0-5 Character Make 04
主人公の口調が安定しませんね。名前考えてあげればよかったですかね。
「では『世界レベル』は3に設定するとして……魔法のあるなしはどうします?」
僕の説明を嬉々とした表情で聞いていたノルンさんはその表情のまま、続きの設定を促してくる。
「このレベルで魔法のある世界だと大抵魔王的なヤツが存在します。魔法のない世界だと科学力の進歩によって人類が絶滅の危機にあることが多いですね~。
あ、ちなみに私のオススメは魔法のない『世界は核の炎に包まれた! だが、人類は死滅していなかった!』世界ですね」
「僕に世紀末覇者になれというのか……っ!?」
生憎だが兄弟分と死闘を繰り広げるのはごめんだ。
「いやぁ、伝承者になるなら最低でも“6”はないとダメです。貴方はなれたとしてもせいぜい汚物を消毒する人くらいですね」
「モヒカンはお断りだよ!」
あんな小物になるために生まれ変わるなんて悲しすぎる人生だ。
というかこの神様、さっきからちょくちょくジャ○プネタを入れてくるのだけれどこの世界にも売っているのだろうか?
そんな転生とは無縁のことを考えつつ、僕はかねてより考えていた質問を口にした。
「先に『特殊能力』について聞きたいんだけど。例えば『特殊能力を無効化する能力』や『相手の特殊能力をコピーするような能力』ってのは選択可能なんですか?」
「『能力値レベル』が10ですからね。選択事態は可能ですよ。ただ、それらが本来の形で発揮されるかどうかは微妙なところですね。
無効化能力にしてもコピー能力にしても『特殊能力』のようなものが存在しない世界だった場合はちょっと変わった形で能力が現れることもあります。」
「変わった形ってどれくらいの?」
「そればっかりは私にもわからないですねー。
『特殊能力』の元ネタの世界観や転生先の世界設定にもよりけりですし、設定したその他の『能力値』に左右されることもありますからなんとも言えません……。ただ、全くの無能になるってことはない筈です」
そうそう美味しい話はないってわけだ。
だけど魅力的なんだよなぁ……『コピー能力』
「魔法のあるなし、みたいに特殊能力のあるなしで世界を選択することは出来る?」
「……『特殊能力』というものが『魔法』以上に定義付けが曖昧ですからね、難しいです」
僕の質問に難色を示すノルンさん。かといって、僕も今後の人生がかかっているわけで、「はい、そうですか」と引きさがることも出来ず、食い下がる。
「う~ん、『超能力』って括りならどう?」
「『魔力』と違ってデータバンクで形式化されてないので……『魔法以外の特殊な能力がある世界』ならなんとか」
「…………」
この辺りが妥協点だろうか。
そもそもそういった超常スキルがない世界よりは断然そっちの方が近いカタチで能力が発揮される可能性が高い。
「じゃあそれでお願いします。それ以外の条件はお任せで」
「わかりました」
そういってノルンさんは手に持った紙になにやら書き込みを加えていく。
「……と。それで伸ばすべき能力は『特殊能力』ともうひとつは何にしますか?」
あれ、僕『特殊能力』選ぶって言ったっけ?
