行動目標 生還計画
時間さえ取れれば書けるんですよ?
十月六日午前八時三分
残された食糧の半分を消費してしまった。
依然なんの進展もないどころか、混乱していたとはいえナナの心を深く傷つけてしまった。
残された食糧はあと二日分。水は心配なさそうだ。
武器はナナの眠る壁際に投げ捨てられたように置かれた89式が一丁と弾がおよそ三百発。それとナナのヒップホルスターに納められたM360Jが一丁と357マグナムが五十発。手榴弾が一個。
午後一時三十分
少しづつだが、落ち着きを取り戻すことができた。
できるだけ前向きに考えていこうと思う。
まず、敵の数だが、いくら多く見えても無限に沸いて出るわけではない。
少し観察してみてわかったが、バリケード自体に大きな損傷があるわけではなく、現に外側から侵入されているということは無いようだ。
恐らくここにいるのは、元職員が大半だろう。
合流のためにどこかに集まったところ、紛れ込んでいたキラーに襲われたのだと思う。
それに、あの階段で倒した数も決して少なくは無い。
確証はないが、現在施設内には二百体ほどのキラーが残っているのではないかと推測した。
脱出するときに、二百体ものキラーに同時に襲われればひとたまりもないだろう。だが、敵の数が半分なら、生還の可能性は倍になる。敵が四分の一だったら? 十分の一だったら?
そう考えた俺は、すぐに行動に移すことを決心した。
どの道ここにはもう長くはいられない。
89式を拾い、眠り続けているナナのポーチからマガジンを抜きとる。
「借りるぞ」
M360Jをヒップホルスターごと借りる。
ホルスターを外す際、ナナの温もりが感じられたことに少し安心感を覚えた。
他に、バックパックに一食分の食料と水を入れた。
午後零時二十分
準備を終えると、扉を開き、廊下へ出た。
廊下には三体のキラーがいたが、無視して進む。
途中一体は銃剣で処理し、一つの部屋へ入る。
そこは小さな会議室のようで長机とパイプいすが並べられていた。ゆえに見通しはよく、待ち伏せはされていないことがすぐにわかる。
机といすを入口付近に固め、すぐに扉を補強できるようにセッティングしておく。
そうしてもう一度廊下へ出る。
廊下の三体を銃剣で倒し、極力音を立てないように慎重に進み、階段の死体を片方にどかして通れるようにする。
そのまま一つ下の階に下りると、廊下に六体のキラーがいた。
一番先頭に照準を合わせ、発砲。
残りが一斉に顔をこちらに向ける。
距離の近い順に無力化を行う。
六体を倒しきると、すぐに階段まで後退し、まだ弾の残っているマガジンを抜き、新しいフル装填されているマガジンにタクティカルリロードしておく。
チェンバーの一発を含めて三十一発装填された89式のセレクターを「レ」(連射)に合わせ、いつでも撃てるようにしておく。
しばしの静寂の後、一つの扉からスーツ姿のキラーが飛び出してきた。それを皮切りに、大量のキラーが同じ部屋から濁流となって押し寄せる。
階段に身を隠していたお陰か、すぐに見つかることは無かったが、それも時間の問題だ。
ある程度キラーの密度がさがったところで、フルオート射撃を開始する。
将棋倒しを引き起こすと、ジャングルスタイルに連結しておいたマガジンを駆使し、連続的に撃ち続ける。
キラーの先頭集団が階段に差し掛かったところでもう一度将棋倒しが起こる。
だが、それぐらいで流れが止まるはずもなく、せいぜい進行速度が遅くなるぐらいだったが、十分だった。
指切りバーストで正確に仕留めていく。
それでもやはり少しづつ押されていく。
階段脇に積んでおいた死体を転がし、さらなる時間稼ぎを行う。
見る見るうちにマガジンは空になっていくが、死体の数も着実に増えていく。
死体で階段を塞げるほどになるころには、初めに使っていた中途半端に弾の残ったマガジン一つを残すだけとなった。
最後のマガジンはあっけなく空になるが、階段の下のキラーは数十体ほどにまで減っていた。
塞いだ、とは言ったものの、それは制圧射撃下に限ってのことで、奴らは簡単に死体を乗り越えてきてしまう。
いくら数が減ったとはいえ、リボルバー一丁での処理能力を超えていることは明白なので、階段を駆け上がり、例の会議室へ向かう。
扉を閉め、鍵を掛ける。
用意しておいた机といすで扉を補強しようとしていると、数体がここまでたどり着いたようで、扉をたたく音に焦りながらもなんとか補強を終える。
予想通りなら、また奴らはあの部屋に集まるはずだ。
それまで、この部屋でおとなしくしている。
ここまでは、完全に想定通りだった。いや、二百体と予想していたのよりも、実際は少なかったようで、想定以上の戦果だった。
午後七時十五分
用意しておいた食糧の半分と水を飲み、パイプいすを並べて眠った。
2015年8月の更新から、作風ががらりと変わったような感じがしますか?
私もそう思います。
もはや以前の世界史とは別物みたいになってますが、仕様です。
というか、当初のものでは完結まで導ける自信が無かったので、大幅路線変更をさせていただいてたんです。
お陰で大半のキャラの影が薄く……。
主人公、ナナ、仙田さん以外はほぼ放棄ですすいません。
初期の構想は本当に、小説なんて読むだけで、書くことなんて考えもしなかった頃でしたから、起承転結すら考えていませんでした。
世界史の元はといえば、友人たちとの会話のなかで即興で考えたものでしたから、当然と言えば当然なのですが、はてさて、そんなものがなぜ今まで続いているのやら……。
ともあれ、着実に完結へと進んでいます。
早ければあと二話程度です。
どうかそれまで、見守ってやってください。