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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第3章 学院編 ~学院天国or地獄~
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3-1 entrance formalities

 全ての準備が万事整ったとはいかなかったが12歳となった僕は、はれて王立学院に行くことになった。

 入学の準備はグライム達がやってくれているようなので、僕は僕で最終調整だ。


「来い。どれくらい強くなったか見てやるよ」


 片手で模擬剣を弄んでいたワイナードが、僕に模擬剣の切っ先を向けて、格好良く宣言した。


「胸を借りるつもりで頑張るよ」


 と、甲斐甲斐しい言葉で取り繕いつつ、内心では「やってやる」という気概に溢れている。

気闘術、武術の最終テストとしてワイナードとの模擬戦を行うことになった。近くではエミリダ、メルシィの二人がそれを観戦していた。


 グライムやメルシィはもっと大勢の前でのイベントにすべきだと云ってきたが、それは僕が却下した。

「みんなワイナード様やイクス様の雄姿をご覧になりがることでしょう」と云われれば悪い気はしないが、これは僕に対して行われる試練であり、娯楽にするべきようなものじゃない。

 そして、僕はこれ以上自分の能力を公にする気はなかった。

 そこに大きな理由はない。ただ自分から発表するのは「凄いだろ」と自慢しているみたいで僕の主義じゃなかったからだ。

 知られてしまったのなら仕方がないがわざわざ自分からふれまわる必要もないだろう。入学してもそのスタンスは貫くつもりだ。まぁ、あちらは今までみたいに個人レッスンなんてことはないだろうから、自ずと知れてしまう気もするが。

 

 そういった理由でこの闘いは既に僕が複色持ちであることを知っている彼女ら二人のみの観客となった。グライムは先ほど言ったように僕の入学準備に追われているし、父さんは相変わらず多忙、ハーヴィス先生は模擬戦であっても闘いというのはどうにも苦手らしい。

 

 場所はいつもの空き地。しかし、そこにはいつもはない円が描かれていた。

 模擬戦の勝利条件は三つ。相手を再起不能にすること。相手に「まいった」といわせる。円の外へとはじき出す、のいずれかだ。

 僕としては三番目を狙うほかはちょっと無理そうだが、出来ることなら二番辺りを狙いたいところである。


「いくよ」


 僕が闘いの狼煙代わりに声を上げる。


「別に云わなくてもいいぞ、対処できるから」


 その軽口にむっときたがいつものことなので捨て置く。そんなことに気を回してしたら、僕の攻撃なんてワイナードには掠りもしないだろう。

 向こうから動く気配はない。一撃目は僕にさせる気だろう。

 なら、そこは乗っかろう。


〈雷〉の〈強化〉


 頭の中でそう唱えると身体からビリッと音を立つ。衣服が破れたわけじゃない。強化の力を借りて、僕が帯電している証拠である。


 どうやら僕は〈雷〉が最も適正があったようで、他の属性よりも上達が早かった。多分、これが元から僕に備わっていた能力なんだと思う。

 そんなこと知らないエミリダとワイナードは自分の教える属性の成長が遅いのに〈雷〉ばかり成長するもんだから、やきもきしていたみたいだが。

 おかげで練習がより過激になったのはいうまでもない。


 僕が持つ模擬剣にまで帯電が適用されているのを確認し、下準備を終えた。

〈雷〉の〈強化〉の付属効果は〈感電〉、触れた相手に有無を言わさず電気を流し込む。とはいっても、〈火〉のように瞬間的に熱量を上げてモノを燃やすというならいざ知らず、常に帯電しているとなると威力は期待できない。精々、数秒から良くて数分の間だけ部分的にしびらせるのがオチだ。


 しかし、戦闘においてはその数秒の違和感が大事になる。その数秒を何度も重ねればそれだけチャンスも広がる。


「はっ!」


 僕は電気を帯びた模擬剣を構えなおし突撃。

 突きというのは威力が高い分、回避された時の隙が大きい。なので、ここぞという時にしか使わないようにしているのだが、今回は僕の実力を見極めるテスト。ワイナードも最初の攻撃は真っ向から受け止めるだろうというのが僕の算段だ。


