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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第2章 年少編 ~イクス・アルベートの優雅なる日常~
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2-2 Go out 02

 この世界の地理について少しだけ、この2年で僕が得た知識を披露しよう。

 この世界は僕のいた世界のようにいくつもの大陸に分かれているわけではない。一つの大きな大陸を基盤として日本ほどの大きさの島国が他にいくつか点在している程度である。そして主に大陸を中央で左右に分けて西側にはエルフやドワーフ魔人族といった僕らみたいな人種とは少し違った亜人と呼ばれる種族の国や支配地域が多く、東側に人の築いた国が多く存在する。人魔戦争以前はほとんど交流のなかった東西も現在では交流を持つようになった。しかし、人種による差別や偏見は今も大きい。

 戦争当時、侵攻の拠点となっていた場所に建国されたアルベート王国はちょうど東西のパワーバランスの真ん中に位置している。そのせいか西側からやってくる者も多く、お国柄として他の国ほど差別や偏見もなく、街には当たり前のように亜人族の人も見掛ける。前方からやってくる背は低いのにやたらと老けた顔をしている彼ドワーフだろうか? などと考えてついつい目で追ってしまうが失礼にあたると思い、目を逸らした。あまりに勢いよく目を背けたのでむしろそのほうが失礼かもしれない。


 衣服を質素なものに着替え、フードのある外套を被って僕とワイナードは街へと繰り出した。

 まず、僕らが向かったのは城からほど近い開けた場所だった。あちらこちらから人の声が聞こえる。


「ここが中央広場だ」


「見た事ある」


「そうだな、イクスが5歳の時挨拶した場所がちょうどあそこだからな」


 そういってワイナードの指差した先にお城のバルコニーが見えた。あそこから見下ろした先にいた大勢の観衆が脳裏に甦ってきた。あそこから見た景色はここだったのか。


「中央広場では普段からこんな風に市場や露天で賑わっている。他にもいくつか広場はあるがここが最も大きくて最も色んなモノが集まる場所だな」


 人波を抜け、広場の中央にある噴水前へと至る。噴水の中央にはどことなくゼーリッドやワイナードに似た人物の銅像がたっていた。よく見ると「偉大なる初代国王ゼノン・アルベート」と名前が書いてあった。どうやら御先祖様の像らしい。それなら似ているのも頷ける。


「ここから東、南東、南、南西、西の5つ方角に大きな道が通っている。見えるか?」


「うん」


 噴水の淵に足を掛けその上に乗る。さらにワイナードに肩車してもらう。人を見下ろせる位置にくると人の流れとその先にある大きな通りが見えた。


「南に伸びている通りをまっすぐ行くと城壁のところに門があってそこが街と外を繋ぐ出入り口だ。門の外にも建物は結構ある。東と西にも出入り口があるがそちらは夜になると閉じられるし外に出ても森しかない。なのでこの南通りがこの国のメインストリートになる」


 確かに他の通りの倍近い道幅があるし、人通りも最も多い。


「南東の通りは宿屋や酒場が多く、南西の通りは商館やギルドホールがある。通りの右側に見えるでっかい建物、あれも商館だな」


 いわれて目をやると確かに周りの建物よりも縦にも横にも大きく風格のある建物が建っていた。 街の中心部である中央広場沿いの一等地ともいえる場所にあれだけ大きな館を構えている、ということは商人にはそれなりの財力やチカラがあるのだろう。


「あっちの建物は教会?」


 商館にはやや劣るもののなかなかの大きさでチャペルのようなものが見える建物があったので質問してみた。

 ワイナードは頷く。しかし肩車された状態で頷かれると揺れて怖い。


「あぁ、クリスフォード大聖堂――エバレン教の教会だな。大聖堂といっても亜人や流れの旅人が多い国だからな。他の国に比べると熱心な信者もそう多くないしこれでも規模は小さいほうだ。エバレン教の聖地――エバレンティアのヴァーベルショアン大聖堂はウチの城並みにデカイらしいからな」


 どんな教会なんだよ、それ。いや、でも確かこの世界にあるメジャーな宗教のなかでもエバレン教ってのが一番信徒が多かったはずだ。ならば、そういうことも有り得るのだろう。


 説明を終えて、ワイナードが僕を肩車したまま噴水の淵から降りて南通りに向かって歩いていく。すれ違う人が微笑ましい表情で僕を見てくるけど正直恥ずかしい。


「下ろしてよ、兄さん」


「いいからいいから、お前はそのままじっとしてろ」


 じたばたと暴れる僕を両手でしっかりと押さえて、鼻歌を歌いながら慣れた足取りで広場を進む。その間も衆目に晒されている僕の心境たるやもう……。被っていたフードを更に目深に被り直し、俯き気味になって兄の頭上で揺れる。いくら涼しくなってきたといっても日光燦燦の良い天気なので暑い暑い。何か飲みモノでも売ってないかと視線を少し上げると少し先の露天に赤く輝く何かが売られていた。風にのって鼻孔をくすぐる良い匂いが僕の元までやってきた。

 果物だ。リンゴに良く似ているけどどうなのだろう? 城では大抵の果物がカットされた状態で食卓に並ぶのであれを食べたことがあるのかどうかもよくわからない。

 そんなことを考えていたら、ワイナードがその露天の前で立ち止まった。

 どうしたのだろうと兄を見ると


「ほらよ」といって僕にその果物を投げてきた。そしてもう一つ見繕い「おばちゃん、二つ貰うよー」と店の女性に声をかけ、硬貨を数枚渡しおばちゃんの「まいど!」という威勢の良い掛け声をバックにまた歩き始めた。

 突然の出来事にぼぅっとしていた僕を見上げてワイナードは言う。


「食いたかったんだろ?」


 どうやらじっとこの果物を見ていたのをもの欲しそうにしていると勘違いしたようだ。しかし、そんなことを正直に言ったところで生まれるのは兄弟の間に流れる微妙な空気だけだろう。


「ありがと」


 素直に礼をいい、軽く袖で拭いそのままがぶりつく兄の真似をして僕もがぶりつく。汁が溢れだし、シャリシャリと音をたて、口の中で踊る。

 初めて街で食した味は思ったよりも甘酸っぱかった。




なんとなくで宗教とか街の構造決めてしまった……これで後々苦しめられなきゃいいんですが。

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