0-3 Character Make 02
まだまだ転生中。
………………いやぁ~。
とりあえずで回すんじゃなかった。
後悔先に立たずとはよく云ったものだと、僕は来世ではこの慣用句を考えた昔の人に少しは経緯を払うことを決めた。
……まぁ、その来世がもう危ぶまれているんですけどね。
『4連続大きい数字』という僕の密かな野望は一投目で脆くも崩れ去った。
勢いよく回りだした運命のルーレット、その記念すべき第一投目の出目は“3”だった。
これはあまり良い出だしとは言えない。
落胆したのは事実だ。けれど、4回回す以上1回は低い数字が出てしまうのは仕方がないだろう、と自分に言い聞かせる。それ以上気に病むようなこともせずに、気持ちを軽くして続けざまにルーレットを回転させる。
先ほどよりも心なしか快調に回っているような気がするルーレットを新しいおもちゃの箱を開ける子供のようにわくわくした気分で見ていたが、止まった瞬間に一気に冷めてしまった。
出た目は誰がどう見ても“2”だった。
新しいおもちゃだと思って箱を開けたら中身が空っぽだった時のようながっかり感。
この時点で僕の額にはうっすら汗がにじんで来た。喉を鳴らしたりもした。
(……これは危ないな)
もはや嫌な予感しかしなかった僕は三投目には慎重になった。
軽くストレッチしたり深呼吸したり、空を仰いでリラックスしてみたり。そうやって慎重に慎重を重ね、獲得した数字は三投目にして初の――
“1”だった。
☆
「……この世に神はいないのか」
「私を目の前にしてそういう台詞を吐かないで欲しいです」
僕が胡乱気な瞳で呟いた言葉が気に障ったようでノルンさんは頬を膨らましていたが、直後「まぁ、気持ちはわかりますけど」と乾いた笑顔を僕に向けていた。どうやら僕の出目に同情してくれているようだ。
「練習しときます?」というノルンさんに対し、「しない」と答えた過去の自分を殴りたい。人(?)の好意は素直に受け取っておくべきだった。
その結果が“3”“2”“1”という底辺の数字をもたらしたのだと考えるとどうにも悲しくなってきた。
「ま、まぁ、先ほどいいましたけど『生物レベル』は“1”でも人間を選択できるようにしてありますし、『能力個数』は少なくても生きていけますし!」
どうにか励まそうとしてくれているのはわかるけれど、あまりフォローにはなっていない。
もう既に3つのステータスが低レベルなのは確定だ。生きていくことは出来ても良い人生にはならないんじゃないだろうか。
ていうか3,2,1って何? カウントダウン? 死へのカウントダウンなの?
「まぁ、それでもいっか。死ねばもう一度転生できるわけだし」
「ちょ、ちょっとっ!? 既に次の人生を諦めないでくださいっ!」
「さよなら、いままでのオレ。さよなら、これからのオレ」
「まだなってもいないこれからの自分にさよなら云わないでください!」
段々とツッコミが真に迫ったものになってきている。
このまま神様と漫才みたいなことをしたい気分でもないので、そうそうに終わらせよう。
「えい」
「あぁっ!? そんな気力も迫力もない掛け声で大事な最期の一回を!」
ノルンさんの絶叫虚しく、力なく回るルーレット。
もうにでもなれという投げやりな気持ちで回したラストチャンス。
カラカラという音が二人しかいない空間に反響する。
そして、除々に回転スピードは落ちていき、ルーレットの数字も目で追えるようになってくる。
動力を失う回転盤。
針が指したその出目は――
チートっていうからオール10だと思った?
残念! 足しても6でした!
さて、次回はちょっとだけ視点が変わります。