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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第1章 幼少編 ~生まれて飛び出て~
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1-6 vigor effect 04

 黒から最初に連想したのは〈闇〉だった。

 〈闇〉は最も少ない属性というのは先ほどの話にも出ていたので、それで驚いていたのかと思ったがそうではないらしい。


「〈闇〉の場合、交感水晶は紫に変色します。まぁ、確かに〈闇〉持ちでしたらそれはそれで驚いたでしょうなぁ。なにせ、魔人族以外の〈闇〉持ちはここ百年ほどでも十数人しか確認されていないので」


 〈闇〉持ちってそんなに少ないのか。〈光〉が1000人に1人とかだったから、それよりは大きい分母になるとは思っていたけどそれでも1万人に1人くらいはいるのかと思ってた。

 そして、少なからず〈闇〉という言葉に惹かれていたので割と落胆している自分がいた。持ち上げて突き落とされた気分だ。


「しかし、これも〈闇〉ほどではないですがかなり珍しい色ですよ」


 割と何事にも動じないエミリダお母様が興奮気味だ。〈闇〉の次に珍しいといえば〈雷〉だがそれならばこうも興奮はしない気がする。父様も姉様も持っているわけだし。さらに言えば〈雷〉で色が黒ってのはおかしいだろう。


「これは〈複色〉持ちです」


「ふくしょく?」


 上手いこと漢字に変換できない。

 服飾――じゃないよな。デザイナーじゃあるまいし。

 副職――でもないだろう。別に職業ジョブを選んでるんじゃないんだから。

 復職――でもないよな。まず職についたことねぇよ。

 おそらく複色だろうな、と当たりをつけたところでグライムの説明を促した。


「〈複色〉とは複数の属性に対して適正をもっているということです。しかも、黒なので3つ以上、この濃さの黒なら恐らく4つ……それ以上かもしれませんぞ!」


 あれだけ気闘術に根を詰めるのを嫌がっていたグライムがそれを忘れるくらい興奮しているのだから、凄いことなのだろう。

 聞けば、〈複色〉は“風”と“火”など二つ以上を扱える者を指すらしい。こういう人間は亜人と呼ばれる種族を除けば珍しいのだとか。

 更に交感水晶の変色も複雑で、2色持ちなら2つの属性色を混ぜたような色になるらしいのだが、3つ以上だと黒になるのだとか。しかも、3色持ちでも水で薄めたような濁った黒が精々らしく、ここまで深い黒色だと4色以上の可能性が大だという。


「4色持ちは我が国には現在1人もいませんし、ヴァーミルのような方々から人の集う大国であっても軍に所属しているのは4人と聞きます」


 成程、確率的に10年に2人も生まれない〈闇〉に比べればやや希少性は劣るかもしれないが4色持ちも世界レベルで見てもそう多くないことはわかった。


「なんのぞくせいかわからないのですか?」


 4色持ちとは言われたもののどの属性なのかは言及されていない。言葉尻から捉えるに別段決まった4色になる、という訳でもないのだろう。だとすれば水晶に映るのは黒一色だし参考にはならない。他に自分の属性を見極める手段というのはないのだろうか? 


「こればかりはひとつひとつの属性をチャレンジしてみるしかないでしょうね。 3色以上の複色持ちは数が少ないしほとんどの者が交感水晶で事が足りるので、有効な手段というのが確率されていないのよ」


「そうですか……」


 エミリダの言葉に僕は肩を落とす。

 ということは、全ての属性の〈強化〉なり〈放出〉なりを試してみないといけないということか。これは予想以上に骨が折れる展開だ。

 珍しい能力だと喜んだのもつかの間、まさかモデルケースが少ないということがこんなところで仇になるなんて。出鼻を挫かれた。きっと僕の表情は5歳児らしからぬ苦汁に満ちた顔をしているだろう。