「よっ」


 しかし僕の予想はあっけなく裏切られる。

 迷うことなくすっ、と僕の攻撃をかわしたワイナード。そして、そのまま攻撃に転じてくる。

 考えがはずれたことは残念だが、全く予想していなかったという訳でもない。避けられた場合もしっかりと頭の隅に置いていた僕はそれをなんなく対処。斬り結ぶ。


「テストとは言ったが実戦形式だとも云っただろ? 実戦で初めての相手に突きをかますのは得策じゃあないだろが」


「……ごもっとも。でも、それを云うなら実戦じゃあこうして斬り結んでる時に会話はしな、い、だろっ!」


 言葉と共に相手の模擬剣を弾き、下段から斬りあげる。ひょい、と一歩下がり服一枚すらかすらずに僕の攻撃は終了。僕も後退し、次の攻撃に備えた。


 普段の練習ならこのまま攻め続けたであろうがこうして距離を開けたのは、いましがたのワイナードの言葉が残っていたからか。実戦での深追いは禁物である。


 すると次はこちらの番だとでも云うように、今度はワイナードの方から攻撃を仕掛けてきた。素早く跳躍し、僕に肉薄すると模擬剣による連続攻撃を仕掛けてきた。


「くっ」


 僕は捌くので精一杯。

 確かに僕は剣術に関しては軽く齧った程度の腕前なので劣勢は仕方がないと思うけど、ワイナードだってそう得意分野というわけではなかったはずだ。なのに、この腕の差は一体なんなのだろうか。

 などと考えている間もワイナードの攻撃は続く。いなし続けるが攻撃は苛烈を極め、ついに自分でもそれとわかる隙が出来てしまった。その隙をついて左手で拳打を繰りだしてくる。


「がっ!?」


「ちっ」


 流石に防ぎきれずに胸に強烈な一撃を貰う。しかし、気闘術で帯電している身体に直に触れたのだから、ワイナードもただでは済まない。左手に痺れをきたしたのか、舌打ちしながら手を庇うように左半身を下げる。

 しかし、そうまでして作った絶好のチャンスをワイナードが逃すわけがない。更に縦横無尽に剣技を見舞ってくる。


 こうなるともうたまらない。同じ「苦手」であってもこうも実力に開きがあると話にならない。

 これ以上やったところで勝敗は動かないだろう――剣では。

 僕はワイナードの攻撃に耐えきれずに弾かれたように見せ掛けて、剣を放棄する。その瞬間、ワイナードの模擬剣の柄部分を狙い拳を入れる。綺麗に、とはいかなかったが掠めることは出来た。 指への一撃というのは直撃しなくともそれなりにダメージを与えられる。

 切っ先を下げたところを狙い、今度は蹴りを放つ。これもジャストミート、とはいかなかったが幾分かダメージは与えられただろう。


「……いいねぇ」


 ワイナードが感嘆の声を漏らす。そして、手にしていた剣を放り投げた。

 そして笑いながら、


「そろそろ、コッチ・・・でやりますか」


 そういって、ワイナードはファイティングポーズをとる。それと同時にワイナードの身体を炎が覆った。


<火>の<強化>

 

 それを見て僕も笑みを返す。

 拳術と気闘術での闘い。

 それこそ僕の狙い通りだ。


 苦手分野ではまず勝てない。僕の苦手とワイナードの苦手は意味は同じでも内容が違うからだ。

 ならば、得意分野で勝負するしかない。武術に関しても気闘術に関しても僕はまだワイナードの域には達していない。しかし、気闘術ならば熟練者ではあるが<火>しか使えない相手に対し、まだ未熟だが複数使える僕でも一発かませるかもしれない。