と、その言葉に一瞬驚いたものの、特殊能力がある世界について質問し他の全てを置いてそういう世界を選んだのだから『特殊能力』を選択するというのは読まれて当然か。
なので、そのことには触れずもうひとつの能力を口にした。
「『器用さ』で」
「はい、と」
これに関しては特にリアクションは得られなかった。
これも予想していたのか。仮にも神様だし、むしろ「まるっとお見通し」と言われても不思議ではないけれど。
「『特殊能力』の内容は?」
その問いに僕は待ってましたとばかりにノルンさんから受け取ったiPadを操作してウィ○内を移動する。
お目当てのページ、お目当ての能力を見つけ、僕はそれをノルンさんに見せた。
「“これ”でお願いします」
「……さきほども言いましたがそういったタイプの能力は反映のされ方が――」「わかってます」
その返答は予想していたので喰い気味に承諾した。
僕にとってもこれはギャンブルに近い。
勿論ギャンブルといってもちんちろみたいなもので半が出るか丁が出るか――五分五分くらいの確率だ。
それに上手くいかなくても、「全く能力が何も残らないわけではない」というのはノルンさんがさっき云ってたし分の悪い賭けではない。そもそものルーレットの出目が10以外「1、2、3」と酷いのだから、これくらいの賭けには出る必要があった。
まぁ、欲を言えば『記憶力』や『認識力』、健全なる男子高校生としては『魅力』あたりもそれこそ魅力的ではあったけれど、それ以上に僕は次の世界で“生き残れる”能力が欲しかった。
「……わかりました。では登録させていただくのでしばらくお待ちください」
ノルンさんが指を鳴らすと今度は人生ゲームが消失し、その場所にデスクトップコンピューターが出現した。
ご丁寧にテーブルにちょうど合う高さの椅子も二脚、用意されていた。
椅子に座り、コンピューターを操るノルンさん。いつの間にかその可愛い顔にレッドフレームの眼鏡がちょこんと鎮座していた。
眼鏡っ娘萌え。
☆
真剣な面持ちでパソコンの画面と格闘しているノルンさんを眺めながら、僕も椅子に腰かける。
タンタンタンッ、とテンポ良く刻まれるタイピングの音。時折マウスをクリックしそしてまたタイピングに戻る。
そして一際大きい音と共にエンターキーが強打された。
…………やだ、神様かっこ悪い。
そんな僕の気も知らずに「一仕事終えた!」とでもいいそうな晴れやかな表情で眼鏡を外すノルンさん。
「さてと、これで入力は完了です。もう既に貴方の魂は転生準備が始まっています」
言われて、全身を見渡す。
「……どこにも変化はないんだけど」
「そうそう目に見える変化はありませんが、もうすでに能力値は変化していってますよ。外見なんかはこれから時間をかけてじっくりと変わります」
まぁ貴方にとっては一瞬の出来事になるでしょうけど、と笑みを絶やさず言ってくるノルンさんを見て、なんとなく姿勢を正さなくてはいけない気がした。
「え~と、お世話になりました?」
何を言ったらいいのかわからなかったので、とりあえず礼を述べておく。
思えば、彼女がこんな一風変わった転生方法を思い付かなければこんな体験をすることもなかっただろう。
記憶が消えてしまうとはいえ、短い人生の最後の最後にこうして神様にも出会えて、こうして色々と話す機会が貰えたというのはもしかしたら僕は運が良かったのかもしれないなぁ。
「貴方には次の人生が待っています。それをどうか楽しんでください」
僕の右手をとって満面の笑みでそういう彼女。
これは…………なんか、ちょっといい雰囲気じゃないか?
さっきまで散々コメディのようなノリで話してきたけど最後の最後にラブ要素が入ってきたのか?
そう思い左手で彼女の手を包もうとしたつかの間。
「じゃあ、頑張ってくださいね~」
僕の手をするりとぬけだし、指を鳴らしたノルンさんの手には天井から伸びた長い紐が握られていた。
「……何か嫌な予感が」「えいっ」
する、と言おうとしたところでノルンさんの手によって紐が引かれた瞬間、僕の真下にある床がガコッ、と音を立てて左右に開いた。
「これがほんとの話のオチ、ですね!」
「うまくねぇええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
僕は今日一の大声でツッコミながら、重力に逆らうことなく椅子と共に落下した。
全身の鳥肌がぞわりとたつような浮遊感と重力による高速落下をしながら僕は死ぬ直前のことを思い出していた。
そして、そのまま意識は消失していった……
作品のテンションも安定しませんね……。私自身ギャグコメのノリが好きなのですがあまりこれとは合わないかもしれないですね。