 しかし、そんな僕よりも苦々しい顔をしている人がいた。グライムだ。


「どうしたのですか、ぐらいむ?」


「いえ……〈複色〉持ちになったということはやはりイクス様も気闘術の習得に力を入れるべきなのか悩んでいます」


 その言葉に僕より早くエミリダが反応した。


「当然でしょう。〈複色〉持ちの者はほとんどが気闘術を伸ばす訓練を最優先でうけているではないですか。4色持ちだとすればそれだけで国から給付金が支給されるレベルなのですよ? ……貴方がイクスを世継として育てたいというのはわかりますが、気闘術は自衛のためにも扱えた方が良いですし、政治を学ぶのはそれからでも遅くないでしょう。」


「確かにそうですが……しかし……」


 なんとも歯切れが悪い。エミリダの言葉は的を得ていて、グライムもわかってはいるがそれでも納得しきれない、といった感じだろう。

 きっと兄、姉、と上の二人が同じようなカタチでそれぞれ政治の道から遠のいてしまったから、今回もそうなるのではという懸念がグライムの心中に渦巻いているのだろう。基礎を教えるだけのはずがどうしてこんなことに……とか思っていそうだ。

 見たところ、グライムは劣勢だ。仮にも相手は王妃さまで実の親だし、教育係が対抗するのは難しい。

 この状況を動かせるとしたら、それは当の本人である僕しかいないだろう。


「ぐらいむ、かあさま。ぼくはきとうじゅつのべんきょうはちょっとでいいです」


「え?」「イ、イクス?」


 まさか僕が会話に入ってくるとは思わなかったようで、二人して目を丸くした。


「ぐらいむともやくそくしました。きとうじゅつやまほうはちょっとだけだって」


「……イクス様」


「で、ですが、〈複色〉持ちですよ? 伸ばすべきです」


「ひとつおしえてもらえれば、あとはじぶんでがんばります」


 正直な話、気闘術を頑張りたい。けれど、今の僕は王子で国民の生活を担う王族なのだ。ワイナードやシーゼリカがどうであれ、僕までその責務を放棄してはいけないだろう(もっとも、兄も姉も公務はしっかりと果たしているが)

 それにぶっちゃけ、「認識力」と「器用さ」があれば、基本だけ教えてもらえればあとはなんとかなりそうな気がする。「共感覚」で扱える属性や系統が増えたりするようなら人に見られず1人で練習した方が安全だし。一般的に習得にどれだけの時間がかかるのか具体的なことはさっぱりだが、勉強の合間や就寝前などの1人の時間に練習すれば通常の習得期間を大幅に上回ることはないだろう。


 その後、二言三言言葉の応酬をした辺りでエミリダが折れた。


「はぁ……わかりました。 私達の息子なら言って聞くはずもないですし」


 どうやら僕の鉄の意志は伝わったようだ。


「ですがその代わり、練習は私が行います。息子だからといって手加減はしませんよ」


 ……やっぱり、やめようかな。エミリダ印のスパルタ教育と聞いて前言撤回の4文字が喉元まで押し寄せた。

 なんとか嚥下したが僕の鉄の意志は脆弱すぎだった。ちゃんと仕事しろ。


 ただ、〈複色〉持ちが気闘術の習得を疎かにするというのは他の気闘術を学ぶ者に対して印象がよろしくない、とのことなので僕が〈複色〉持ちであることはグライム、エミリダ、そしてゼーリット、ワイナード、シーゼリカら家族に知らせるに留めた。

 

 ゼーリットとワイナードにはその日のうちにこのことを伝えた。二人とも「流石はオレの子(弟)だ!」と豪快に笑うので、つくづくこの二人は顔だけじゃなく性格まで似ているんだなぁ、と僕まで一緒になって笑ってしまった。

 シーゼリカは留学中なのでまだ伝えてはいない。他の家族に比べて感情の起伏に乏しい彼女は一体どんな反応をするだろうか?

 そんなことを考えながら、僕はふかふかのベットに包まれ眠りについた。



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