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剣と魔法の人生ゲーム  作者: 真川塁
第1章 幼少編 ~生まれて飛び出て~
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「それでは気闘術の仕組みについてご説明します」


「はい」


 5歳となり、本格的な教育が開始された。

 その中でも最も楽しみにしていたのが気闘術の練習と魔法の勉強だ。

 しかし、なんの因果かこれらは「それよりも先に国政について学びましょう」という教育係として新しく僕についたグライムの言葉により随分と後回しにされてしまった。

 まだ5歳児なので基本は王族の礼儀作法や一般常識についてだが、それ以外のこととなるとイの一番に政治についての勉強が来る。

「政治のお勉強とか誰得だよ。そんなの犬にでも食わせておけ!」などと言えるわけもなく、僕はただ云われるがままに従っていた。

 やっと、この世界の住人であるという自我が芽生えてきたのだ。ならばアルベートの王子イクス・アルベートとしてこの国の人々の為にも頑張らなければならない。幸い、向上している知力や認識力によって覚えること自体は難しくなかった。けど、これ5歳児にやらせる内容じゃない気がする。

 

 そんな感じで大抵の日は机に向かっての勉強に費やされた。

 どうも僕をそっち方向に進めさせたいというどこかからの圧力のようなものが感じられた。

「イクス様は覚えが早くてらっしゃいますな。まつりごとの才能があるかもしれません」というグライムの見え透いたお世辞(いや、実際覚えが早いのは事実だが)のおかげでその考えは強固になった。

 もういっそのこと理由を聞いてみよう。

 そう思い、グライムにぶっちゃけたところを聞いてみた。


「ぐらいむはぼくにせいじをべんきょうしてほしいの?」


 云った瞬間こそ、ぐっ、と喉にひっかかるような声を出したグライムだが僕が上目遣いでおしえて光線を放っていたら、あっけなく陥落した。流石『魅力10』ちょろいぜ。

 観念のため息とともに、現在の国の後継者問題について話してくれた。

 曰く、兄は気闘術にばかり興味がいってしまい、学問には身が入らない。

 曰く、姉は魔法学以外の学問に興味がなく、政治はからっきしだとも。

 なので、僕にこそ王としての教育を施したい、と。

 そう言われてしまうと、こちらとしても「え、ああそう。だから?」とは言い出しづらい。国を背負うって大変なんだな。

 う~ん、僕としてはそれこそ兄さんや姉さんのように気闘術や魔法について勉強したいんだけど、それを言ったらグライム白目むきそうだしな……。

 まぁ、いまのうちは従っておくことにしよう。


「わかりました。じゃあ、ぼくはおべんきょうをがんばります」


 どちらにしても勉強によってこの世界の知識を入手することでのデメリットは全くない。ならば、別にこのまま勉強を続けてもいいだろう。

 その言葉にほっとしたような表情になるグライム。

 それと同時に要求を下す。


「でも、たまにはきとうじゅつやまほうのおべんきょうもしたいです」


 これぞ、飴と鞭。いや、怖い警察官と優しい警察官の構図だろうか。

「たまには」とつけるのがミソだ。それならグライムもいやとはいえまい。


「そうですな……。どちらにしても基礎知識くらいは身につけていただく必要もありますし、気闘術は使えるに越したことはないですからな……わかりました。では、明日は気闘術の基本を学びましょうか」


 ふふふ、計画通り。





 そして、今日のこの練習である。

 練習場所は城内の裏手にある練習場――は騎士団の人がいたので、その奥の空き地になった。周りには草木や花々が生い茂っていて、昼時や休憩時間などには憩いの場となっているとか。

 気闘術の練習ということもあるが、こうして外に出てくるのも久しぶりなので僕はわくわくしていた。


「ごほん。では、まずは基礎の基礎。気闘術とは何かというのを説明します。」


 辺りをきょろきょろしていた僕の注意を引くためか、グライムがひとつ咳払いをキメてから説明に入る。


「気闘術というのは自らの体内を巡る“気”を繰り、体外に放出して様々な現象を起こす技術を指します。火を起こしたり、水を操ったり、中には――」


「ねぇねぇ、グライム。“き”ってなに?」


 グライムの言葉を遮り、僕が質問する。しかし、グライムは嫌な顔ひとつせず答えてくれた。


「“気”というのは体の中を流れるエネルギーとでもいいましょうか。活力といってもいいかもしれませんね」


「かつりょく」


「えぇ、他には“気”とは体内をながれる魔力のことを指している、なんて持論を唱えている学者もいますね。『体内の気を操るのが気闘術、自分以外の植物や動物の魔力を借りて扱うのが魔法である』とかなんとか。……と、これはイクス様にはまだ難しいですね」


