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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第3章 学院編 ~学院天国or地獄~
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3-2 admission gift  

「まぁ、及第点といったところですか。それだけ使えれば学院で落ちこぼれることはないでしょう。特別優等生ということもなさそうですが」


「凄いです! 凄いですよ、イクス様! ワイナード様を倒しちゃいました!」


 模擬戦後、エミリダからはお小言や助言を云われ、メルシィからは絶賛された。

 悔しがればいいのか喜べばいいのか釈然としないまま、エミリダの言葉にある通りギリギリ試験をパスした僕はその後、エミリダに云われた改善点などについて確認した。

 その頃にはワイナードも起きだしてきて、最後の一撃について色々と問答があったが、それもやれ「負けてない」だの「あれは試合が終わった後だ」など兄らしい負けず嫌いを押し通してきただけだったので、僕があっさりと自分の負けを認めると満足気な表情を浮かべ、試合内容についてのレクチャーをしてくれた。

 どうにも電撃を食らったこと自体は特に気にしていないようだ。大物と呼ぶべきか、無頓着と呼ぶべきか。

 母と兄、二人からのアドバイスを頂き、より一層強くなったような気がする。が、多分ソレは気のせいで要因は他にあるはずだ。


  試合も終わり、グライムから入学手続きについての説明をメルシィと一緒に聞いた。僕ら特待生――一般入試を受けることなく入学組をそう呼ぶのだけど――は各人お付きの者を一人連れてきても良いことになっていて、僕にはメルシィが一緒に付いてきてくれることになった。


 あとは明日の出発を待つばかり。

 さて、ベッドで横になりつつ、新しい術の練習でもしようかと部屋に入ると、すでに先客がいた。


「はっはっは、この道を通りたければ、その実力を我に示してみせよ!」


 芝居がかった台詞を口にして、高笑いをするその人物に僕は呆れながらも声を掛ける。


「ここは道じゃないし、そもそも僕の部屋です」


「つれないねぇ」


 そういってニヤリと笑う男は初めて会った時と同じ服装で、初めて会った時と同じように窓際に佇んでいた。

 見た目も全く変化がない。4年も経つのに若さそのままだ。これも神の御業とかなのだろうか?


