが、突然コイツから電話がかかってきた。

オレ達が広場に着くまで待てなかったらしい。

まあ広場までは十分ぐらい掛かるからな。

で、こういう会話になることは読めていたのでわざわざ人通りの少ない道と集合場所を選んだのだ。

昼前はかなり人が多い噴水広場だが、ピークが過ぎるとほとんど無人になる。

理由はどこに行くにもここを経由すると余計に時間が掛かってしまうからだ。

以前はそうでもなかったらしいのだが、去年、設備の多くを改修、増築されたおかげで広場は休憩するだけの場所になってしまった。

らしい、というのは俺達は一回生で、去年の大改築の現場は見ていないのである。

で、歩きながらいろいろ話しているうちに今の話題になっていた。

「ケンは、シチュエーションさえ良ければどんな相手でもいいのか?」

さっきの話だと中身にあまり触れていなかったので聞いてみた。

「いやいや、もちろん外見も大事だぜ? ツインテールで俺より背の高いやつが好みだ。あと俺は巨乳派だ」

「そこまで聞いた覚えはないぞ。オレはやっぱり小柄で大人しめの女子がいいかな。胸のサイズは大きくもなく小さくもない、普通が一番だな。髪型はツインテ&ポニテ以外なら何でもいい。でも髪質はサラサラがいいけどな。ちょっと上から撫でたい」

ケンに対抗してオレも自分の好みを言いまくる。

「お前も結構言ってんじゃねえか!」

ケンがいい返してくるがまだあるので言う。

「あ、ボーイッシュな感じのでもオーケーだ」

「好みが二つあるのかよ。って言うかさりげなくツインテと巨乳否定しやがったな!?」

すかさず持論をぶちまける。

「いやだってさ、巨乳と言えばドジっ子だろ?」

ケンがあきれたような顔をしている。

「なんだそのセット……」

と、それまで意図的に無視していたタクヤが大きめの声で話しだした。

『おーい! 俺の好みも聞いてくれよ~』

「「さっき散々変態トーク繰り広げてたじゃねえか‼」」

ケンとシンクロしたな。特に合わせたわけではないのだが。

『うわっぴったりハモってる。なあナギサ~お前なら聞いてくれるよな~?』

うるさいので聞いてやることにした。

「オレに振るなよ。……ったく仕方ねえな。で? お前の好みってどんなのだ?」

「貧乳で鞭で打ってくれる女の子が」

少し気持ち悪かったので通話を切った。

「なぁ、ケン。あいつってあそこまできもかったっけ?」

「今に始まったことじゃねぇだろ」

また携帯が鳴りだした。相手はもちろんタクヤだ。無視するのもかわいそうなので電話に出る。

『いきなり切るなよ‼』

とりあえず、

「いや、だってきもいから」

と答えておいた。するとタクヤが、

「ちょっその理由はひどくないか?」

とか叫んできた。

「おいおい、あんまり叫ぶなよ。周りには誰もいないんだろうな?」

ケンが問いかける。

「うしろに女子が二人いるけど」

「おい! それじゃオレ達の名前まで筒抜けじゃねぇか‼」

と言い返すが、

「何か問題があるのか?」

と返してきやがった。あいつはそう言う所全く気にしないから困る。

どう言えばいいものかと考えていたら突然スピーカー越しに耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。タクヤのものではない、女子の声だ。すかさずタクヤに状況を確認する。

「おい! いったい何があった!?」

しかしタクヤは答えない。ケンも呼びかけるが応答がない。スピーカーからは何か水のようなものが飛び散る音がかすかにだが聞こえてくる。

何か良くない予感がする。俺達はは走り出した。無駄話をしながらも歩いていたのでそんなに距離は無かった。

広場に着くとタクヤはすぐ近くにいた。何かを見つめている。その視線をたどった時に見た光景は衝撃的だった。地面には血が飛び散り、その中心には紺のブレザーを着た女子が血まみれで横たわっていた。出血の量から推測するに、動脈をやられているのだろう。彼女はもう、死んでいた。それだけならまだよかった。その女子の首筋に噛みついている、いや、たった今その肉を噛み千切り、その肉を口にくわえたヤツがいた。おそらくさっきタクヤが言っていたもう一人の方だろう。

そいつが肉片をくわえたままこちらへ、ゆっくりとだが確実に近付いてきていた。

「止まれ、それ以上近づくな!」

ケンが警告するがヤツはそのまま近づいてくる。

近くにあった消火器を手に取り、もう一度警告するがやはり止まらない。どころか、ケンに向かって走り出しやがった。

「ケン! 避けろ‼」

オレは叫んだ。すると奴が進路をオレに変えた。とっさのことに判断が追い付かず、ヤツに押し倒されてしまった。そして、倒れている彼女にしていたように、オレの首筋に噛みつこうとしてきた。必死に抵抗するが体勢があまりにも不利だった。もうだめかと思ったその時、雄叫びとともに鈍い音が響き、ヤツがオレの横に崩れ落ちた。

閉じた瞼を開くとそこにははぁはぁと息を荒くしたケンがいた。持っていた消火器で殴ったようだ。

「助かった。ありがとう」

「なんなんだよ一体……」

ケンがつぶやいた疑問に答えることはできなかった。誰にも分からない。タクヤに聞いた話によると、うしろで話していた内の一人が突然倒れたかと思うと、もう一人の女子に噛みついたそうだ。意味が分からない。分かるはずが無い。なんでついさっきまで仲良く話していた相手に噛みつく。

と、思考が行き詰ったあたりでこの大学の女性教員と警備員がやってきた。たぶん悲鳴を聞いたのだろう。

「君たち! いったい何が……」

警備員が話しかけてきたが、死体と、ケンが持っていた血のついた消火器を見て言葉を詰まらせた。

「君が……やったのか……」

警備員が絞り出した言葉はそれだった。今まで何年仕事をしていたのかは知らないが、実際には正当防衛、過剰防衛になるかもしれないが、状況を知らない人間が見れば殺人だ。そんな現場を見たのは初めてだったのだろう。

「こちらへ来てください」

もう一方の死体の所にいた女性教員に呼ばれ、警備員が、

「君たち、そこから動かないように」

といって向こうへ行った。

「やばいな。18で前科ありか」

けんがつぶやいた。

「いや、正当防衛で済むだろ」

特に気のきいたセリフも思いつかないのでそうとだけ言っておく。しかし次に何を言おうかと考える時間は無かった。

今度は女性教員の悲鳴が鳴り響いた。何事かとそちらを見ると、信じられないことに死んだと思っていた女子生徒が女性教員に噛みついていた。

「おい……やばいぞ」

誰に言うでもなくつぶやいた。

「逃げるぞ‼」

ケンが消火器を捨てて俺達の手を引く。

「君たち‼ 待ち……」

警備員が制止を呼び掛けるがその言葉は最後まで続かなかった。噛まれた女性教員が警備員の首筋に噛みついたからだ。警備員が血をまき散らしながら倒れた。白かったはずの床は赤に染まっていた。


しかしこの事件が歴史に残ることは無かった。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字などがあれば教えてください。

感想、意見などお待ちしております‼


こちらもよろしくお願いします‼

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