 こちらも得意の意味は同じでも内容は違うのだ。


 今回もまた先手は僕が頂こう。

 ただ、先ほどと同じように突っ込んでいくだけでは芸がない。

 まずは牽制。一旦、<強化>を解除、掌に意識を集中。掌大の雷球を創りだす。


<雷>の<放出>


 今まではなんとなく感覚が掴めていただけでこうしてちゃんと使えるようになったのはここ最近だ。

 本当は某超能力者のように超電磁砲を打ち出したりしたいところだが、今の僕にはそこまでの技量はない。


「それを俺に向かって投げつけるのか? まだパイでも投げつけてきた方が効果がありそうだな」


 そんなワイナードの皮肉も事実なのだから仕方がない。こんな大きさじゃあ不意を尽きでもしない限り牽制にすらならない。

 だが、


「やりようはあるさ」


 集中。すると雷球を手にした状態で再び僕の身体は電気を帯びた。


<強化>と<放出>の<複合技>


 <複合技>のなかで最も初歩的なモノだが、それでもこの日の為にと1人で練習を積んだ僕を褒めて欲しい。僕の切り札その1だ。

 流石にこの弟の成長にはワイナードも目を瞠ったようで、声を漏らす。


「へぇ、いつの間に出来るようになったんだ」


「子供の成長は早いんだよ」


「自分が“子供”だと自覚することでの大人アピールか? ……ま、いいだろ。それが通用するかどうか試してみろ」


 手招きをするワイナード。そういう仕草をされた後に攻撃を仕掛けるのは、なんだがこちらが格下だと公言するみたいで恥ずかしい(映画なんかだと手招きされた方は大抵やられる)が、手招きされた以上その招待は受けるほかない。

 今言った通り、これだけ云われて黙っているほど“大人”じゃないのだ。


 <強化>は身体だけでなく手にした武器にも付与することが出来る。僕は手にした雷球にも<強化>をかける。

 <強化>と<放出>の<複合技>には二つの方法がある。

 いま僕が行ったのは雷球に強化をかけることで雷球自体の威力やスピードを上げる技だ。雷球が一回り大きくなり、バチッという電流の流れる音も大きくなった。更に雷球に集中させることでもっと大きくすることもできるが、そうなると身体にかかる強化が薄れるのでやめておく。

 さて、そろそろ攻撃にうつるとしよう。


「はっ」


 跳躍し、距離を詰める。

 しっかりと強化した雷球も当てなければ意味はない。強化によってスピードも上がったとはいえ、あの距離では避けるなり防ぐなりで無傷だろう。拳の当たる範囲まで肉薄することもないが、ある程度近づいた方が確率はあがる。

 その分、反撃にあう可能性も高い。

 僕の行動を予測したワイナードが必要以上に距離を詰めてくる。ここで後退しない当たりは流石である。

 このまま距離を詰めると折角強化した雷球もただ手持ち無沙汰になるどころかお荷物認定されてしまう。

 仕方なく、ここで雷球を放つ!


 雷の如き速さ、とはいかないがゴゥッ!という耳を削ぐような音とともに150キロ以上の剛速球として飛んでいったソレはワイナードが即座に創りだした同型の火球によって弾き飛ばされた。

 僕と同じく<強化>と<放出>の<複合技>だ。僕が立ちつくし集中して取り組まなかったのに対し、移動しながら攻撃に対処しつつの使用。それだけで力の差を十二分に感じてしまう。

 

 さりとて、攻撃を捌かれただけで負けを認める僕でもない。

 次の一手に出る。

 再び雷球を創りだした僕は<複合技>のもうひとつの技を使用するためにその球を手の中で握りつぶした。

 途端に僕の身体を流れる電気の発光が強くなった。

 <放出>により創りだした雷球を強化材料に変換することで、通常の<強化>よりもさらに強く身体をコーティングする――簡単にいうなら強化版<強化>というところだ。

 そしてスピードをあげて、迫りくるワイナードと正面衝突。僕らを中心に発生した衝撃波が砂埃を上げるなか、僕の正拳はワイナードによってしっかりと止められた。


 <強化>の能力は相殺する。

 強化を使用しているおかげでワイナードの纏う炎の熱さはほとんど感じないが同じく僕の拳を奔る電流もワイナードには電気マッサージ程度の効果しか与えてないだろう。

 肉弾戦をやるならば、ここからしばらくは単純な体術勝負だ。


 僕の拳を包むワイナードの腕を掴み関節を極める。が、そう上手くはいかず、いなされコチラが捕まりそうになったので蹴りで牽制。それをガードしているうちにするりと腕を抜く。