「もうちょっと神の使いを敬ってもバチは当たらないと思うぜ?」


 冗談めかして、“神の使い”ことトールはそう云った。

 その言葉には反応せずに、僕は言葉を返した。


「やっぱり、さっきのはあなたの仕業ですか」


「あぁ、試合終わりのアレな」


 と、具体的な言葉を出さなくとも話が通じたことで彼が犯人だと裏がとれた。というか、この口振りから察するにきっとどこかで僕らの試合を見ていたに違いない。


 僕らがアレやさっきのと呼んでいる出来事――僕の能力がいきなりアップしたことはトールの仕業と確定したわけだ。


「大体、わざとらしいんですよ。試合直後にパワーアップって。もしかして、嫌がらせか何かですか?」


「いやぁ、本当は負ける手前でチート能力返して『ピンチになったら急成長してズドーン!』ってことをやりたかったんだけど、お前が予想以上にあっさり負けるんだもん」


 悪びれることなく、心に突き刺さることをいってくる。そうなるとこちらとしても言葉に皮肉が交じってくる。


「悪かったですね。でも、いいんですか? あっけなく負けた僕に能力返還しちゃって。 今日来たのってそれが理由なんでしょ?」


 以前トールが云っていたことだ。

――お前がある程度強い肉体と精神を会得したら、その制限ロックを解きにきてやる。

 つまり、再び僕の目の前に彼が現れたということは僕にかけられた制限を取っ払いに来た、ということだ。

 僕がそういうと、


「まぁ、半分当たり、半分はずれだな」


 なんとも曖昧な答えをトールは返してきた。

 そして、より具体的な解説を始める。


「まぁ、お察しの通り能力を返しに来たという部分に間違いはない。が、注釈が二つほどつく。

 一つは返還する能力が限定的であること。そして、もう一つは今のお前の実力じゃ全然足りもしないってことだ」


 その言葉にむっときて僕は何か言いかえそうと口を開いたが、それをトールに制された。


「まぁ、待て。そういきり立つな。順序だてて説明するから」


 神妙な顔でそう云われては僕も従うほかにない。心に燻るモノがなかったと云えば嘘になるが、それをどうにか消し止めて、僕は沈黙を貫いた。


「今云ったが今の実力じゃまだ不完全だ。なのに、なぜ能力を返すのか……それは、お前がヴァーミルの学校に行くからだ」


 一体、どんな皮肉が飛び出しまくるのかと思いきや意外にも本当にしっかりと説明してくれるらしい。なら、しばらくは拝聴しようじゃないか。


「ヴァーミルは世界最大規模の国だ。色んな地方から娯楽や物資が集まってきているから珍しいモノで溢れている非常に楽しいところだが、その分危険も多い。娯楽や物資と同じで人も集まってくる。色んな地方から人が多く集まる国ってのは犯罪者にとっては隠れやすいからな。それに人とモノが集まるってことは金も集まるってことだ。分母が大きければそれだけ起きる犯罪も大きい。強盗だってケタが違う。

 そんな国で学生、しかも王族ってのはどう考えても事件や事故に巻き込まれる可能性が高いと思わないか?」


 トールの言葉はとても現実的でわかりやすいモノだった。しかし、先ほどまで胸に燻っていたトールに対する対抗心のようなモノが、それをそのまま是として受け入れてはくれない。

 思わず、反論が飛ぶ。


「……でも、学院には同じような身分のヤツも結構多いと思うし、僕だけが特別危険ってわけでもないけど?」


「確かにそうだ。……だが、それは逆に言うとお前が気をつけて巻き込まれないように注意していても、もしかしたらお前の友達やクラスメイトが巻き込まれる可能性もあるわけだ」


「っ!?」


 トールの言葉に僕はやっとそのことに気がつかされた。

 そうして、一つ理解するとあとはなし崩し的に他の“可能性”にも思い至ることが出来た。


「ついでに言えば、そういった生徒の中に犯罪に加担している人間がいる可能性も多いにあるし、そういう犯罪グループの息がかかった人間が入学してくることだってあるかもしれない」


「………………」


「その犯罪グループが雑魚ならいいさ。だが、ヴァーミルという大都市で捕まらずに生き残っている以上、甘く見ることは出来ないし、もしそのグループが〈魔皇会〉みたいなグループだったりしたら、お前には成す術があるのか?」


 そうだ。

 トールの云う通り、何も自分の身ひとつ守ればいいってわけじゃない。一番わかりやすい例がメルシィ。彼女は僕のお付きとしてヴァーミルまで付いてきてくれるわけだが、もし彼女が犯罪に巻き込まれたら、僕は自分の実力云々ではなく助けにいく。見捨てるなんて無理だ。

 それがクラスメイトの場合であっても同じことだ。そう思いたい。

 しかしそうなると、犯罪のみならず厄介事に巻き込まれる可能性は大幅に上がる。

 その全ての案件に事もなげに対処できると堂々宣言するほど、自分の実力を過信してはいない。確実に僕如きではどうにもできないことだって起こる。


「で、そういう事態に陥った時に『チート能力のせいでハードモードな人生にされたのにそのチート能力が奪われてたから速攻デットエンド余裕でした』とか言われても困るわけだ」


 そんなこと言う気はさらさらないけどな。

 まぁ、僕がこうして王族になったのは確かに能力が変化したせいではあるからな。神様サイドもその辺りを考えてくれたのだろう。


「で、限定的に能力を戻すことにしたわけだ」


「実力はまだまだだけど、ってことですか」


「その通り」


 云われるのがイヤだったから自ら言葉にしてみたが、やっぱり気持ちの良いものではない。事実だからこそ、否定は出来ず、かといって肯定もしたくない。そうなると僕は黙るか話を逸らすかしか選択肢がない。今回は後者を選んだ。


「それで、『限定的に能力を元に戻す』ってことですけど具体的にはどうするんですか?」


 能力の一部がまたチート化するのだろうか。それとも『オール7』くらいの能力値になるのだろうか?

 気闘術の習得が目に見えて遅くなったことに対して少なからず苛立ちを覚えていた身としては割と期待していた。


「“時間制限”だ。その方法は……そらっ!」


 疑問をぷかぷかと頭の中で浮遊させていた僕に向かって、トールが言葉と共に何かローブから取り出したモノを指ではじき飛ばしてきた。キィン、という軽い金属音をまき散らしながら、歪な放物線を描く。最終的に自由落下してくる物質をあたふたしつつも、両手でしっかりとキャッチ。


「これって……指輪?」


 僕の手に収まったソレはオシャレに疎く、人生の伴侶も意中の相手もいない僕には縁遠い代物だった。


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