第二話
連邦軍の宙域から離脱し、一息つく。とは言うものの課題は山積み。先程の戦闘で怪我をした仲間の確認や、未完成だったり、傷付いた艦内の点検。それと元々の旗艦、ブルーオクトパスに待機させていたアルシャー達と合流しないといけないな。
そんな事を考えていたら、オリビアに声をかけられた。
「考える前に動いたらどうです?船長はいてもいなくても一緒なんですから」
・・・なんという言われよう。いくら電子制御化が進んでいるからといって不必要扱いとは。まあいつもの事だ。邪魔にならないよう身を低くして艦橋をあとにする。
この船、海賊戦艦と名のったが、実際は高速巡洋艦が正しいのだろう。兵装よりエンジン周りや居住スペースの比率が大きく、連絡通路を立った状態で移動出来る(ブルーオクトパスが狭すぎただけでもあるが)。
未だ連絡通路には整備兵や警備兵が時々倒れているので、武装解除と捕虜用のチョーカーを施して居住区へ運ぶ。医務室は既に一杯だからな。ジャックがスケベ面丸出しで女性兵の救護をしようとしていたので、引っ張っていく。ジャック・ボールソンことジャックはどこをどうみてもチンピラにしか見えない上、以前にも女関係で揉め事を起こした張本人。主砲整備にでも回す事にする。
「頼むよ、ライのアニキ。さっきの女は超俺的にマジストライクなんすよ。この船に置いときましょうや。」
意味の分からん事をほざいているが、食料面や経済面において、無意味に人員を増やす事は出来ない。それにまたオリビアにどやされるんだから勘弁してくれ。こっちにも飛び火するんだぞ。
今度酒でも奢る約束をしたらジャックは渋々といった様子で居住区を後にした。割と現金な奴だ。
全員捕虜にし終えた所で、医務室に向かう。捕虜にした衛生兵が要救護者の看病をしている。まともな医療品が無いのか呻き声がこだまする。それとは別にバレッタがいるはずだ。邪魔だと言わんばかりにチョーカーのリモコンを振り回し、道を開けさせる。
区切られたベッドでバレッタが寝ていた。足を撃たれたらしく、白い包帯と小麦色の太ももが綺麗なコントラストを・・・とそんな事はどうでもいい。海賊流で手当したのかアルコールの臭いが鼻をつく。バレッタ=ナタネリブルことバレッタは三つ目の種族。それ故、視力や空間把握能力に優れ火器管制を担当している。まぁ、眼帯をしているから普通にみた限りは人と外見は変わらない。
俺の仲間は大概が人間だし、そうでなくても人と同じサイズの種族ばかり。偏見とかでは無く、単に人間用の船だと巨人種は連絡通路を通れないし、植物種は環境が悪い。まぁそういう事情だ。
既に煙草をふかしている所をみる限り問題なさそうだ。一応声を掛けておく。
「バレッタ、早く復帰してくれよ。ジャックじゃ弾薬をドブに捨てるようなもんだ。」
「へいへぃ。いざとなったら足を固定してでも狙撃するから心配しなさんなょ。」
語尾が小さいのは彼女ら特有のイントネーションであり、聞き取りにくいのがたまに傷。衛生兵が煙草の煙りに顔をしかめているが、気にせずチョーカーを振り回して医務室を後にする。
まだまだやる事は残ってるが、割と疲れたな。艦長室で一眠りすることにしよう。