 蹴りをいなしたワイナードは逆の手で横面目掛けフックを繰り出す。背を反って上半身だけ一歩分退がる。直後、揺らぐ炎が目の前を横切った。若干体勢を崩した僕はそのままの勢いで蹴り上げ。しかし、子供ながらには長い脚もワイナードの前ではむなしく空を切る。重力にされるがままに背中から地面に倒れた僕は振り子のように起き上がる。そこに足払いを掛けられた。再び地面に倒れ込む。


「ぐぇっ!」


「チェックメイト」


 膝で胸を押さえつけられる。なんとか四肢は動くのでじたばたしてみるも効果はないようだ。

 苦し紛れに放った一発もしっかりと受けとめられてしまう。

 僕の負けだ。


「はい、お疲れさん」


「くそぅ」


 思わず歯ぎしりがしたくなるが王子らしくないのでやめておく。観客もいるのだし、これ以上格好悪いところは見られたくない。

 けれど、言葉は勝手に口をついて出てくるからタチが悪い。


「もう少しやれると思ったんだけどなぁ」


「いや、よくやった方だろ? まさか<複合技>まで覚えてるとは思わなかった。うん、あれには驚いた」


「じゃあ、もうちょっと隙を作ってよ。全然動じてなかったじゃん」


「ばかやろう。戦場でいちいち予想外の行動に驚いてたら、勝てるものも勝てねぇよ」


 それもそうか……。

 正論に納得はするも、会話ですら云い負けるのも口惜しいので格好悪いとは思いつつも負け惜しみをいうことにしよう。


「これで勝ったと思うなよ。今日は負けたけどまだ第二、第三の切り札が……」


「そんなのがあるなら、今日負ける前に出しとけ」


「……ごもっともです」


 結局、試合も会話も最後の最後まで兄のペースだった。

 このまま落胆していも仕方がない。勝負はついたのだし、試合を見ていたメルシィやエミリダにも感想を聞いたり、お小言を云われたりしにいくか……。


「ほらよ」


 そう思い身体を起こしたところに手を差し伸べてくれるワイナード。


「……ありがと」


 心中複雑な僕がその手をとった瞬間、


「あばばばばばばばば!!!!」


 ワイナードは奇声をあげた後、白目を剥いて崩れおちた。

 頭からはぶすぶすと煙をあげている。


 ……しまった。僕だけ気闘術を解くのを忘れてた。そのせいで肉親に漫画見たいな奇声をあげさせて漫画みたいな状態にしちゃった……。

 せっかく、手を貸してくれたのに悪いことしちゃったな。あとでしっかりと謝っておかないと。


「せめて、それまでは安らかに眠ってくれ、兄さん」


おててのしわとしわをあわせてしあわせ、なーむ。

合掌。

 まぁ、死んでないけどね。


「それにしても……」


 僕は合わせた手を開き、まじまじと見つめた。

 今し方気になったことを口に出して独り言。


「気絶するほど強い電気なんて流せたっけ?」

 

 いくら<複合技>でも僕の魔力量ではそこまでのダメージは与えられないはずだ。いままでの個人練習でもそんな兆候は見られなかった。模擬戦のおかげでパワーアップしたのだろうか? いや、そんな無茶な。

 となると考えられる可能性は――


 穴があくほど掌を凝視しながら一つの結論に辿り着いた僕は、そのままエミリダとメルシィが寄ってくるまでただその場で立ち尽くしていた。


遅くなりました。


今回も読んでいただき有難うございます!

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