第三話
艦長室
連邦の堅苦しい椅子は座っているだけで腰がいたい。必ずソファーに変えてやる。そう思いながら横になっていると、呼び出し音が鳴り響いた。・・・無機質で面白みの破片もない。これも変えよう。ホラ貝なんて趣があっていいよな、インターホンのタッチパネルを操作しながら、そんな事を思う。
「なんだ、もう朝食の時間か?まだ寝かせてくれ。」
「顔を洗って早くブリッジに来なさい。もうすぐミッドゼファード星に到着します」
オリビアだった。それだけ言うと無通音が虚しく残る。もう少し優しく起こしてくれてもいいのではないか。まぁいつもの事だ。
二種類のチューブから液体ジェルを顔に塗り付ける。するとスライム状に固形化してくるので顔から剥がす。水で洗いたいが、出来ない事を言っても始まらない。
宇宙には重力区を作り、船内に風呂を備える清潔好きな種族までいるらしいが、それをしようという気にはならない。主に経済面の問題でだが。簡単な支度をして艦長室を後にする。連絡通路でホッパーと軽い冗談を交わしながら(ブルーオクトパスではすれ違うという事すら出来なかった)、艦橋にたどり着く。内心びくびくしながら扉を開けると、怒こっているであろうオリビア声が聞こえてきた。
「遅い!全く何時も5分前行動を心掛けなさいと言っているでしょ。」
オリビアは第二艦橋にいる訳だから、直接会っていない。なのにこの怒気の伝わりようである。まぁいつもの事だ。
「アルシャー達と連絡は取れたか?」
しかしいつも通りではない反応が返ってきた。
「連絡は取れたわ。ただ、別の問題が発生したの。」
別の問題?ハテナマークを出していたらオリビアが画面を操作したようだ。赤系と青系だけで色分けされた艦の見取り図が表示される。
「熱源反応図よ。見逃した整備兵か警備兵だと思うわ。」
成る程。さっき怪我人含め倒れていた兵は居住区に移動させたからな。仲間の数や居場所は把握してるし、不自然な所に熱源があるのは確かにおかしい。まぁ上手く隠れた奴がいたんだろう。
「全く、捕虜を逃がすなんて何やってるのかしら。」
いつもの調子に戻った。まだ続けそうなので、ショーンに指示を飛ばす。
「Bー1からBー4までの通路を緊急閉鎖。その後、内線を繋げ」
「りーょーかーい」
ショーン=マサキことショーン。六腕の種族であり、ゆっくり喋っているのが特徴。腕が六本だから腕力も3倍かというとそうでもないらしく、運動オンチである。銃器での射撃や、パネル操作に長けており頼れる仲間だ。ショーンの返事の後、防火扉が降りはじめた。熱源は移動速度を速めたが、Bー3とBー4の間に閉じ込めれたようだ。
「大人しくしてくれればいいのに。」
愚痴をこぼしながらインターホンを取った。