「そんなことないです」


 唇を尖らせる僕をグライムはどう見ただろうか。子供の背伸びした姿か。強がりか。

どちらにせよ僕の言葉がなんの偽りもない事実だとは思っていないだろう。

 つまるところ、気闘術というのは「体内エネルギーを操って超常現象を起こすこと」で、魔法というのは「大気中の自然エネルギーを使役して超常現象を起こすこと」だろう。

 名称が変わっているだけでマナとかエーテルとか呼ばれるもののことだと思う。そう言われると漫画やゲームで見て世界観と大差ないな。

 たぶん、神様の元で設定した10の能力値の一つ、「魔力」はこの世界においては“気”を指すのだろう。そう「認識」する。

 持ってって良かった認識力。

 なぜ選ばなかったのか今になる考えると不思議だね!


「次は系統と属性について説明します」


 グライムが云う。


「気闘術の6つの系統と9つの属性の組み合わせから成っています。

 系統は〈強化エンチャント〉〈放出ショット〉〈操作テイム〉〈具現化サモン〉〈変化コンバート〉〈特質スペシャル〉の6つ。

 属性は〈火〉〈水〉〈風〉〈土〉〈木〉〈金〉〈雷〉〈光〉そして〈闇〉の9つに分かれます」


「けいとうが6、ぞくせいが9」

 

 記憶するために復唱する。やはり声に出したほうが覚えられる気がする。


「これらは実際に見せた方が早いのですが、生憎私は〈強化〉しか使えないので……〈特質〉以外の5系統を習得されているエミリダ様がいらっしゃれば良いのですが……」


「あら、呼びました?」


 その一声と共に草陰からエミリダが出てきた。

 グライムの驚き声が飛ぶ。


「エ、エミリダ様、なぜそのようなところに?」


「いえ、別に。ちょっと通りかかっただけですわ。けして息子の初めての気闘術の練習がどのようになっているのか気になったわけではありません」


 自白にも等しい言い訳を口にする。


「そういえば……ワイナード様の時もいらっしゃったような」


「……おかあさま」


 なにやってんすか。


「おほほほほ」


 ごまかすような笑い声を高らかと響かせながら、エミリダが草陰から出てきた。そのせいか体中のあちらこちらに葉っぱや小さな木の枝がついている。


「そんなことより、わたくしに手本を見せて欲しいのでしょう? だったら、私のことよりもそちらに意識を向けなさい」


 おおぅ正論。正論だが……なんか釈然としない。グライムも同じ気持ちなのか呆れた表情をしている。


「はぁ……それじゃあエミリダ様、お願いします」


 投げやりにそういうとグライムはエミリダから距離をとるように一歩下がる。

 それを合図にエミリダが姿勢を正す。


「では、まず〈強化エンチャント〉から」


 そういうと、すぐに環境が変化する。

 エミリダを中心としてその体を取り巻くように風が渦巻いていた。エミリダの服にくっついていた葉っぱや木の枝が宙を舞い、渦の外へと放り出された。


「〈強化〉は自分自身や武器を属性の力により強める能力です。私の属性は〈風〉なので身体が風を纏うようになります。また使い方によっては手にした武器や体の一部だけに纏わせることも出来ます。こんなふうに」


 エミリダがそういうと、今度は風が右腕に集中する。

 少し歩き、自分の隠れていた草むらへと戻っていった。

「ごめんなさいね」と小さく呟き、草木を触る。すると右手から暴風が吹き荒れ、数百という空目掛けて飛んでいき、ひらりひらりと落ちてくる。

 木の葉の雨が降りしきり、僕らを包む。


「〈強化〉は〈放出〉と並んで最も習得しやすい系統です。属性効果が付与するだけでなく気を纏うような感覚なので身体能力も高まります」


「……すごい」


 グライムの説明も話半分に僕は呆けたようにその言葉を吐く。


「しかし、その分魔力量やテクニックでその効果は大分変わってきます。手で触れただけであれだけの現象を引き出せるのはエミリダ様だからこそです。他の者なら木を揺らすことすら出来ないかもしれません」


「うふふ」


 エミリダは満更でもなさそうに頬に手を当てて微笑む。

 その仕草が少しだけ怖く感じた。

 何があってもお母様を怒らせないようにしようと僕は固く心に誓った。


遅筆なせいで大分間が空いてしまいました。


主人公の一人称、地の文についてですが、基本は「エミリダ」「グライム」のように人名で呼ばせることにしました。文章力に乏しいのでキャラの書き分けや会話がわかりにくくなってしまうので、まだその方がわかりやすいかな、と。


たまに語感や語呂で「母さん」「じじぃ」などと呼ぶかもしれませんが、基本は人物名で呼ばせます。違和感があるかもしれませんがよろしくお願いします。




今回も読んでいただきありがとうございます!

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